第606話 そこまでいうなら
「それで、義母上や兄上たちの話が一つ目ってことになるんだよな? じゃあ、二つ目の話はなんだ?」
「はい、二つ目というのは、ソレバ村の方々が武闘大会の観戦をできるよう手配してあるので、アレス様は本戦の準備に集中していただいて結構ですよ、という話です」
「え? そうなの? じゃあ、宿屋の予約とかもバッチリ?」
「ええ、抜かりなく」
「マジかぁ……」
これからやんなきゃなって思ってたところ、既に完了してましたって話が飛んできたよ……
ギドめ、相変わらず俺の行動を先読みしてくれるね……まあ、楽でありがたいけど。
そして、宿屋の予約とかも取りづらいんじゃないかなぁ……とか思ってたけど、杞憂だったね。
もしかしたら、その辺は貴族……それも侯爵家パワーが発動したのかもしれない。
「ご安心ください、アレス様が考えておられるようなムチャなことはしておりません」
「おっ、そうか……」
まあ、ギドに限らず、アレス付きの使用人たちは平静シリーズを運ぶためちょくちょく学園都市に来ていたからね、そのついでに早期予約も済ませていたのかもしれない。
「そして現在、ノムルさんたちがソレバ村におります」
「ほう、学園都市へ移動するときの護衛を兼ねてって感じかな?」
「そう……なりますね」
あ、このちょっとした間で分かっちゃったぞ……早めに来て、ソレバ村の子供たちと遊んでるな?
特にノムルはリッド君のことを気に入っているようだったし!
うむうむ、リッド君もいい感じでお姉さん大好き民への道を歩んでいるようだね!!
「アレス様が目をかけていることもあってか、ノムルさんだけでなく、多くのアレス様付きの使用人たちがソレバ村の子たちをかわいがっているようです」
「ほう! ほうほうほう!!」
いいじゃない! それはとってもいい感じだよ!!
ただ、そのシーンをこの目で見ることができていないのが残念ではある。
お姉さんと少年がキャッキャウフフって仲良くしているシーン……最高だろうなぁ……
なるほどね……アレス付きの使用人たちは、俺に平静シリーズを届ける任務の行きと帰りにソレバ村に寄るのが定番となっているようだ。
「……うむ、実にいい……素晴らしい情報をありがとう……それで、ほかに何かあるか?」
「ほかにお知らせすべきこととしては、そうですね……」
ここでギドは、余計な言葉が周囲に漏れないよう魔法を展開した……マヌケ族関係の話でもしたいのかな?
「この武闘大会に魔族が直接手を出してくるのではないか……という心配は必要なさそうです」
「へぇ、そうなのか?」
前世で親しんできた物語の中でよく目にしたパターンとしては、トーナメント中に乱入者が現れてメチャクチャにされるみたいなことがあったけど……今回、そういうのはないと考えてよさそうって感じか。
「王国による警戒も厳しくなっている中、あえて目立つようなことはしたくないでしょうからね……ただ、情報収集のため観戦者の中に紛れ込んでいる可能性はあります」
「それはあるだろうなぁ……ま、そういう奴を探すのは王国の専門家に任せるとするかな……国王陛下がいらっしゃる会場なのだから、警備にも最高の人材がそろっているだろうし……というかギド、そこでお前の正体がバレるようなことのないようにな?」
「それはもちろん、心得ておりますとも」
たぶん、今のギドは魔族の中でも上位層に食い込めるレベルになってきてるだろうから、おそらく大丈夫だとは思う。
「……くれぐれも気を付けるんだぞ?」
「御意」
ま、バレて何か問題が起こったとしたら……使用者として俺が責任を取るしかないだろうなぁ……
もしかしたら、これが俺の追放フラグだったりして?
といいつつ、ギドが正体を見破られるなんてヘマをするとは思わないけどね。
「さて、私のことはそれぐらいとして……アレス様、武闘大会での活躍を楽しみにしております」
「おう、任せとけ!」
「また、今回はウークーレン家のご子息も参加されると耳にしております……彼自身の詳細な情報は少ないながらも、その実力はウークーレン家の中でも随一とのこと、油断なさいませんように」
「そうだな……それにしても、やはりウークーレン家という武名は魔族の中にも轟いているのか?」
「しょせん人間族と侮る者もおりますが……魔法に特化している者の多い魔族にとって、彼らの武技は脅威だと認識している者もおります」
「なるほど、さすが武の名門といわれているだけはあるな……」
「そして、かの家に潜入を試みた同族が次々に行方不明となってしまっているらしく……今では潜入工作を控えることになっているようです」
「マジかよ……ウークーレン家、なかなかヤベェとこだな……」
「はい、それだけ隙のない家といえるでしょうね……ゆえに、ウークーレン家のご子息と対戦する場合は、より一層の気合を入れて臨まれることをお勧め致します」
「ああ、もともとそのつもりだったが、ギドがそこまでいうなら、さらに気合を入れていくとしよう!」
シュウという武術オタクのメガネ……俺も只者ではないと思っていたが、ギドですら甘く見るなと忠告してくるぐらいの男ってわけだ。
これは、燃えてくるね!!
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