第649話 ズッシリときたのは確かだね……

「……勝者! ロイター・エンハンザルト!!」


 審判の宣言により、ロイターの勝利が確定した。

 うん、ハソッドもなかなか光るところのある闘いぶりだったと思うのだが……やっぱりロイターとはね、地力が違ったとしかいいようがないだろう。


『ロイター選手! 見事に1回戦突破です!!』

『ハソッドさんもかなり健闘したのですが……ロイターさんという壁は高かったですね……』


 おっ、スタンも俺と同じような感想のようだね。


「さすがっ! ロイター様だわっ!!」

「圧倒的完勝! ロイター様こそ我が栄光!!」

「ロイター様! 超絶カッコいいッ!!」

「やはり……ハソッドごときでは、ロイター様の敵になり得ませんでしたわねぇ?」

「そうだよねっ! ロイター様は強過ぎるもんっ!!」

「まあ、実力で劣っているにもかかわらず、ハソッドもそれなりに頑張ってはいなんじゃないかしら?」

「えぇ~っ? ロイター様が凄過ぎて、ハソッドなんか全ッ然たいしたことなかったでしょ!」

「でもまあ……ロイター様が絶対的過ぎただけで、ハソッドも本戦に残っただけの力は示したと思うけどね?」

「ま、ハソッドみたいなザコのことはどうでもいいでしょ! それより、ロイター様の素晴らしい勝利、その余韻に浸るべきよ!!」

「それもそうね!」


 ロイターのファンクラブ会員たちは当然として、ロイターを支持する女子のほうがやっぱり多いみたいだね……

 ただ、その中にもハソッドの奮闘を認める声があっただけマシなんじゃないかとは思う。


『さて、これで1年生男子の部1回戦が全て終了となりました。このあとは舞台の整備を挟みまして、1年生女子の部1回戦が開始となります。ぜひ、女子の闘いぶりにもご期待いただければと思います』

「フゥ~ッ、これで男子の1回戦が終わりかぁ……なかなか重たかったな……」

「それだけ見応えがあったともいえるんだろうけど……でもやっぱり、ズッシリときたのは確かだね……」

「去年まで見てきた感じだと、1回戦はもっとアッサリ終わってたと思うんだけどな……」

「それどころか、今見てきた8つの試合のどれもが、去年までなら決勝でもおかしくないレベルだったと思うぞ?」

「今年……レベル上がり過ぎィ~ッ!!」

「俺、こういう大会を初めて見に来たんだけど……このレベル感がスタンダードになってしまったら、マズいことになりそう……」

「ああ、これを基準にしてしまうと、この先どの試合を見てもイマイチに感じるようになってしまうかもしれないな……」


 ほう、今日ここに来たおかげで一般の観客たちは図らずも目が肥えてしまったわけだ。

 でもまあ、これから徐々に魔力操作に励む人が増えていく……増えていかせるつもりだから、目が肥え過ぎてしまう心配は必要ないと思うよ?


「そんで、このあとは女子の1回戦が始まるわけか……」

「なあ……女子も今見てきたような感じで試合が続くのかな?」

「どうなんだろ……さすがに女子はもうちょっとマイルドなんじゃないか?」

「ああ、基本的に貴族令嬢といえば花嫁修業に重きを置いてるはずだからな……そこまで戦闘技術は磨いてないだろうよ」

「まあ、中には変わってる子もいるだろうけど……おそらくそういう子は少数派だろうしな……」

「だ、だよなぁ……?」

「女子まで男子並みに重たい試合を見せるっていうんだったら……来年からは男子と女子でも試合の日を分けてほしいぐらいだよ……」

「確かに、いえてる……」


 ふむ、試合の日を分けるねぇ……まあ、アリっちゃアリかな?

 今週は地の日が予選通過決定戦があったとはいえ、水・火・風の日が準備期間となって授業が休みだったからね、その日を使えば日程的にやろうと思えばやれると思うし。


「……でもよ、男子に触発されて頑張っちゃいましたって女子……絶対いると思うぜ?」

「いる……だろうなぁ……」

「問題は、それがどれぐらいの人数いるかってことだな……」

「本戦出場の16人全員だったりして……」

「……うん、甘い見通しは捨てて、俺たちもバシィンと受け止める心構えを固めておこうか」

「でもまあ、貴族令嬢ともなればキレイな子ばっかりだろうし……いうほど見てて疲れることもないだろうさ」

「そっか……それもそうだな」


 うん、観客のみんなも覚悟を決めておいたほうがいいと思う。

 だって、うちのファティマやパルフェナ、それから原作ゲームのヒロインたち、あと俺が魔力操作を勧めた女子たちが勢ぞろいしているからね……男子と比べったって見劣りしないはずだ。

 とか思っているうちに、ロイターとハソッドが戻ってきた。


「お2人とも、お疲れ様です」

「いい試合だったと思うよ!」

「負けちまったけど、ハソッドもよく頑張ったと思うぜ!」

「うん! ハソッドらしい闘い方ができてたと思う!!」

「……手に汗握る闘いぶりだった」

「うんうん! 私たちもこんなふうにこれから頑張んなきゃって思ったよね、ファティマちゃん?」

「ええ、そうね」

「ハソッドよ……武闘大会が終わったら、お前もさらに鍛えてやるからな! 楽しみにしていろよ!!」

「まあ、私も何度かハソッドにヒヤリとさせられたところがあったからな……武闘大会が終わったら、私もさらに鍛える必要があるだろう……というわけで、共に頑張ろう」

「はは……お手柔らかにお願いしますねぇ……」

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