第604話 君も本選進出を決めたようだね?

「……あっ!」

「え? あ……」


 掲示板の前でワイワイしていた生徒たちが、俺の姿を見てそそくさと掲示板の前を空けるのだった。

 別に「どけどけぇ! アレス様のお出ましだぁ!」って感じの雰囲気は出してないつもりだったんだけどね……

 それはともかくとして、せっかくなので掲示板を確認する。

 まあ、彼らの会話でだいたいのことは把握してるんだけどさ。

 そんなこんなで見てみた感じ、1年男子は夕食後の模擬戦メンバーからはロイター、セテルタ、サンズ、ヴィーン、ソイル、トーリグ、ハソッドに俺を加えた8人が本戦に出場。

 そして、王女殿下の取り巻きからは主人公君とティオグ……それから、あんまり話したことがなくて軽く会釈をする程度の関係だけど、ホウフウって奴とカイリーって奴の合わせて4人だね。

 あとは、さっき聞こえていたように、シュウ、テクンド、トイの3人が本選進出って感じだ。

 そんでテクンドって男子だけど、マヌケ族に一時期操られて俺に敵意を向けてきていたよね……

 あれ以来……いや、あのときですらそんなに接点がなかったけど、とにかくあの敵意君が本選進出ってわけだ。

 まあ、保有魔力量的に最低でも伯爵家以上はあったと思うから、そこまで不思議じゃない。

 それに、マヌケ族はそういう素質のありそうな奴を積極的に狙ってたっぽいから、なおさらって感じかな。

 とりあえず、敵意君についてはそれでいいとして……あの、「めんどくさ~い」が口癖のトイという、ある種の天才もやはり残ったかって印象だ。

 たぶん、本当は参加希望も出したくなかったのだろうが、あの仲間たちに強制的に出させられたんだろうなぁって気がする。

 そしてそして! 参加希望に関していうと、この本選進出者に名を連ねているところを見るに、シュウという名の武術オタクのメガネも今回の武闘大会に参加するつもりのようだ。

 奴のこれまでのスタンスからすると、ちょっと意外って感じがしてしまうね。

 ま、会話する機会があったら、その辺の心境の変化について聞いてみてもいいかもしれない。

 また、本戦のどのタイミングで対戦することになるかは分からないけど、おそらく優勝するためには奴に勝つ必要があるだろう。

 それに何より、奴には現時点の俺が見せてやれるだけのレミリネ師匠の姿を見せてやらねばならん!

 初めてその話を聞いたときは、奴の眼にはまだうっすらとしか観えなかったらしいが……今はそのときよりハッキリと観えるようになっているはずだからな!!

 シュウよ! レミリネ師匠の姿を観ること、楽しみにしててくれよな!!

 ……いや、違うか……俺自身が、シュウに「観える」っていってもらいたいのだろうな……


「こ、この魔力圧……なんて強さなんだ……」

「……ゴクリ」

「それだけ、本戦に燃えてるってことなのかな……?」

「……とはいえ、本選進出者のほとんどは仲間内なのにか?」

「それでも、武闘大会本戦ともなればやっぱり、普段の友達関係とかは関係なくなるんじゃない?」

「まあ、訓練でやる模擬戦なんかとは当然、無意識的にもその本気度合いは変わってくるだろうな」

「なるほど、それもそうか……」


 ……なんて、周囲がガヤガヤしているが、とにかくこの15人が本戦進出確定というわけだね。

 そして、ラスト1人だが……予選通過決定戦に名を連ねているのがほとんど王女殿下の取り巻きたちって状態だった。

 なんていうか、これこそ仲間内の勝負って感じがしちゃうね。

 ま、とりあえず、王女殿下の取り巻きがあと1人上がってくるって感じかな?


「……アレス様、本戦進出決定おめでとうございます」

「ありがとう、そして……おぉ! 君も本選進出を決めたようだね? おめでとう!!」

「ありがとうございます……ギリギリでしたが、なんとか残ることができました」


 1年男子にばかり注目していたが、女子のほうもチラッと見てみれば、今回昼食をご一緒した女子も本戦に残ったようだ。

 そしてもちろん、ファティマとパルフェナも本戦進出確定。

 あと、原作ゲームのヒロイン勢としては、エルフのノアキア、ドワーフのドーズ、獣人族のゼネットナット、幼馴染のニアが本戦進出を決めている。

 そのヒロイン勢でただ1人、魔族のゾフィネは残っていない……まあ、実力を隠したのだろうね。

 ああ、ヒロインとはいっても、王女殿下は武闘大会に出場しない……予選の模擬戦にも参加していないし。

 やっぱり、大会とはいえ王族に剣を向けるのは心理的抵抗が強過ぎるだろうからね……

 それに、実際に王女殿下が参加したとしても、おそらく俺のとき以上に対戦相手の棄権ばっかりになって、不戦勝祭りになっていただろう。

 それから……大事なことなので改めていっておくが、原作ゲームにおいてエリナ先生はヒロインではない! 絶対にな!!

 まあ、そもそもエリナ先生は教師として運営する側なので、学園主催の武闘大会に参加するわけもなく、ここでは関係ないんだけどね……でも、一応念のため。

 ちなみに、ゾフィネの代わりといってはなんだが、魔族のズミカ……どっちかっていうと魔族っていうより、昆虫食ガールとしての印象のほうが強いが、とにかくあの子も本戦に残っている。

 あとは、王女殿下の取り巻き女子がほとんどって感じだね。

 そして、食事を共にした子も何人かいるのが、俺としては嬉しいところだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る