第661話 どうやって相手に余分な魔力を使わせるか
『ヴィーン選手が阻害魔法とは……予選も含めて、今まで使っている姿を全く見たことがありませんでしたので、正直とても驚いています……』
『ええ、ヴィーンさんが阻害魔法を使うイメージはあまりなかったかもしれません……ただ、ソイルさんという阻害魔法の素晴らしい使い手がお手本として常日頃から傍にいらっしゃるので、学ぶ環境としてはじゅうぶん過ぎるほどに整っていたといえるでしょう』
『そうですね、毎日のように見て学ぶことができるというのは大きいといえそうです! ……とはいえ、阻害魔法を使いこなすのはなかなか難しいのも確かなので、そこはやはりヴィーン選手の技量の高さあってこそなのでしょうね!!』
まあ、俺もソイルを見習って阻害魔法を使ってみたりしているけど、適性やイメージに差があってか、それだけではソイルのレベルに及ばないんだよな……
そのため、プラス魔力のゴリ押しで相手の魔法を捻じ伏せるって感じの使い方になっている。
「ハハッ! ヴィーン様なんだから、当然だろ!!」
「そうですとも! ヴィーン様は阻害魔法も一流なのですよぉ!!」
「僕との練習が、ヴィーン様のお役に立っているなら嬉しい限りだ……」
たぶん夏休み中にでも、ヴィーンたちは秘密特訓をしてたんだろう……そして、それが実ったって感じかな?
『しかし、こう魔法を阻害されては……セテルタ選手としてはなかなか苦戦を強いられそうですね?』
『まあ、セテルタさんだからこそ苦戦を強いられるだけで済んでいるともいえそうです……そうでなければ、今頃魔法を完封されて剣による物理戦闘しか選択肢がなくなっていたでしょう……しかも、身体強化などの魔法も使えずに……』
『なるほど、阻害されているとはいえ、セテルタ選手は完全に魔法を使えなくはなっていませんものね……』
『それから、この状況はヴィーンさんが一方的に有利とまではいえません』
『一方的に有利とまでは……いえない?』
『はい、もともと阻害魔法は扱いが難しい上、保有魔力量自体はヴィーンさんに比べてセテルタさんのほうが多いようですからね……持久戦となると、セテルタさんのほうが有利となる可能性もあります』
『……ということは、もしや! セテルタ選手は既に持久戦を仕掛けているとか!?』
『その点についてはヴィーンさんも分かっていると思いますし……2人とも空気中の魔素を魔力に変換する技術をしっかりと持ち合わせているので、あとは自分の変換能力内で、かつ相手の変換能力を超えて魔力を消費させる……そんな攻防になりつつあるといえそうです』
『うぅむ、それはなかなか……ジリジリとしてきますね……』
『ええ、一つの判断ミスが致命的な結果を生みますからね……』
ふむ……こういった試合展開だと、まさに冷静沈着といった姿勢のヴィーンのほうが向いているかな?
「セテルタとしても、あんまりド派手な魔法を撃てない事情があるっていうのは分かったけど……それでもやっぱ……な?」
「ああ……こうも淡々と魔法を撃ちました、捌きました……って攻防をひたすら続けられてもな……」
「まあ、本人たちはギリギリの勝負をしてるつもりなんだろうけどなぁ……」
「やっぱり、使ってる魔法が地味過ぎるからだろうね……」
「ハァ……なんだか眠くなってきちまったよ……」
「おいおい、お前ら……確かに見た目に派手さこそないけど……それでもこの、お互いにどうやって相手に余分な魔力を使わせるかって駆け引き……面白くないか?」
「うむ……魔法の運用法を学ぶ教材と考えれば、これほど示唆に富む試合はなかなかお目にかかれないといえるだろう」
「なんていうか……物は言いようだねぇ……」
まあ、この展開を面白いと感じる者とつまらないと感じる者……割とハッキリ分かれてしまうのも仕方ない気はする……
「……おっと! ……相変わらずヴィーンは、一瞬の隙を突くのが上手いもんだね?」
「……セテルタも、よく反応したものだ」
『基本的に防御態勢を固めているヴィーン選手ですが、ふとした瞬間に反撃の一発を狙います!』
『狙うタイミングとしては絶妙の一言に尽きるのですが……それをきっちりと対処して見せるセテルタさんの勘のよさを褒めるべきかもしれません……』
『そんなセテルタ選手も、1回戦ではトイ選手の勘のよさにとても苦労させられましたものね……』
『ええ……そして、その経験がこの試合に活きているのかもしれません』
「正直、互角の展開……このままじゃ、埒が明かないね……となると、仕方ない!」
「……来るか」
『おぉっと、セテルタ選手! ここで突如として物理戦闘に切り替えるようだ!!』
『まあ、あのままでは今日中に試合が終わらなかった可能性もありますからね……』
『もしあのままの攻防を続けていたら、いつ、どのように決着がつくのだろう……なんてことを少しだけ考えてしまいました……』
ヴィーンが、多属性の天才であるセテルタを物理戦闘に引きずり出した……なんて言い方もできるだろうが、セテルタは物理戦闘も高水準でこなすからなぁ……
これだけで、ヴィーンが圧倒的に有利になったとはいえないだろう……
それに、接近戦で魔法を使うことだってじゅうぶん考えられるしな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます