第637話 全く影響がないように見えるのです……
「あのメチャクチャ頑丈そうなストーンウォールを粉々だと……?」
「なんちゅう破壊力だよ……まったく……」
「ていうか俺……シュウの一撃を喰らって、よく全身を粉砕されなかったもんだぜ……」
「確かに……」
「いやいや、さすがにシュウだって、人体にインパクトの瞬間は手加減をしてくれてたんじゃないか?」
「ま、まあ、そうだよな……? じゃないと、あんなに気持ちよく失神できなかったはずだし……」
「あの気持ちよさ、まさに至福だったからなぁ……それが一歩間違えれば、粉々……今思うと恐ろしいぜ……」
「正直、また経験したい気持ちよさだったんだが……あのストーンウォールを見てしまうと、ちょっとな……」
「しっかし、ソイルの野郎も……今の一撃で沈んでたほうが幸せだったんじゃないか?」
「うん、あのシュウ君の不敵な笑み……手加減をする必要がなさそうって考えているのかもね……」
「うわぁ、ソイルの奴……終わったな……」
「かわいそう……」
「ちょっと、男子たち! 私のソイルきゅんを甘く見ないで頂戴!!」
「そうよ! ソイルクンはとっても凄いんだから!! ちなみにアンタ! どさくさに紛れて『私の』っていうんじゃないわよ!!」
「がんばれぇ~! ソイルく~ん!!」
「シュウのインテリぶったメガネをかち割ってやるのよぉ!!」
「ソ、ソイルのファンクラブも……なかなか過激みたいだな……」
「ああ……キレさせるとおっかなそうだぜ……」
ソイルのファンクラブか……アイツも人気者になったもんだなぁ……
そんなファンたちの期待を裏切ることのないようにソイルよ……ダセェ試合をするんじゃないぞ!!
『さて、後方に大きく下がって距離を取ったソイル選手、続けてお得意のストーンバレットをお見舞いするようです!』
『今やストーンバレットは、ソイルさんの代名詞ともいえる魔法となっていますからね』
『……そこでなんと、シュウ選手! 飛来してくるストーンバレットを次々と素手でキャッチしていくッ!!』
『あの速さと数のストーンバレットを打ち払うでもなく、わざわざ素手でキャッチするとは……』
『手にある程度の数が溜まった辺りでストーンバレットを握り潰しているのか、シュウ選手の後方に砂粒がサラサラと舞い飛び、それが日光を反射してキラキラと輝いて見えます』
ふむ、ロマンチックな光景をあなたに……って感じかな?
「ソイルのストーンバレットをあんなにアッサリだと……信じらんねぇよ……」
「ああ、最初のうちはなんとか対処できても徐々に数に圧されていき、やがて被弾は免れないというのに……シュウにはそんな様子がない……」
「ていうか、シュウの野郎はまだまだ余裕みたいだな?」
「フン……シュウ様ならあの程度の魔法、どうってことないわ」
「ええ、シュウ君にとってはあんなもの、児戯にも等しいでしょうね」
「はぁ……私も男に生まれて、あの舞台でシュウと闘いたかった……」
「ワタクシも……」
シュウのファンクラブ……っていうより、武闘派令嬢たちは当然のこととして認識しているようだ。
そしてまあ、シュウがこういった大会に出場するのは珍しいことみたいだからね……華やかな舞台で闘ってみたいっていうのは理解できる気がする。
『それならとソイル選手! ストーンバレットの数を増やし、速度を上げていく!!』
『既に対処が追い付かなくなっていてもおかしくないんですけどね……まあ、シュウさんならではということなのでしょう……』
『それにしても、不思議に感じることとして……ソイル選手は阻害魔法の名手として学園内で知られているはずなのですが、シュウ選手には全く影響がないように見えるのです……この点について、スタンさんはどう思いますか?』
『まず、ソイルさんは間違いなく阻害魔法を展開しています。そこで、シュウさんの戦闘スタイルがもともと武術主体なこともあってか、魔力を体外に放出するタイプの魔法を使っていないのは理解できます。しかしながら、ソイルさんの阻害魔法は身体強化等の体内に作用する魔法にも影響を及ぼすはずなのです……その上でシュウさんがあれだけ動けているということは……おそらく魔力由来の動きではないということなのでしょう』
『えっ! 魔力由来の動きではない!?』
『はい、可能性としては2つ……その1つめとしては、単純に鍛錬によって身に付けた身体能力であること。2つめとしては、魔力とは似て非なる力を利用しているので、対象を魔力としている阻害魔法の影響を受けづらい。このどちらかではないかと思います』
『鍛錬によって身に付けた身体能力というのはまだしも……いや、それも驚愕に値することではあります。ですが、魔力とは似て非なる力……ですか? そんなものがあるとは……』
『ええ、例えば神力や法力など……世界中を探せばいろいろとありますよ……もっとも、その国や地域によって呼び方が違うだけで本質は同じとする考え方もありますし、それら全てを総称して魔力と呼ぶという考え方もあり、この王国内ではその考え方が優勢なので、あまり広く知られていないとしても不思議ではありません』
『なるほど……いわれてみれば、異国の方が使う魔法はお国柄などもあってか、少し違うなと思うこともありましたが……そういうことも関係していたのですね?』
『まあ、全てがそうだとはいえないと思いますが……このカイラスエント王国の魔法大系とは違う大系を持った国や地域は確実に存在しますね』
へぇ、似て非なる力……か。
まあ、前世でも本当に実在していたかどうかは知らんけど、「氣」とか「霊力」とかって、いろんな力があったみたいだから、そんな感じなのかもしれないね。
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