第639話 どこまで視えているんだ……
「僕の阻害魔法がここまで通用しないとは、まさか思ってもみませんでしたよ……さすがシュウさんです」
「いえいえ、なかなか効いていますよ? 例えるならそうですね……鍛錬用の重りを身に付けているときぐらいの感覚とでもいいましょうか……」
「鍛錬用の重り……ははっ、その程度ですか……なんだか悲しくなってきます……」
「一応いっておくと、ちょっとやそっとの重りではないんですけどね……おっと!?」
『ここまでストーンバレットを撃ち続けていたソイル選手、いきなりシュウ選手の足下からストーンランスを射出! だがシュウ選手、間一髪でこれを回避!!』
『ストーンランスを射出するタイミングは見事だったと思うんですけどね……それを躱すことができたシュウさんの回避能力の高さを褒めるべき場面だったと思います』
うん、その辺の奴なら今ので串刺しになって終わっていただろうと思う。
「うわぁ……いきなり地面からストーンランスが生えてくるとか……えげつない……」
「しかもあれ……大人の身長ぐらいの長さがあるぞ……」
「あれに串刺しにされたら、脳天まで貫かれちゃうのかなぁ……ひぇぇ……」
「今、自分がそうなったときの場面を想像しちゃったよ……それはとても、とても最悪な光景だった……」
「確かにそれは……シンプルにイヤだ……」
「あのソイルって奴も……顔に似合わず、なかなか恐ろしい奴だな?」
「ああ、見た感じおとなしそうに見えるのに……」
一般の観客たちから、悲鳴にも似たどよめきが聞こえてくる。
『ソイル選手のストーンランスですが、1度だけでは終わらず何度もシュウ選手を足下から襲います! それを巧みに躱すシュウ選手!! しかし、ソイル選手の攻撃は足元からだけではない! 四方八方からストーンバレットも高速で飛んできます!!』
「ふむ……これはなかなかですね」
「そんなこといって……余裕そうな顔をしてるじゃないですか……」
『シュウ選手! ストーンランスを回避しつつ、きっちりとストーンバレットにも対処して見せます!!』
『本来なら、ソイルさんの魔法運用能力に感心する場面だと思うのですが……ここまで一発の被弾もないシュウさんの技術力に驚かされるしかありませんね……』
だが、さすがのシュウもストーンバレットを一つ一つキャッチして握り潰すまでの余裕はなくなってきたようで、殴って破壊するようになってきた。
といったものの……変化としてはそれぐらいだ。
「あぁっ! 惜しいっ!!」
「ソイルきゅん! 頑張って!!」
「そのメガネを! 撃ち抜くのよぉ!!」
「やっちゃえ! やっちゃぇっ!!」
「シュウの標本を作って見せちゃってっ!!」
「ソイルく~ん!!」
そしてソイルのファンクラブ会員たちも、どんどん応援に熱が入っていく。
「大丈夫、視えてるわ!」
「そんなヒョロヒョロ弾、たいしたことないわよ~!」
「全然! 余裕余裕!!」
「ソイルごときにやられるシュウじゃないのよッ!!」
「シュウ! お遊びはもう、その辺でいいんじゃないのかしら!?」
「そうよ! 一発ガツンと入れてあげればいいの!!」
また、シュウを取り巻く武闘派令嬢たちも、ガンガン声援を強くしていく。
『……アッ! シュウ選手がストーンランスを回避し、その着地点に地割れが起こったッ!! これは大きい! シュウ選手、そのまま奈落の底に落とされてしまうのかッ!?』
「「「シュウッ!!」」」
ほう、ソイルめ……フットワーク軽くストーンランスを回避されるなら、その足場をなくしてやろうってわけか。
それに阻害魔法も未だ展開中のため、魔力で足場も作りづらいときたもんだ。
とはいえ、並のレベルならそれでジ・エンドとなるのだろうが……相手はシュウだ、必ず対処してくるはず。
さあ、ソイルよ……どうする?
『地面の割れ目に吸い込まれていったシュウ選手! しかし、必ず浮上してくると予期しているのか、ソイル選手は空中にストーンバレットを生成して待ち構えています! ……そしてやはりシュウ選手! 割れ目から飛び出して来たァ!! また、このタイミングを逃さずソイル選手! ストーンバレットの集中砲火だァァァ!!』
『……おやっ?』
『スタンさん、何か気付きましたか?』
『今、ピカッと光ったのに気付きませんでしたか?』
『いわれてみれば、確かに一瞬光った気がします……といっているうちにシュウ選手! ソイル選手の猛攻を潜り抜け、ようやく地上に生還です!!』
「……フゥ……今のは危なかったですね……もう少し反応が遅れていれば、胸のポーションを撃ち抜かれていたかもしれません」
「ハァ……この一発まで対処されてしまうのですか……シュウさん、いったいあなたはどこまで視えているんだ……」
どうやらソイルの奴、ストーンバレットに紛れてライトバレットを放っていたようだ。
もしかして、俺が前期の学期末試験で使っていたのを見て学んでいたのかな?
しかし、ソイルのライトバレットもまさに光速と呼ぶにふさわしい速さだったというのに……シュウの奴もよく対処できたもんだよ。
「……残念ながら、僕の技量ではこれ以上やってもシュウさんには通用しないようです……なので、セテルタさんと似た展開になってしまいますが……最後に僕の最高威力の魔法で勝負させてもらうとします」
「おやおや、それは興味深いですね」
そうして、ソイルの体から魔力が漲っていき……
「……それでは、行きます……ロックッ! レインッ!!」
それは以前、オークの集落をハチャメチャにした凶悪な魔法だった。
ただ、あのときは俺の余計な一言のせいで暴発させてしまったけどね……
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