第614話 注目
「それじゃあ、お互い頑張りましょう」
「おうよ! じゃ、またな!!」
こうして朝練を終え、いったん自室に戻ってシャワーを浴びる。
そして朝食に向かう。
また、今日は誰からも誘われていないので、男子寮の食堂でおひとり様である。
まあ、武闘大会本戦ということで、女子たちも気を遣ってくれているのだろうと思う。
そんなことをチラリと思いつつ食堂に到着し、席に着く。
というわけで、いただきます!
「……ついに、この日がやってきたな?」
「自分が出るわけじゃないのに、なんだか緊張してきちゃったよ……」
「ハハッ、それは俺もだ」
「そこでお前ら……まあ、『誰が優勝するか?』って議論はここんとこずっとしてきて、やり尽くした感がある……そこで視点を変えて、『誰を注目、もしくは応援しているか?』って議題で語り合ってみようぜ!」
「ほう、いいだろう」
「それなら……まず、俺からいかせてもらうかな? やっぱりね、シュウが一番気になる存在だよ! なんてったってこの予選中、全て一瞬で終わらせてたからな、全然底が見えていない……どころか! その実力はほぼ謎のまま!! これが気になんないっていうのは、ウソだろ!!」
「早速シュウの名前が挙がったか……でもまあ、やっぱり謎の多い男だからな……」
「う~ん、どっちかっていうと……シュウ君と当たった人が、どこまで隠された実力を引きずり出せるかって感じになりそうだね?」
「そう考えると……魔力操作狂いとの対戦が一番注目度が高くなりそうだな? 奴なら絶対、実力の隅々まで出させようとするだろ」
「確かに! その2人の対戦は要チェックだな!!」
「ふむ……長期戦になることを期待するのだったら、ロイター殿との対戦も注目できるのでは?」
「ああ、ロイターの回復魔法は他の追随を許さない……確実に長引くだろうよ」
「そういえば、たまに『不死身のロイター』と陰で呼んでる奴がいるぐらいだもんな……」
ロイターの奴……なかなかイケてるあだ名を付けられてるみたいだな?
「とはいえ、ロイターさんがそこまで苦戦させられたことなんて、あんまりないけどな」
「ま、とりあえず今挙がった3人は、それぐらいでいいだろう……ほかはどうだ?」
「はいは~い! 俺が注目しているのは~ズバリ! セテルタ!! じゃあ、なんで注目しているのかというと~今回の武闘大会で、取り巻き全員が本選進出を逃した……その本選進出を阻んだ相手っていうのが~王女殿下の取り巻きたちだ! そこで王女殿下の取り巻きのうち5人が本戦に進んだってなると、セテルタと当たる可能性がじゅうぶんあるわけだ……この対戦、面白くなりそうだと思わん?」
「そういえば、セテルタの取り巻きのほとんど……もしかしたら全員か? とにかく、あいつらの全勝を崩したのが王女殿下の取り巻きたちだったもんな……」
「なるほど、部下たちに代わって雪辱を果たすというわけか……確かに、興味深い対戦となりそうだ」
「ただ、王女殿下の取り巻きたちも勢いがあるからなぁ……いくらセテルタさんといえど、楽には勝てないかもよ?」
「そう! だから面白くなるんだよ!!」
「あと、セテルタさんのことを『エトアラ先輩といい感じになって、気が抜けてる』ってウワサしてる奴もいたよな?」
「ああ、いたいた……『だから、取り巻きたちが本選進出を逃すことになった』って陰口を叩いていたっけ……」
「たぶんそいつらって、トキラミテ家とモッツケラス家の関係が良好になって欲しくない家の奴らだろうなぁ……」
「だろうね……ま、とりあえずセテルタは『エトアラ先輩のせいでダラけた』っていわれないよう、頑張んなきゃだな!」
ふむ、そういう難癖を付ける奴もいるのか……
「あとは、そうだな……トイがどこまでヘラヘラしてられるかってところかな?」
「ああ、あいつか……」
「奴こそ、この上なくダラけた野郎だからな……」
「マジであの舐め腐った態度、イラつくぜ……」
「でも、そんな彼に……残念ながら誰も勝てていないからね……」
「ああ! だからムカつくんだよ!!」
「ああいう奴は一度、魔力操作狂いと当たってズタボロにされちまえばいいんだ!」
「おいおい、予選で奴に負けたのが悔しいからって……それは言い過ぎだろ……」
「まあ、気持ちは分からんでもないけどな……」
「うむ……あんな片手間みたいな闘い方をされれば、誰でもな……」
「かといって、魔力操作狂いみたいにじっくりねっとり構えて相手されるのも、それはそれでイヤだけどな……」
「う、うん……あの人は中途半端を許してくれないからね……」
トイよ……お前、なかなか嫌われてんな……
とはいえ、ああいう天才肌っていうのは嫉妬を集めやすいんだろうなぁ……
そして、俺とロイターの決闘みたいな流れを、トイとの対戦で期待している奴もいるみたいだけど、きっとああはならないと思う。
そうなる前に、トイは降参するだろうからね。
加えて俺としても、義母上やリッド君たちが見ている前で、あんまりヤンチャするつもりもないし……
とかなんとかいいつつ、俺の心に変なエンジンがかかったらどうなるか分からんけどね……
とまあ、そんな感じで男子たちの「武闘大会、ここが注目!」って話を聞いていた。
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