第641話 戻ってきたら温かく迎えてやるとしよう
「……勝者っ! シュウ・ウークーレン!!」
『今! 審判の宣言により、シュウ選手の勝利が確定致しました!!』
ソイルが負けてしまったか……
だが、ソイルは全て出し切った上でのものだ……戻ってきたら温かく迎えてやるとしよう。
そして、ソイルファンクラブの様子はというと……
「あ~あ、せっかく応援してたのに負けちゃうなんてガッカリ……やっぱりナシかな………………な~んて、いうわけないでしょ! これからも私はソイル君狙いで行くわ!!」
「チッ……ライバルが1人でも減るかと期待してたのに……」
「まあ、相手があのウークーレン家じゃ仕方なかったんじゃない?」
「そうそう、もともとソイル君が得意としている相手って魔法をメインに使う人だったはずだし? それなのに魔法をあまり使わず、武術をメインに使う……どころか、1年男子の中で接近戦最強なんてウワサもあるシュウ・ウークーレンだもんねぇ……」
「うん、相手が悪かった……いや、相性が悪かったっていうべきかな……」
「まさしくそのとおり! ほかの人が相手だったら、きっと勝ってたに違いないっ!!」
「とりあえず、負けて気落ちしているだろう今がチャンス……ここで上手くよしよしできれば……」
「あっ! 抜け駆けしようだなんて、そうはいかないんだからね!!」
「ふふっ……考えることはみんな一緒といったところかしら……」
「ソイルきゅんは私のもの……誰にも譲らないわ……」
「な~にいってんの! それはこっちのセリフよ!!」
「ここからが、私たちの本当の勝負……」
……ふむ、ソイルのファンクラブ会員たちは「敗者には用がない」ってことにはならなかったみたいだ。
正直、ファンクラブのスタートが前期の試験結果による手のひら返しからだったので、少々意外に感じてしまった。
とはいえ、あの闘いぶりを見てダメっていうなら……もうほとんど選択可能な男子がいなくなっちゃうだろうからね……
「シュウが勝ったけど……まあ、当然の結果よね?」
「ええ! シュウ様はとっても強いお方なのだから!!」
「むしろ、ソイルごときによく付き合ってやったって感じじゃない?」
「確かにね……でもまあ、ソイルに何かしらの見どころを感じたのではないかしら?」
「えぇと、阻害魔法っていうんだっけ……あれの研究とか?」
「それもあるし……まあまあ魔法を使うのも上手かったみたいだから、この先を見据えた実践訓練の意味もあったんじゃない? ほら、まだまだ魔法の上手い人がいるみたいだからさ」
「ま! どんなのが出てきてもシュウの敵じゃないでしょ!!」
「おっしゃるとおり! シュウ様に敵う方などおりません!!」
「そうね……かといって油断するわけにもいかない……」
「そんなことより、なんだかんだいって結局のところ、あんなにじっくりシュウと闘えて……実に羨ましい限りだったわ……」
「そう! ホントそう!!」
「わたくしも、男に生まれていれば……」
そしてシュウを取り巻く武闘派令嬢たちはといえば……勝って当然といった反応だった。
とはいえ、優勝候補として名前もよく挙がっていたぐらいだし、日頃からつるんでいればそうもなるって感じだろう。
かくいう俺も、奴のことはやっぱり注目しているからね。
とまあ、それはそれとして、ソイルのロックレインによって舞台に大量に積み上がった岩……これを片付けるため、再度エリナ先生が活躍するところを見ることができるのではないかと期待していた……
しかし! しかしながら今回は……エリナ先生の活躍を見ることができなかった!!
なぜなら……毎度おなじみの整備係がゾロゾロと出てきて、岩を次々とマジックバッグに収納していったんだよ……
まあ、セテルタの残したマジヤバの泥沼と違って単なる岩だからね、何かと使えるだろうってことになったんだろう……ついでにいうと、一つ一つがなかなかデカいし……
そう思っているうちに、ソイルが戻ってきた。
「いやぁ、負けてしまいました……そこでまずはアレスさん……心の準備はできています……」
なんていいながら、後ろを向くソイル。
そういえば俺、「イマイチな闘いぶりを見せるようだったら、あとでケツを蹴飛ばしてやるから楽しみにしているがいい」とかいったんだっけ……
「ソイルよ……今回の試合、残念ながら負けはしたが……決してイマイチな闘いぶりではなかった」
「……えっ?」
「だから、胸を張るがいい! お前はよく闘った!!」
「ああ、アレスのいうとおりだ」
「最後のロックレイン……あれは凄かったね! なかなかできるもんじゃないよ!!」
「ハン! 俺ですら1回戦突破ができなかったんだからな、そう甘くないってこった!!」
「ええ、それに相手はシュウさんだったのですからねぇ……それを思えば、よく闘いましたよ」
「……誰に見せても恥ずかしくない、見事な闘いぶりだった」
「この大舞台で堂々と全てを出し切った……以前のあなたからは考えられない大きな進歩だったのはないかしら?」
「うん! 今日は全然緊張してなかったもんね!!」
「ソイルさんの闘いぶりを見せてもらったことによって、次に試合を控えている僕はいつも以上に闘志を燃え上がらせることができています、ありがたい限りですよ」
「アレスさん、皆さん……うぅっ……」
ここにきて、涙をこぼし始めるソイル。
「……あいたッ!」
ケツを蹴飛ばすのはカンベンしてやったが……その代わり、デコピンをお見舞いしてやった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます