第605話 ご覧になります
「ただいま、キズナ君! いうまでもないことかもしれないけど、本選進出が確定したよ!!」
本選進出者の掲示を確認し終えて、自室に戻ってきた。
そして昼食を共にした女子は、これから本戦に向けて魔纏の練習に取り組むとのこと。
というのも、この予選のあいだにかなり手の内をさらしてしまったらしいので、新しく魔纏という手札を加えることができれば……と考えたそうだ。
そうはいっても、魔纏を常時展開するのは慣れるまでが大変だし、戦闘に耐えうる強度を維持するのも一苦労ではある。
その困難さに負けず、ぜひとも頑張ってもらいたいところだね。
そしてもちろん、練習していて上手くいかないところなどがあれば、いつでも相談に乗るつもりだ。
とまあ、そんな感じで掲示についてのアレコレをキズナ君に語って聞かせた。
「というわけで、本戦までの準備期間も思いっきり鍛錬を積むぞってわけなんだ、キズナ君も応援しててね!」
フッ、キズナ君に応援してもらえれば、百人……いや千人、万人力だ!
なぜなら、キズナ君はエリナ先生のところからお迎えした子だからね! 普通の木とは違うのさ!!
ついでにいうと……エルフからも聖樹判定をもらったわけだし。
そんなことを考えているうちに一つ思い出した……武闘大会の観戦にソレバ村のリッド君たちを招待するため、観戦チケットや宿屋など諸々の手配をそろそろしておいたほうがいいんじゃないかってことだ。
ちなみに、最近輸送の依頼で引っ張りだこ状態のゼス、その護衛として一緒に回っているグベルとエメちゃんも武闘大会の日は休みを取って観戦に来るそうだ……そういって手紙を送ってきたからね。
また、ゼスたちに限らず、この街の知り合いたちも多くは観戦に来るようだ。
ま、俺のカッコイイところをみんなに見せてやらんとならんね!
それで観戦チケットに関しては、この街に住んでるみんなは比較的簡単に手に入ったみたいだ。
加えて、先ほど学園の購買でチラッと見た感じまだまだたくさん売ってたから、ソレバ村のみんなのぶんを入手すること自体は問題ないだろう。
しかしながら、宿屋はどうだろうなって感じ。
一応、武闘大会みたいなイベント期間中は学園都市の周囲にキャンプ場を設けることになっているらしいから、宿屋の予約を取り損ねた場合、そこに泊ってもらうことになるかもしれない。
まあ、その場合は俺が魔法で堅牢な建物を建設するとしよう。
とかなんとか考えていると……部屋をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼するよ」
それは男子寮の管理人さんだった。
用件を聞いてみると、ソエラルタウトの実家から使者の方がお見えですよって話だった。
というわけで、外来用談話室に行ってみる。
たぶんだけど、定期的に平静シリーズを届けに来てもらっている関係上、アレス付きの使用人たちかなって思う。
ただ、武闘大会もあることだし、違う用件で誰かが来てるかもしれないね。
そんなことを頭の片隅で考えつつ外来用談話室に入ると、そこにはギドがいた。
やはり、平静シリーズの定期便だったか。
「おう、そこまでじゃないけど、久しぶりだな」
「はい、お久しぶりにございます」
「それで、平静シリーズを持って来たのか?」
「ええ、確かにそれもお持ち致しておりますが、それだけではありません」
「ほう?」
とりあえず平静シリーズの受け取りを済ませてから、ほかの要件とやら聞くことにした。
「平静シリーズを持って来てくれたことついてはご苦労だったな……それで、ほかの要件とはなんだ?」
「はい、まず一つ目として、今回の武闘大会の観戦にリューネ様が来られます」
「そうか! 義母上がご覧になるのであれば、なおさら頑張らんとな!!」
よっしゃ! 義母上にイイトコ見せたる!!
「また、国王陛下や多くのご当主様方と同じように、ソレス様もご覧になります」
「あっそ」
そして俺の反応が分かり切っているのだろうギドは、苦笑いを軽く浮かべながら話を続ける。
「それから、ご当主様夫妻が学園都市にいるあいだソエラルタウト領の運営はセス様とマイネ様が担われますので、残念ながらお2人は来られません」
「そっかぁ……親父殿はいらんから、兄上夫妻が来てくれたらよかったのに……」
「そうおっしゃられるだろうとは思いましたが……これもお役目上のことですからね……」
確かに、国王陛下も観戦に来ている大きなイベントに特別な事情もなく顔を出さない貴族家当主とか……「何か含むところでもあるのか?」って感じになっちゃうもんね……
というか、他家の足を引っ張りたい系の貴族がここぞとばかりに騒ぎ出すだろうし……
ま、考えようによっては、本戦で好成績を収めて親父殿の苦虫を噛み潰したような顔を見るのも一興といったところかな?
「そこで、セス様とマイネ様からアレス様へ激励の言葉を承っております」
「おぉっ! それはありがたい!!」
こうして、兄上夫妻の激励の言葉をもらい、俺はさらにヤル気が出たのだった。
ちなみに、この話の流れからも分かるとおり、俺が本選進出を果たすことは当然のこととして実家のみんなは動いていたようだ。
その信頼感に嬉しさが込み上げてくるね。
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