第603話 本戦進出者の掲示

「そこッ! クッ……ダメか!!」


 イメージのレミリネ師匠に隙を見付けて攻撃を放ったつもりが、それは単なるフェイントでカウンターを仕掛けられてしまう。


「……まだまだァ!」


 そして、そのまま猛攻を受けジリジリと後退させられてしまうが、どうにか反撃の糸口を探そうと防御を固めながらレミリネ師匠の動きをしっかりと観察する。

 こうしてお昼までのあいだ、レミリネ師匠による剣術稽古という濃密な時間を過ごすのだった。


「……ハァ……フゥ……今日も、ありがとうございます!」


 そうイメージのレミリネ師匠に感謝の言葉を述べ、今日の稽古を終わる。

 そしてシャワーで汗をキレイサッパリしたところで、昼食のお時間です。


「それじゃあ、キズナ君! お昼を食べくるよ!!」


 なんて挨拶を一つして、部屋を出る。

 ちなみに今日は闇の日、さらにいえば本戦進出者が発表される日でもある。

 まあ、俺は予選で全勝をキープできたから、問題なく本戦進出を果たしているはず。

 ただ、夕食後の模擬戦メンバー以外にどんな奴が本戦進出を決めたかとか気になるところもあるので、お昼を食べ終わったら掲示板を見に行ってみようとは思っている。

 それにたぶんだけど、これから昼食をご一緒することになる女子に見に行こうと誘われる気もするし。

 そう、今日はお誘いを受けているのさ!

 フフッ……今日もしっかり魔力操作について語ってやるとしようじゃないか!

 それに、予選全勝者の言葉ともなると、説得力も増すだろうからね!!

 なんて思いつつ、中央棟の食堂へ向かって歩いているわけだが……やはり、本戦進出者発表が気になるのか、ソワソワとした様子の生徒があちらこちらにいる。

 おそらく、今日明日ぐらいはその話題で持ち切りだろうなぁって感じがする。

 昨日は、生徒各自が勝ち越しできたかどうかって話でいっぱいだったんだけどね。

 いやぁ、なんとかギリギリで勝ち越しを決めることができた奴とか、すんごい大騒ぎだったからなぁ……

 特に女子の目がないと思ってか、大浴場ではハメを外しまくりだったし……

 それで調子に乗り過ぎだったこともあって、ついには先輩たちに「うるせぇぞ!」ってキレられるっていうね……

 ま、昨日に関しては騒ぐ機会を彼らに譲り、俺たちはクールに風呂につかるだけだったので、先輩たちにキレられることもなかったってわけだね。

 そんなことを考えているうちに、待ち合わせ場所に到着。

 そして、既にお相手の女子も来ていたようだ。


「待たせたな」

「いえ、私も今来たところです」

「そうか、それならよかった……それじゃあ、食堂に行こうか」

「はい」


 というわけで、すぐそこにある食堂に入る。

 そんで食べたい料理を集めて席に着いたら、早速いただきます!

 そうして序盤はいつものように、お相手に話の主導権を譲り、どちらかというと食事に向ける意識のほうが強め。

 あとは食事が一段落ついたところぐらいから、徐々に話題の中心を魔力操作に移していくって感じだ。

 さあ、振り落とされずについてきてくれよな!


「……なるほど、だからあんなにも冷静に相手の攻撃を受け続けることができたのですね?」

「ああ、たとえ剣で受け損ねてしまったとしても魔纏で防御できるという安心感は、やはり大きいといえるだろう」

「魔纏……私も扱えるように、これから練習していきたいと思います」

「うむ、それがいい! そうして常に魔纏を展開するようにしていれば、ふいに奇襲を受けたりなんかしても防げるからな!!」

「はい、頑張ります」

「魔纏に限らず聞きたいことがあったら、またいつでも相談に来るといい」

「ありがとうございます、そのときはよろしくお願いします」

「うむ」


 この子は俺の話の中で特に魔纏に興味を持ったようだ。

 もしかしたら将来、魔纏の名手になっているかもしれないね。

 そして俺が勝手に名付けた魔纏であるが、こうやって使う人が増えていってくれたら、そのうち一般化するかもしれない……そうなってくれたら嬉しいもんだね。

 こうして、昼食の時間が終わりを迎えつつある。


「アレス様、もしよろしければ本戦進出者の掲示を一緒に見に行きませんか?」

「ああ、いいとも」


 そして中央棟の食堂から最寄りの掲示板へ移動。

 また、既に本戦進出者が掲示されていたようで、掲示板の前で生徒たちがアレコレ話している。


「うん、まあ……そうだろうなって感じの結果だよな……」

「やっぱ、こうやって見ると……魔力操作狂いの派閥はメチャクチャ強ぇよなぁ……」

「まあ、厳密にいうとセテルタさんやヴィーンさんは、それぞれを長とした別の派閥になるらしいけどな?」

「そんなもん、あんだけ普段からつるんでるんだから、もう同じ派閥みたいなもんだろ」

「確かになぁ……それで派閥としては、王女殿下の取り巻きたちが次に多いって感じか……」

「とはいえ、王女殿下の取り巻きたちも魔力操作狂いの影響を受けまくってるからなぁ……そう考えると、今回の武闘大会1年男子は魔力操作狂いの仲間内の大会って感じがしてくるな……」

「とりあえず、本戦進出が確定している15人のうち、明確に別派閥だっていえるのはシュウとテクンド、それからトイってぐらいか?」

「だね……ただ、シュウ君も地味にあの人と仲がいいみたいだけどさ……」

「まあ、アイツらは修行大好き人間同士、惹かれ合う何かがあるのかもしれないな?」

「……いえてる」

「そんでラスト1人は、地の日に予選通過決定戦ってわけか……」

「たぶんその最後の1人も、王女殿下の取り巻きたちの誰かが取るんだろうなぁ……」

「……違いない」


 ふむふむ、そんな感じか……

 掲示板を直接見る前に、だいたいのことが分かってしまった。

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