第613話 機嫌がすこぶるいい

「アレス兄ちゃん! いっぱい応援してるからね!!」

「絶対優勝してくれよなっ!!」

「当然だ! アレスのアニキは最強なんだから!!」

「そうとも! アレスのあんちゃんは誰にも負けねぇ!!」

「アレスお兄様……ご武運を」


 こんなふうに、子供たちからたくさんの激励を受けた。


「みんな、ありがとう! おかげでたくさんパワーをもらえたし、これで明日は元気いっぱいで本戦の舞台に立つことができるよ!!」

「おぉっ!」

「スゲェ!!」

「よっしゃ! これで勝ったも同然!!」

「明日が楽しみだぁ!」


 そうして子供たちに見送られながら、宿屋をあとにした。

 今日の昼食から夕食まで、子供たちと楽しい時間を過ごすことができてよかった。

 そして話を聞いた感じ、みんな楽しんで魔力操作等に取り組んでいるようで、凄く嬉しい。

 それから、昼食後にみんなで魔力交流とかもしてみたんだ。

 これがまた素晴らしくてね、こっちが送った魔力が何倍も活きのいい魔力になって帰ってくるって感じで、子供たちのパワフルさを実感させられたよ。

 こうして子供たちとの触れ合いによって心身ともに充実させてもらい、学生寮の自室に戻った。


「ただいま、キズナ君! いやぁ、子供たちは本当に元気がよくってねぇ!!」


 なんて帰宅の挨拶をしつつ、キズナ君に先ほど子供たちと過ごした内容について語って聞かせた。

 ちなみにだけど、ソレバ村の子供たちだけでなく、ソリブク村の子供たちも来ていた。

 そこで、アレス付きの使用人たちが平静シリーズを届けてくるときに併せて報告してくれているので知らないわけではなかったが、ソリブク村の畑の状況もだいぶよくなっているようだ。

 まあ、原因となるマヌケ族も始末したし、あとはソリブク村のみんなの頑張り次第でどんどん上向いていくって感じだったからね。

 とはいえ、人によっては危機を脱した辺りで飽きがくる可能性もあるだろうところ、きちんと頑張りが継続できているのは凄いことだと思った。

 そんなこんなでキズナ君に話をして、いつでも寝れる準備をしておく。

 そのあとは、脳内模擬戦や精密魔力操作に取り組み……就寝時間がきたところでおやすみ。


……

…………

………………


『武闘大会か、そういえば私も出場してたなぁ……懐かしい』


 レミリネ師匠なら、余裕で優勝してたことだろう。


『アレス君の活躍しているところを見ることができないのは残念だけど……』


 俺も、レミリネ師匠に晴れの舞台をお見せできないのは切ない……


『でも、アレス君なら絶対大丈夫!』


 レミリネ師匠にそういってもらえたなら、自信満々だ!


『アレス、タタカイゴッコスルゾ!』


 そして、ゲンからタタカイゴッコのお誘い……よっしゃ、受けて立つ!


………………

…………

……


「……どうだ! ………………あ、あぁ……夢か……とりあえずおはよう、キズナ君」


 また、夢で逢えた……その喜びに、感謝。

 そして今日、ついに武闘大会本戦の日がきた!

 きっとレミリネ師匠たちは、この日に合わせて夢の中に応援に来てくれたのだろう……


「その気遣いに応えるためにも、俺は今日……優勝する!!」


 そう口に出して宣言した。


「フフッ……キズナ君が証人だね?」


 そう声をかけて、朝練に向かう準備をする。


「それじゃあ、朝練に行ってくるよ!」


 準備ができたので、いつものコースへ向かう。

 また、昨日は本戦直前ということで各自思い思いの方法で最後の調整をしようって話になり、夕食後の模擬戦はお休みだった。

 とはいえ、俺は行ってないから知らないけど、もしかしたら模擬戦をいつものようにやっていた奴もいたかもしれない。

 それはそれとして、朝練はいつもどおりにおこなう。

 まあ、朝日を浴びて体を目覚めさせるって意味もあるし、そういうリズムになってもいるからね。

 そんなことを思いつつ、いつものコースに到着。


「おはよう、ついに今日ね?」

「おう、そうだな!」


 こうしてファティマと挨拶を交わし、ランニングスタート。


「お前は昨日、夕食後の模擬戦に行ったのか?」

「いえ、行っていないわ」

「そうか」


 ふむ、ファティマも独自の過ごし方を選択したようだ。


「昨日、街中に出かけていたようね? そんな話をしている子たちがいたわ」

「ああ、俺の弟子たちが武闘大会の観戦のため学園都市に来たからな、会いに行ってたんだ」

「そう、それでいつもよりさらに機嫌がいいのね」

「ハハッ! たっぷり元気をもらったからな!!」

「あら、それはよかったわね」

「おうよ! それで、お前はどんな感じで過ごしてたんだ?」

「私も似たようなものね、父様たちが来てくれたので、一緒に過ごしていたわ」

「へぇ……ということは、長男辺りが領地で留守番って感じか?」

「そうよ……兄様ったら、ふふっ……」

「もしかして、『俺も行きたいッ!!』って駄々をこねてたとか?」

「ええ、そのとおりだったみたい……うふふ」


 ファティマの家族は物凄く仲がいいみたいだからなぁ……

 きっと長男は「行きたい! 行きたい!!」って、それはもう大騒ぎだったのだろう。

 このとき、なんとなく前世の家族のことを思い出した。

 前世の家族が同じような状況になったら……妹の晴れ舞台を見たいと兄は、きっと俺に役目を押し付けようとしてきたに違いない。

 そして俺は、弟に押し付けようとする……そうして兄弟ゲンカ勃発といったところだろうか……

 たぶん、ミーティアム家の中でもそういったことが起こったのだろうなぁ……


「ふふっ……」


 それにしても、ファティマさん……君も機嫌がすこぶるいいみたいだね?

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