第658話 勇者として見込みがある
「……フゥ……やっぱりアレスさん……アンタ、強いな……」
「フッ、当然だ……俺を誰だと思っている、アレス・ソエラルタウトだぞ? ……とはいえ、まだまだ俺も発展途上の身、もっともっと鍛錬を積んでいきたいところだ」
「ハハッ……アンタの意欲の強さには、ただただ頭が下がるばかりだよ……」
「ラクルス・ヴェルサレッドよ……お前も俺と同じく、まだまだ発展途上の身だ……今回は俺が勝ったが、お前のこれからの努力次第ではどうなるか分からん……ゆえに、お前ももっと鍛錬を積んで強くなれ! そして、俺のライバル心を刺激し続けろ!!」
「……俺の名前、覚える価値ありと認めてくれたみたいだな……嬉しいよ」
「フン! 俺は忘れやすいたちの人間だからな……お前が俺の刺激足りえないザコに成り下がったら、一瞬で名前を忘れてしまうことだろう」
「そっか……なかなか厳しいんだな……」
「まあ、それだけお前が期待できると思ってもいるわけだ……励めよ!」
「そうだな……よしっ! 気落ちしている暇なんかないな! これからもっともっと腕を磨いていくぜ!! ……それに、せっかくアレスさんに覚えてもらった名前を忘れられてしまうのも寂しいもんな!!」
「ああ! その意気だ!!」
とかなんとかいいつつ……もともとラクルスの名前をずっと覚えてはいたし、これから先もよほど接点がなくなるってことでもない限り、忘れることはないだろうなって思ってはいるんだけどね……
そんなことを話しつつ、ラクルスと2人並んで舞台から降り、自分たちの席へ向かう。
また、その途中のこと……
「……そういえば……試合中、アレスさんに女性騎士の姿が重なって視えた気がしたけど……もしかしたら、それがレミリネさんっていうんだっけ? だったのかもしれないなぁ……」
「何ッ!! レミリネ師匠の姿を!?」
「本当にそうだったのかは分からないけど……とりあえず、俺が視たのは……激しい戦いを終えたあとって感じのボロボロな鎧姿をした女性だった……」
「ボロボロな鎧姿……間違いない! レミリネ師匠だ!!」
「やっぱり、そうだったんだなぁ……」
「レミリネ師匠……そうか、お前もレミリネ師匠に会えたのか……なるほど、やはりお前は勇者として見込みがあるということだな!!」
「……なあ、アレスさん……その勇者っていうの、恥ずかしいからやめてくれないか?」
「何をいう……王女殿下と結ばれるには、勇者ぐらいにならんと示しがつかんだろ?」
「いや、まあ……そう……なのかもしれない……のかなぁ……?」
「ま! それぐらいの気概を持てということだ!!」
「そっか……まあ、確かにそうだな!」
まあね、まだ原作ゲームでは序盤なわけだし……ラクルスと王女殿下の恋路も、まだまだこれからって感じなんだろうなぁ……
そんな感じで俺とラクルスは会話をしながら、合間合間に客席からかけられる声に手を振って返事をしていたのだった。
なお、王国東部の人々などラクルスを応援していた観客も、負けて手のひらを反すことなく、温かい言葉を送っていたのでよかったなって感じだ。
そして俺も、リッド君たちや訪れたそれぞれの土地で出会った人々の笑顔……さらに、義母上や貴族のご夫人方の笑顔もいただけて、嬉しい限りだった。
『激しい激しい剣術勝負を、アレス選手が見事制しました! いやぁ、スタンさん……試合の最終盤にアレス選手が見せた怒涛の攻め、あれには本当に驚かされましたね?』
『ええ、まさしくですね……改めて、アレスさんの保有魔力量の規格外ぶりを見せつけられたといったところでしょうか……』
『保有魔力量! やはり、最終的にはそこに行き着いてしまうのですねぇ……』
『ただ、私もつい規格外という言葉でまとめてしまいましたが……アレスさんは決して保有魔力量の多さに安住しているわけではなく、日々魔力操作の練習に明け暮れ、空気中の魔素を可能な限りタイムロスなく魔力に変換して使おうとしているようですし……そうした努力を重ねることで魔臓という器自体も少しずつ……これは本当に少しずつですが……成長させ続けているようですので、先天的な才能だけで論じるべきではないとも思いますね』
『なるほど、そうやって外部から魔力を調達しながら自身の魔力を節約しているから、最後の怒涛の攻めに魔力をふんだんに使うことができたというわけですね! また、魔力操作の練習によって魔臓自体も成長させる……そんなアレス選手の姿勢を私も見習わなければと思いました』
『ええ、それは私にもいえることですね……また、本日観戦されている皆さんの中には、これから魔力の扱いを学んで行こうとされているお子さんや、戦闘に限らず日々の生活に魔力を活用できればと思っている方も大勢いらっしゃることと思いますが、こうしたアレスさんの姿勢を参考にされれば、きっと将来的に役立つでしょう』
『……今、何気にアレス選手が王国中に溢れかえっている光景が頭に浮かび、戦慄を覚えてしまいましたよ……』
『フフッ……それは凄い光景ですね』
『若干笑い事で済まない気もしましたが……それはともかくとして、これにて2回戦第1試合が終了。そして舞台の整備を挟みまして、第2試合の開始となります、ご期待ください』
次はヴィーンとセテルタの試合か……さて、どんな勝負を見せてくれるか……
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