第654話 成長具合としてはまずまず

 主人公君に対して「俺はまだ余裕があるよ」って感じで煽っているけど、これはある意味当然でもある。

 なぜって……それは、アレス君の体が超ハイスペックだからさ!

 というか、そもそも論として原作アレス君はたいして努力をすることなく、原作ゲーム終盤まで主人公に喰らい付いてった、ある意味猛者でもあるからね……

 そして、なんでそんなことができたかっていうと、それはもちろん体に備わっていた圧倒的な保有魔力量のおかげである。

 ちなみに、原作アレス君の設定上のステータスをレーダーチャートで示すとするなら、他の項目はほとんどすべて最低値となり、魔力の項目だけ「ギューン!!」って突き抜けた感じになるだろう。

 まあ、原作アレス君は終盤でも思いっきり肥満体で、素早さとかほぼゼロだったしさ……

 というわけで、原作アレス君は全てを魔力のゴリ押しで進めてった男といえるわけだね。

 そんな原作アレス君の体に前世の俺成分が混ざった!

 するとどうなったか!?

 まずは、ダイエットをすることによって体が自由に動くようになった!

 その自由に動くようになった体でもって、鍛錬をひたすら積んだ!

 また、身体的な面だけでなく、並行して魔力操作を練習することで保有魔力量の多さというアドバンテージをさらに活かせるようにした!

 しかも、アレス君の体の超ハイスペックさは、そうした努力したものの吸収率がかなり高いことにも表れている。

 あっ、もしかすると……その吸収率の高さが悪いほうに表れて、原作アレス君は肥満体になってしまったのかもしれないね……

 とまあ、それはともかくとして、魔力のゴリ押しだけで原作ゲーム終盤まで喰らい付いてった男が、努力によってほかのステータスまで伸ばしている状態なんだ、弱いわけがない。

 それに対し現在の主人公君はというと……原作ゲームであればまだ序盤なわけだし、成長具合としてはまずまずといったところだろうと思う。

 まあ、序盤からガンガンレベル上げを楽しむってタイプのプレイヤーもいらっしゃるとは思うが……とりあえずこの世界の主人公君は、極々平均的なプレイスタイルのレベル感といえるだろう。

 そんなわけで、主人公君から見て今の俺は「この上なく終盤レベルの奴が、なんでこんな序盤に出てくるの!?」って状態なので、余裕ぶった態度でいられるわけだね。

 それで、現時点でまずまずのレベル感といえる主人公君がこのまま普通に成長していけば、おそらく魔王が復活して戦うことになったとしても勝てるだろう……途中で意味不明に脇道にそれたりして成長が止まらない限りはだけど。

 ただ、そんな「まずまず」って感じじゃ駄目な気もしてくるんだよね……

 俺が本来のシナリオを無視しているのが何かしら影響して、魔王が想定より強くなっているってことも考えられるだろうし……周囲への被害を減らすことを考えれば、少しでも主人公君を強くしておくほうがより望ましいといえるだろう。

 というわけで、主人公君が「もっと強くなりてぇ!!」って感じでモチベーションを高められるよう、この試合でちょっくら刺激を与えておくとしようかな?


『ラクルス選手、1回戦の終盤で見せた勢いでもって力いっぱい攻め立てていますが……対するアレス選手、涼しい顔でその猛攻を捌いています……』

『アレスさんは全身の隅々まで魔力を巡らせ、身体能力を大幅に高めているようですね……それによって、眼はラクルスさんの動きをよく捉えていますし、その捉えた動きに対しても、遅れることなくしっかりと体を反応させることができています』

『いくらアレス選手の保有魔力量が多いとはいえ……そこまで魔力を使いこなすのは難しいですよね?』

『ええ、そうですね……体の外部で、ただひたすら魔力を注ぎ込んで威力の大きな魔法を放つといったことなら、比較的やりやすいといえるでしょうが……身体能力の向上といった、体の内部に作用する魔法は細やかな魔力操作を要求されるので、難易度が跳ね上がるでしょう』

『まあ、その威力の大きな魔法を放つってこと自体もなかなか難易度が高いとは思いますが……それはそれとして、さすが常日頃から魔力操作の練習を熱心に取り組んでいるアレス選手だけあるといったところでしょうか……』

「や、やっぱ……魔力操作狂いってハンパじゃねぇよな……」

「そうだね……見た感じ、ラクルス君だって凄いのに……」

「あんな動きを見せられると……あんだけうるさく『魔力操作をやれ!!』っていうのも理解できる気がしてくるな……」

「アレス様の魔力操作の巧みさはもちろんのこととして、あのレミリネ流剣術とおっしゃられる動き……見ていて、とても凛とした美しさを感じますわ……」

「はい、私にも気高さが感じ取れます……」

「どうしてでしょう……わたくしには、自立した女性の在り方みたいなものが示されているようにも感じられるのです……」

「レミリネ流剣術……学んでみたいわ……」


 ……お! レミリネ流剣術に興味を持ってくれた人がいるみたいだね!!

 そして、そうなんだよ! レミリネ師匠は気高く美しいんだよ!!

 それにさ! とても包容力があって、温かくて大きな……まるで太陽のような女性なんだよ!!


「そう考えると、今のお前はまだまだ小さい……さしずめ種火といったところか……」

「……何を……いっているんだ?」

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