第655話 のぼせ上がっているのか?
「ラクルス様~っ! 頑張ってくだせぇ~っ!!」
「ラクルスさん! まだまだいけるっすよ!!」
「俺たちの街を守ってくれたラクルス様はムチャクチャ強いんだ! こんなところで負けるわけねぇ!!」
「そうとも! あのときの! モンスター共をバッタンバッタン倒したときの強さを! 今日も見せてくれぇッ!!」
「……まあ、自分らの街を救ってもらったって恩もあるだろうから、お前らがラクルスって奴に肩入れしたい気持ちも分かるが……相手は、今すっごい勢いのある大貴族のご子息様というじゃないか……さすがに厳しいのでは?」
「しかも、ソエラルタウトっていったら、ぶっちぎりの武系貴族って話だろ?」
「ああ、そうだな……それで、あの闘いぶりを見ても分かるとおり、武系の血をこれでもかってぐらい色濃く引いているようだ……」
「親の血ってことに関していうと、俺はガキの頃にソエラルタウト侯爵がこんなふうに闘ってるトコを見たことがあるんだが……あのお方の氷魔法は本当に凄かった……そのお子様なのだと考えれば、アレス様の強さも納得だよ……」
「といいつつ、この試合、その氷魔法を全然使ってないけどな……」
「つまり、ラクルスって奴は……レミリネ流だかって謎の剣術を攻略した上で、さらに魔法も攻略しなきゃ駄目ってことか……それはキツイな……」
「……お前ら、ゴチャゴチャうるせぇっ! それでもラクルス様は勝つんだよ!!」
「そうだ、そうだ! あのときだってラクルス様は、数えきれないほどのモンスターの大群を次々と斬り飛ばしてったんだ! あのときのことを思い出せば、相手の強さなんて関係ねぇ!!」
「そうっす! ラクルスさんはへこたれない人っす!!」
「ラクルス様は俺たちの英雄なんだ! 負けるわけがねぇッ!!」
「とにかく! ラクルス様を応援するぞ!!」
「よっしゃ!!」
「ラークールス! ラークールス!!」
「「「ラークールス! ラークールス!!」」」
ふむ、英雄……か。
まあ、原作ゲームの主人公なんだからね……それぐらいでなくちゃ、といった感じである。
それじゃあ、そろそろ刺激を加えてみるとするかね。
「お前……人々から英雄とか勇者などとおだてられて、のぼせ上がっているのか?」
「……なッ!? そんなわけないだろッ!!」
「ほう? 英雄だなんだと呼ばれている割にはたいしたことがないから、てっきりのぼせ上がって全力の出し方を忘れているのかと思ったぞ?」
「な……なんだとッ!?」
「それに、始まる前にもいったはずだ『出し惜しみせず、最初から全力で来い』……とな」
「だから! 俺は今、全力を出しているッ!!」
うん、そうなんだろうとは思うよ。
でもね、こうして直接刺激できる機会がこの先どれだけあるか分からないからさ……できるときにやっときたいんだ。
というわけで……すまんね!
「まあ、種火程度の力は感じないでもないが……まだまだ弱過ぎる! お前の全力はそんなもんじゃないはずだ!!」
「な、なんで……アンタにそんなことが分かるんだよ?」
原作ゲームをプレイして知ってるからだよ……なんて情緒の欠片もないことをいうわけにはいかない。
というか、自分が異世界転生者だということは秘密にしておくべきだろうし……
「フン! 俺を誰だと思っているのだ? お前自身に秘められた力がまだまだ何重にも蓋がされた状態であることなど、俺には簡単に感じ取れる!!」
「……魔力操作……そうか、常日頃から魔力と向き合ってるアンタなら、そういった力のことは誰よりもよく分かるってことか……」
口には出さなかったみたいだけど……主人公君の脳内では「魔力操作狂い」という呼び名が思い浮かんでいたんだろうなって感じだ。
「それから、お前が夏休み中に鎮圧したというモンスターの氾濫……まさかそれが最大規模だと思っているわけではあるまいな? この先、それよりも大規模なモンスターの氾濫が発生する可能性など、いくらでもあるぞ? そのとき、この程度の力で鎮圧できるのか?」
「そ、それは……」
「お前の力が及ばす、モンスターに壊滅させられた街の様子を想像してみろ!」
「モンスターに壊滅させられた街の様子……」
「そうだ……お前を慕って、あんなふうに応援してくれる人々が苦しむ姿を鮮明に思い描いてみろ!」
「人々が苦しむ姿……う、うぅっ……!!」
「どうだ!? そんな光景、見たくないだろう! ならば、蓋を開けろ! そして、お前に秘められた力をさらに開放するんだ!!」
「そんな光景……見たく……ない! 見たくないんだァッ!」
『な、なんと……ラクルス選手! ここにきて、全身からさらにまばゆい輝きを放ち始めました!!』
『ラクルスさんには、いったいどれだけの力が秘められているのでしょうか……』
「ラクルスの野郎……マジかよ……」
「1回戦とここまででじゅうぶんな凄さだったっていうのに……」
「まぶしい……けど、あたたかい……」
「毎度のことながら、魔力操作狂いは何考えてんだよ……」
「ホントにね……わざわざ相手の力を引き出す必要なんてないのに……」
主人公君を見て、場内にどよめきが広がっているようだ。
「フフッ、フフフフフ……そうだ! それでいいんだ!!」
「ウォォォォォォォォォッ!!」
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