第651話 やっぱりそれなりにあるのかな?
「……アレス・ソエラルタウトさん、ラクルス・ヴェルサレッドさん、2回戦第1試合が始まりますので準備をお願いします」
昼食を終え、闘技場に用意された本戦進出者用の席に戻ってまったりしていたところに、呼び出し係の人が俺とラクルスを呼びに来た。
俺の一つ前の出番が1回戦第1試合だったこともあって、とても久しぶりに感じてしまうね。
「さて、それでは行ってくるとするかね……」
「お前のことだ、どうせラクルスに秘められた真の力を全て解放させた上で勝つつもりなのだろう?」
「ロイター様のおっしゃるとおりかと思いますが……果たしてラクルスさんはどれだけの力を秘めているのか……」
「アハハッ! まったくアレスときたら……ワクワクしちゃってるみたいだねぇ?」
「ま! 経験者としていわせてもらうなら、あの力はハンパじゃねぇってこった!!」
「ええ、そうでしょうとも……なぜって、トーリグをコテンパンにした力ですからねぇ~?」
「おい、ハソッド! コテンパンとはなんだ!? 俺はギリギリのトコで負けただけだっつーの!!」
「まあまあ、2人ともその辺で……それはそうとアレスさん! 頑張って来てくださいね!!」
「……健闘を祈る」
「闘いを楽しむのも結構だけれど……油断だけはしないように」
「アレス君! しっかりね!!」
「うむ! 俺の華々しい闘いぶりを楽しみにしているがいい!!」
それに、今のところ主人公君は剣術をメインとした戦闘スタイルのようなので、レミリネ流剣術を披露する相手としてはうってつけといえるだろう。
また、俺が夕食後の模擬戦メンバーに激励を受けていたあいだ、同じように主人公君も仲間たちに激励されながら移動を開始したようだ。
そうして俺も移動を始めた。
「アレス・ソエラルタウト……」
前を通り過ぎようとしたところ、テクンドがやや小さい声で呟くように俺の名を呼びかけてきた。
「フッ、お前のぶんも気合を入れて闘って来るとしよう」
「……ああ」
短い言葉のキャッチボールだったが、それでじゅうぶん俺たちは通じ合うことができただろう。
それがマブダチというものだ……なんてね。
それはそうと……やはり主人公君と対戦することになったか……
ここで対戦することにならなければ、原作ゲームの強制力は存在しない……仮に存在したとしても微弱なものだと判断できたと思うんだけどね……
う~む、原作ゲームの強制力……やっぱりそれなりにあるのかな?
この対戦中、例えば不運が重なってポーション瓶が割れた……みたいな形で無理やりにでも俺が負けさせられるようなことがあれば「原作ゲームの強制力は絶対ある!」と判断できるんだろうけどね……
とまあ……実力で負けるなんてことは一切考えない辺り、俺もなかなかに傲慢ボーイだねぇ。
こういった心境は、試合に臨むにあたって原作アレス君も同じだったのかもしれない。
だからこそ、負けてプライドを傷付けられたのだろうし……
なんてことを考えていたところ、客席から聞き覚えのある声がするのを耳がキャッチした。
「アレス兄ちゃ~ん! 2回戦も頑張ってね~!!」
「まっ! アレスのアニキなら、絶対勝つと思ってるけどなっ!!」
「そうそう! なんたって、あんちゃんは最強だかんな!!」
「お兄様の勝利をお祈りしておりますねぇ~!!」
「アレス兄のカッケェところを2回戦でも見せてくれよな!!」
「アレスあにぃが活躍するところ、楽しみにしてるよ!!」
リッド君たちから声援を受けたことで、さらに元気をもらえた。
というわけで、手を振って応えた。
そして、リッド君たち以外にもこの会場には俺の見知った人たちがいて、それぞれ応援の声を送ってくれる。
それらに対しも、応えられるだけ応えておいた。
「な、なあ……ソエラルタウトっていったら……超が付くぐらいの大貴族だよな?」
「ああ、貴族ってだけで特別な存在だが……ソエラルタウト家ともなれば、普通の貴族なんかじゃ比べ物にならないぐらい……まさに雲の上の存在といえるだろう」
「確か、今代のソエラルタウト侯爵が当主になってから侯爵に陞爵を果たして、今すっごく勢いのある家のはず……」
「そんなメチャクチャ凄い貴族が笑顔で手まで振っている相手……明らかに俺たちと同じ平民だよな?」
「うん、間違いなく平民だろうね」
「そういえば1回戦が終わったあとも、あんな感じで平民相手に手を振ってたよな?」
「ああ、そうだった気がする」
「超貴族のお坊ちゃまがって考えると……なんていうか、信じらんねぇよ……」
「同じく……」
「きっと、とっても気さくな人なんだろうなぁ」
「全てのお貴族様がそうだとありがたいのにねぇ……」
「ああ、まったくだ……」
俺のみんなへの対応を見て、軽い驚きを感じているらしい一般の観客たちがいた。
まあ、今のアレス・ソエラルタウトには、前世でまごうことなき一般ピーポーだった俺という成分が含まれているからね、自然とそういう感じになってしまうのも仕方あるまい。
そこで観客席の貴族たちが集まっている辺りにチラリと視線を向けてみると……不満げな表情を浮かべているオッサンがまあまあいる。
おそらく貴族のプライドがどうのこうとでも思っているのだろうね。
とはいえ、多くのご夫人方が向けてくれる視線は温かいので、俺としてはそれで大満足である。
「……よし、今回は君が俺の相棒だ」
というわけで武器選択を終え、いざ闘いの舞台へ。
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