第656話 気持ちが奮い起こされて当然でしょ
『これまでより強い光を全身から発し、まさに閃光と化したラクルス選手! 信じられない勢いでアレス選手に迫ります!!』
『今のラクルスさんの動きを目で捉えるのは非常に困難ですね……もっともアレスさんの場合、魔力を感じることでラクルスさんの動きを認識できているとは思いますが……』
「す、凄ぇ! ラクルス様、凄過ぎるぜッ!!」
「解説がいうとおりで……俺たちの目には、速過ぎて光の線にしか見えない……」
「よっしゃ! これでラクルス様の勝ちは決まったも同然だなっ!!」
「いいぞ! いいぞ! ガンガンいっちゃえ、ラクルスさん!!」
「よぉ~し! さらに俺たちも応援に力を入れようぜ!!」
「おう! ガッテンだ!!」
「ラークールス! ラークールス!!」
「「「ラークールス! ラークールス!!」」」
『ラクルス選手の勢いに乗せて、観客席からも一段と強くラクルスコールの大合唱が響き渡ります!!』
『ラクルスさんの体から発せられている光……それを見ていると、不思議と気持ちが鼓舞されてくるように感じます……それがよりラクルスコールを強めているのかもしれませんね』
そりゃあ、勇者の光だもん……気持ちが奮い起こされて当然でしょ。
まあ、原作ゲームにおいては、主人公がそうやって勇者の光を放つことで周囲が勇気付けられ、結果的に士気が上がるって感じだったんだろうしさ。
そう考えると、むしろこの光を見て周囲がシラーッとしていたら、それはそれでマズい気がする……
そして……これで主人公君はまた一つ蓋を開けたって感じかな?
とはいえ、魔王を撃破するには、まだまだ開けるべき蓋がいくつもあるだろう……
だが、先ほどのトーリグ戦で一つ、俺との試合でさらに一つ蓋を開けることができたのだ、主人公君自身なんとなくでも蓋の開け方を体得し始めているのではないだろうか。
といいつつ、わざわざ俺がこうしてお節介をせずとも、原作ゲームの流れ的に自然と主人公君は勇者の力をどんどん覚醒させていったかもしれないけどね……
ただ、それにはやはり、それ相応のシリアスな状況に陥る必要があっただろう。
よって、そうなる前にこうして安全というか平和な形で刺激を加えることによって、主人公君の覚醒を促せたのはよかったのではないかと思う次第だ。
ちなみに、トーリグにしろ俺にしろ、主人公君にとっては倒さなければならない敵という認識ではなかったので、勇者の力が自然には発動しなかったのかなって感じたりする……
「まだまだァッ! ウォォォォォォォォォォォォッ!!」
「ほう、まだまだとな? フフッ……それは実に素晴らしいッ!!」
主人公君の振るう剣が、さらに鋭さと重さを増加させてきている。
ふむ……このままだとさすがに魔纏が突破されて、木刀をヘシ折られてしまうかもしれないな……
「アレス兄ちゃ~ん! 頑張れぇ~っ!!」
「オレたちは、アレスのアニキを応援してるぞぉっ!!」
「あんちゃん!」
「アレスお兄様~! 負けないで~!!」
「アレスあにぃこそ一番なんだ! 絶対勝つんだ!!」
そして、リッド君たちの声援が耳に届く。
うん、あまり心配させちゃ悪いよね……
というわけで……ちょっくら魔纏の出力を上げるとするかな?
「……! ……だがッ!!」
『防戦気味に圧されつつありましたが、やはりアレス選手! 徐々に盛り返し、均衡状態まで戻していく!!』
『おそらくアレスさんは木刀が折れてしまうのを気にして回避や受け流しが多くなっていたのでしょう……それで圧されているように我々も感じ始めていたのだと思います……ですが、どうやらアレスさんは魔纏の出力を上げたようで、それによって木刀の強度を気にせず打ち合えるようになり、ラクルスさんの勢いに対抗できているのだと思います』
『普段アレス選手はトレントの木刀を使っているからといって……この武闘大会でも、あえてただの木刀を選択する必要はなかったようにも感じてしまいますが……』
『確かにそうですね……まあ、アレスさんなりに木刀という武器にこだわりがあるのでしょうし……さらにいえば、それで勝てるという自信の表れでもあるのかもしれません……それにいざとなったら、魔法で武器を生成することもできますからね……』
「この試合……果たしてどちらが勝つのだろうか?」
「気迫が凄いし、ひょっとするとラクルスの野郎……あの魔力操作狂いを倒しちまうんじゃねぇか?」
「まあ、打ち合い自体はほぼ互角のようにも見えるが……」
「でも、やっぱり魔力操作狂いなんじゃないか? うっすらと笑みも浮かべているみたいだし……」
「いやいや、あのラクルスの輝きを見てみろよ……なんかやってくれそうな感じがしないか?」
「う~ん……確かにラクルスを見てると、さっきスタンがいってたみたいに、こっちもテンションが上がってくるもんな!」
「だが、お前ら……魔力操作狂いには、まだ魔法が残されていることを忘れていないか?」
「そ、そういえば!?」
「そうはいうけど、ここで攻撃魔法に頼っちまったら……それは魔力操作狂いの精神的敗北じゃねぇか?」
「ま、まあ……『剣の腕では勝てませんでした』って認めることにはなりそうだもんな……」
「それは魔力操作狂いのプライドが許さないだろうなぁ……」
そのとおり! 俺はこの試合、レミリネ流剣術で勝つのだ!!
といいつつ、魔纏とか身体強化などを補助的に使ってはいるけどね。
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