第643話 その大剣には重量がないのか!?

「こうまで私のウインドバレットが躱されてしまうとは……さすがサンズさんです」

「いえいえ、狙いも的確だと思いますし、速度も申し分なしだと思いますよ……ただ、属性は違いますが、バレット系の魔法は友人によく見せてもらっているものですからね……比較的、目が慣れているのかもしれません」

「なるほど……先ほどのソイルさんのストーンバレットはなかなか素晴らしかったですものね」

「ええ、おっしゃるとおりです」

『カイリー選手が放つウインドバレットの一発一発を丁寧に回避しながら前進していくサンズ選手……それにしてもこの2人、物言いが穏やかなせいもあってか、まるでティータイム中に談笑しているかのようです』

『とはいえ、カイリーさんが射出しているウインドバレットの一発でも当たってしまえば、なかなか大きなダメージを負うことになってしまうのですがね……』


 ナウルンのいうとおり、試合中の2人は割と似た感じのタイプだもんね……

 ただし、それは性格的な面の話であって体型的には似ていない……っていうか、カイリーは割と身長が高めだ。

 そこで、さっきの嫉妬がうんぬんって話をするならば、サンズは性格的に似たタイプのカイリーの身長に対して羨ましさを感じている可能性があるし……なんだったら、サンズに嫉妬を向けていた奴の身長に対してだってそう思っているかもしれない。

 もっというと……そもそもサンズは、女子からモテている状況をさほど喜んでいないからね……

 ま、そんなふうに考えると、自分が当たり前だと思っているものが、実は他人にとっては特別なものだったりする……なんてことが意外と世の中には多いのかもしれないね。

 というわけで、アレス君ボディという超ハイスペックな肉体に転生させてくれた転生神のお姉さんに感謝しよう……ありがとうございます。


「……お前は、また余計なことを考えているな? そして、気を抜いて光属性の魔力を周囲に漏らさないよう気を付けろよ? お前はただでさえ光属性が強いのだからな」

「……ん? そうだな……サンズとカイリーが似てるって話を聞いて、ついね」

「ふむ……多少、話し方に似た部分があるといったところか……」

「とはいえ、カイリーにサンズほどのぶっ込み力があるかどうかは分からんがな?」

「うむ……サンズは突然、際どいところを攻めてくることがあるからな……油断はできん」

「ああ、例えばあんなふうにな……」

『おぉっと! ここでいきなり、カイリー選手の足元から火柱が上がったぁ!! だが、カイリー選手! とっさに後方に跳び、難を逃れます!!』

『今のをよく察知できたといいたいところですが……』

「……させません!!」

「いい反応ですね!」

『カイリー選手の着地点に向け、急速に距離を詰めて大剣を振るおうとしたサンズさんでしたが、ウインドウォールに阻まれてしまいました! そしてまたお返しといわんばかりに、カイリー選手が槍で一突き! ですが、サンズ選手もこれを身軽に回避!!』

『この間合い、どうやらサンズさんのものになってしまっていますね……ここでカイリーさんは翻弄されず上手く対処していけるか、我慢の時間です……そして、できれば早々に距離を離したいところでしょう』

『スタンさんのおっしゃるとおり、次々と迫りくる大剣の脅威にカイリー選手! 防戦一方!!』


 まあ、俺たち夕食後の模擬戦メンバーの中で、サンズの物理戦闘能力は一番といっても過言ではないからね。


「クッ……まだまだ、この程度で……」

「ええ、まだまだこの程度で終わりではありませんよ!」

『速い! 鋭い! その大剣には重量がないのか!? そう思わされてしまうほどサンズ選手は軽々と大剣を振るい、カイリー選手に襲い掛かります!!』

『カイリー選手もよく堪えていますが……』


 このまま押し切って終わるのか?

 それだと、予選の流れとたいして変わらんぞ?

 まあ、時間的に多少粘ってるほうになるかなってぐらいだけでね。


「や~ん! サンズ君、カッコいいっ!!」

「やっぱり! 私のサンズ様は最高ね!!」

「まあ、アンタのサンズではないけど……イケてるのは確かよね」

「そのまま決めちゃってっ!!」

「そこだっ! いっけぇっ!!」


 ふむふむ、サンズのファンクラブも応援に熱が入っているようだね。


『サンズ選手の押せ押せムードで試合が展開されています! このままカイリー選手、なすすべなく試合を決められてしまうのかッ!?』

「……あまり私を……舐めてもらっては困りますッ!!」

「おっと!」

『ここでトルネードが発生! そして、サンズ選手を飲み込もうと迫ります!!』

『あれに飲み込まれたらひとたまりもないですね……ただし、サンズさんを捉え切れるか……』

「まだまだですッ!!」

『おぉっと! さらにもう一つ、サンズ選手を左右から挟み込むような形でトルネードが発生! いや、それだけではない! サンズ選手の後方にも! 合計三つのトルネードがサンズ選手に迫ります!!』

『カイリーさんも思い切りましたね……』

「キャァーッ! サンズ君!!」

「逃げて! サンズ様!!」

「ヤバッ!」

「危ないっ!!」

「あぁっ! どうすればいいのっ!!」


 さて、これでカイリーは形勢逆転できるかね?

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