第647話 気持ちで負けんじゃねぇぞ!!
「2人とも! ナイスファイトだったな!!」
「ああ、しっかり全力を出し切って来たみたいだな!!」
「お疲れ様です、見応えのある実にいい試合だったと思いますよ」
「お三方にそういってもらえると、ありがたいでござる……そして、ホウフウ殿が相手だったからこそ、拙者もいつも以上の力を発揮できたのでしょう」
「フッ、それはこちらとて同じこと、ティオグによって実力以上の力を出せたに違いない……そのおかげで今は敗北の悔しさよりも、清々しさのほうが勝っているぐらいだ」
「そうだなぁ……見た感じ2人とも、いつもの訓練のときよりいい感じだったもんな!!」
「まったく! そんな試合ができたお前らが羨ましくなってくるぜ!!」
「そして、私たちのうち2回戦に駒を進めることができたのはラクルスとティオグだけとなりましたね……ぜひとも2人には、私たちのぶんも頑張ってもらいたいところです」
「うむ……2人とも、まだまだやれるはずだ……期待している」
「ええ、期待に応えられるよう……全力を尽くしていく所存でござる!」
「おう! みんなの気持ちを背負って頑張ってくるぜっ!!」
試合を終えたティオグとホウフウを迎えた王女殿下の取り巻きたち。
ちなみに、ひととおり男子たちで盛り上がったところで、本戦進出を果たした女子たちも加わってワイワイしている。
ふむふむ……あっちはっちで団結していて、いい雰囲気のようだ。
ただね、主人公君……仲間たちとワイワイしているところ悪いが、2回戦の相手が俺だということ……忘れないでおいてくれよ?
「……ッ!?」
「ラクルス……どうしたの?」
「い、いや……改めて2回戦、気合を引き締めて臨まないとなって……そう思っただけさ……」
「そう……でも、相手が相手だからって、あまりムチャはしないようにね?」
「ああ、分かってるって!」
そんな感じで、幼馴染ヒロインのニアと話しつつ主人公君は、俺にチラリと視線を向けてきた。
フフッ……ちゃんと理解っているようだね?
俺との対戦に向けて……しっかりと気力を充実させておいてくれたまえ。
そう思いつつ、ニヤリと笑みを返しておいた。
「……ハソッド・テルームゥさん、ロイター・エンハンザルトさん、第8試合に向けて準備をお願いします!」
ここで呼び出し係の人が、2人を呼びに来た。
「さて、ようやく私たちの出番か……ハソッド、いい試合にしようじゃないか」
「いい試合ですか……ええ、そうなるよう持てる力の全てを出し切って挑ませてもらいますよぉ!」
「ほう……それは楽しみだ」
「お2人とも、存分に試合を楽しんできてください」
「そうそう! そして悔いを残さないようにね!!」
「ハソッド! 相手がロイターさんだからって、気持ちで負けんじゃねぇぞ!!」
「ファイトッ! です!!」
「……武運を祈る」
「2人とも! 頑張ってね!!」
「期待しているわ」
「お前たちの華々しい闘いぶり……しかと見届けさせてもらうぞ!」
こうして俺たちは、ロイターとハソッドの2人を送り出すのだった。
また、ティオグとホウフウの繰り広げた第7試合はそこまで舞台をボコボコにしていなかったので、軽い整備で既に終わっている。
とまあ、それはともかくとして、ロイターとハソッドが武器の選択をし、係の先生による装備品チェックも終えた。
『……舞台中央にそろった2人に、王女殿下から胸ポケットに最上級ポーションが挿入されます』
「かぁ~っ、なんだよアイツら! せっかく王女殿下がポーションを挿してくれてるっていうのに、しれっとした顔しやがって!!」
「そうだそうだ! もっと顔を赤らめてくれなきゃな!!」
「いや……別に野郎の照れた顔なんざ見たくねぇけど……」
「でもまあ……ロイター君はファティマさん一筋だし……ハソッド君はトーリグ君と一緒で、女性関係が淡泊だからねぇ……ああいう反応になるのも仕方ないんじゃない?」
「……ロイター様はアレス様とセットでこそ輝くお方……ファティマみたいなちんちくりんなんかとは似合わないわ」
「そうね、そしてわたくし……アレス様に振り回されているロイター様をもっと見たいわ……」
「私はね、アレス様にツッコミを入れているロイター様がいいなぁ……」
「それ分かる! なんかイキイキして見えるもんねっ!!」
「ねぇ……知ってる? トーリグとハソッドが女子に興味が薄いのって……あの2人で完結してるからなのよ?」
「まぁっ! そうなの!?」
「確かに、あの2人……いい組み合わせかも……」
今回もバッチリ、王女殿下への対応チェックがなされていた。
また、俺としてもロイターのツッコミを求めているところがあるので、聞こえてきた女子の会話に同意する部分もある。
それはそれとして……トーリグとハソッドの関係について、誤った情報を流すのはやめてやれって感じだが……自分の信じたいものを信じる者たちには、それが真実として受け入れられてしまうんだろうなぁ……
まあ、それが嫌なら、さっさと相手を見つけるしかないのだろうね……
といったところで……
「……それでは、両者構えてッ!」
そういって審判が右手を天に掲げ、振り下ろすと同時に……
「始めッ!!」
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