第640話 そんな方法を選択するとは……
『技巧を凝らした魔法の組み合わせをことごとく対処され、ソイル選手が最終手段に選んだ魔法はなんと! ロックレイン!!』
『またとんでもない魔法を選択したものですね……そもそもロックレインはモンスターの集落や大群などを一気に殲滅する目的で使われることの多い範囲攻撃魔法で、たった1人を相手に使うには威力の面だけではなく、効率の面からもやり過ぎといわざるを得ない魔法だというのに……とはいえ、それだけシュウさんが恐ろしい相手だということを示してもいるのでしょうね……』
ふと思ったけど、これを機に「やり過ぎのソイル」みたいな二つ名が付いたりして。
「ソイルって……ストーンバレットみたいなチマチマした攻撃魔法しか使わないのかと思ってた……」
「俺もだよ……あんな、ド派手な魔法を使う奴だったんだな……」
「そうはいっても、あれだけ大量にストーンバレットを撃ちまくってる時点で、じゅうぶん派手だと思うけどね……」
「しっかし、こうやって見てると……ソイルの野郎は予選でどんだけ抑えて闘ってたんだよって感じだな?」
「ああ、ストーンバレットと剣術しか使ってなかったもんな……」
「するってぇと俺たちは……ソイルの野郎にメチャクチャ舐められてたってことか……」
「というか……そこまで苦戦させることができなかったってことだから、僕たちの情けなさが際立ってしまうね……」
「クソッ……あったまくるぜ……」
「それにしても、シュウの野郎もどうなってんだよ……大量の岩が今にも降り注ごうとしてるっていうのに、微笑みを浮かべながら悠然としやがって……」
「最上級ポーションがあればなんとかなるのかもしれないけど……俺だったら、岩に押し潰されてペシャンコになる経験なんかしたくないぞ……」
「いや、それは誰でもそうだろ……」
「やっぱさ……アイツもどっかイカレてんじゃねぇの?」
まあ、男子たちの反応も当然って感じかな……
「キャー! ソイルきゅん、ロックレインなんてステキ過ぎぃぃぃぃ!!」
「これで勝利確実ねッ!!」
「今度こそ! あのメガネを粉々に粉砕よぉ!!」
「やっちゃえ! やっちゃぇっ!!」
「武の名門だかなんだか知らないけど、そんなもの構わずプチッと潰しちゃえ!!」
「ソイルく~ん! 行っけぇぇぇぇ!!」
ソイルのファンクラブ会員たちは、この試合ラストの大魔法ということもあってか、応援の熱が最高潮に達している。
「シュウ様なら! きっと大丈夫!!」
「フン! あの程度の軽石、シュウにとっては何ほどのこともないわ!!」
「そのとおり! 余裕余裕!!」
「地表まで、あともう少し……」
「さあ! 華麗に対処して見せてちょうだい!!」
「負けんじゃないわよッ! シュウ!!」
それに対し、シュウを取り巻く武闘派令嬢たちも負けじと応援に熱が入る。
『……ついに! ついにロックレインがシュウ選手の頭上に迫り来ましたッ!!』
『シュウさんはこれをどう攻略するのか、見ものですね……』
『……な、なんとシュウ選手! 岩一つ一つの隙間を縫って上に上にと次々に飛び移って行くゥゥゥゥ!?』
『まさか、そんな方法を選択するとは……』
シュウは簡単そうにこなしているが、降り注ぐ岩の数が多過ぎて飛び移る隙間とタイミングを見極めるなど至難の業であろう……というか、俺にはたぶん無理。
それに俺……この場面とはちょっと違うかもしれないけど、前世でアクションゲームをするとき、落ちる床系のギミックとか苦手で大嫌いだったし……
だから、俺がソイルのロックレインに対処するなら……おそらく魔力を込めまくってガッチガチに固めた防壁魔法を展開するって感じになるだろうと思う。
それか……蹂躙モードのミキオ君を空に向けて掲げるって感じかなぁ?
どちらにしろ、岩や砂粒によって埋まってしまいそうだね……
そんなことを頭の片隅で考えているあいだにもシュウは、次々と岩を飛び移って行く。
『そしてそして、シュウ選手! 最後の岩に飛び移り、見事ソイル選手のロックレインを攻略して見せました!!』
『あの数の岩を……身体能力はもちろん、それをやり切った集中力にも脱帽ですね』
そうだね……っていうか、あの数の岩……舞台の整備係泣かせだよなぁ……となると、またエリナ先生が片付けることになるのかな?
俺としては、エリナ先生のカッコいいところを見るのが楽しみではあるんだけどね……それはそれとして、ソイルのロックレインが攻略されてしまったか……
これは、さすがシュウとしかいいようがないかな……?
『ここでシュウ選手、岩の頂点から空中に足を踏み出し……やや呆然としているソイル選手の目の前に降り立ちました』
「さて……そろそろ決着と行きましょうか」
「……ッ!!」
『シュウ選手の言葉を受け、ハッとした様子で剣を構えるソイル選手! そして、剣と拳での語り合いへと移行!!』
『普通、剣のほうが有利なのですが……相手はシュウさんですからね……』
『その言葉どおりというべきか……シュウ選手が圧倒していきます!』
『やはり……とはいえ、ソイルさんは魔法だけでなく、剣術の腕も確かなものを持っているんですけどね……』
まあ、魔法を上手く使えないあいだとかは剣術を鍛えるしかなかったしな……そして剣術に重点を置いてるトーリグとかも仲間にいたから、それなりに上達も促されていたはず。
よって、その技量を上回るシュウを褒めるべきなのだろう。
そして攻防の末……
「……参りました、降参です」
ソイルが降参を宣言した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます