第669話 3回戦を見据えて
『白熱した試合が続いた1年生男子の部2回戦も、この第4試合ティオグ・マイヅ対ロイター・エンハンザルトで最後となります! そこでスタンさん……1回戦では、見事な刀術による勝利を収めたティオグ選手、そして飛んでくる魔法を全て防ぎ切って危なげなく勝利を収めたロイター選手の対戦となるわけですが、今回はどういった内容になっていくと思われますか? 私がパッと思いつくのは、ティオグ選手の刀術にロイター選手が付き合う形で物理戦闘となっていくだとか、もしくはロイター選手の魔法をティオグ選手が掻い潜りながら接近を試みるといった魔法対物理の試合となるといった形なのですが……ああ、もちろんティオグ選手も全く魔法を使えないわけではないので、魔法戦闘になるってことも考えらえるとは思いますが……』
『そうですね……今、ナウルンさんが挙げられたどの展開も予想されることではありますが……3回戦に進んだときのことを考えると、対戦相手がシュウさんという物理戦闘のスペシャリストになることが確定しているので、感覚を馴染ませる意味も込めてこの試合も物理戦闘メインとなっていく気がします』
『なるほど、3回戦に向けた予行演習といっては言葉が過ぎるかもしれませんが……そういった感覚で両者がこの試合を捉えている可能性は高そうですね!』
『まあ、まず目の前の対戦相手に勝つことが先決ではありますが……それは2人も重々承知のことでしょうし……』
『ええ、そのとおりでしょう! といったところで試合序盤の立ち上がりとしては、予想どおりの展開というべきか剣術勝負の様相を呈しています!!』
ふむ……3回戦を見据えて物理戦闘の経験と勘を養っておくってわけか……
とはいえ、この2回戦では手の内を明かさないようにして、あえて物理戦闘は控えておくって考え方もあるだろうけどね……
ああ、でも……シュウ相手に手の内がどうのこうのっていうのは、あんまり意味がないか……どうせすぐ対応されるだろうし……
そう考えるとやはり、自分の剣術を研ぎ澄ますほうが大事なんだろうなぁって気がしてくるね……
「へぇ……優勝候補のロイターが警戒するってぐらいだから、やっぱシュウは強ぇんだなぁ……?」
「おいおい……お前、さっきのサンズとシュウの試合を見てなかったのか? メチャクチャ強かったじゃねぇか……」
「ホントそう! 俺はさっきの試合を見て、シュウが優勝するって確信したね!!」
「おおっ!? いうねぇ……」
「いや、ひょっとすると……あり得るかもしれんぞ?」
「でもよ……サンズはロイターの部下だろ? その部下とシュウはギリギリの勝負をしたってことだから……やっぱ、ロイターのほうが強いってことになるんじゃないか?」
「確かに、部下のサンズよりロイターのほうが強いはずだもんな! それなら、サンズとほぼ同等のシュウよりロイターのほうが強くないとおかしいもんなっ!!」
「……なあ、さっきの試合……実はギリギリじゃなかったとしたら?」
「なッ……!?」
「そ、そんなわけ……」
「うぅむ、さっきの試合……お互いに全力を出し切っていたように思えるのだが?」
「分っかんねぇぞ~? シュウには、まだまだ奥の手とかがあるのかもしんねぇし!」
正直、俺もシュウにはまだまだ引き出しがあるんじゃないかと思っているんだよね……
いや、別にサンズ相手に手を抜いていたっていいたいわけじゃないんだ。
さっきの試合の展開上、披露する流れにならなかった技がほかにもいっぱいあったっていうかさ……
ほら、アイツ……武術オタクだからさ……絶対もっといろいろ知ってそうだもん。
まあ、リスクが多過ぎてこういう試合では使えない技とか単純にネタ技とか、そういうのもたくさんあるだろうけどね……
「つーかさ、この中で誰もティオグが勝つと思ってねーんだな?」
「……アッ!」
「い、いや……その……」
「まあね、こうやって2回戦に進んでるわけだし、ティオグも弱かないと思うけど……さすがにロイター相手だと……なあ?」
「そうそう、ロイターが相手だもん……しょうがないよ」
「お前ら、そんなこというなって! 見てみろ! ティオグだって懸命に闘ってるだろ!? ほら! 今んとこ、ロイター相手に一進一退の斬り合いができてるじゃないか!!」
「そうはいってもさ……ロイターは今、絶対に様子見段階だろ……」
「うん……なんていうか、一つ一つの動きを確かめながら闘ってるって感じがするよね?」
「まあ、さっきみたいな高速戦闘ってわけでもないしな……」
「眼に優しい……」
「それなら! 実力で足んないぶん、俺たちがティオグを応援してやろうじゃないか!!」
「えぇ……? まあ、いいけどさぁ……」
「ここでティオグがロイターをぶっ倒したら……それはそれで面白くはあるな……よし! いいだろう!!」
「なんかこの流れ……さっきもあったような……?」
「うん……完全にハソッドのときと同じ流れだね……」
「ま、いいから! いいから!!」
「そうと決まったら……よっしゃ、いくぞー! ティーオグ! ティーオグ!!」
「「「ティーオグ! ティーオグ!!」」」
そうだなぁ……俺もなんだかんだいって、ロイターが勝利するだろうと思っているからねぇ……
まあ、俺個人としては、ティオグの焔刀の扱い方がとっても勉強になるなって思いながら観てもいるわけだけどさ……
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