第600話 偉そうにしてた割には

「ビムの奴……完全に一皮むけたみたいだな……」

「ああ、あの一撃一撃それぞれが会心の一撃といって過言ではない威力を秘めていただろうからな……まったく、恐ろしいものだよ」

「もしだけど……これから模擬戦期間が始まってたとしたら、ビム君も全勝してたかもね?」

「そうだな、あり得ない話ではないだろうが……彼の場合、初日のあの方との対戦と、それからの1週間に渡る苦労あってこその今といえるわけだからな……」

「そんでビムに限らず、そういう過程を経て実力を伸ばしている奴がまあまあいるわけだもんな……俺も魔力操作狂いと一戦交えることができてたらよかったかな?」

「……頼めばあの方は相手をしてくれるんじゃないか?」

「だね、快く相手してくれそうな気がするよ?」

「えっ!! ま、まあ、それは機会を見て、かなぁ……あはは……」

「……意気地のない奴め」

「ホントそうだよね~」

「そ、そんなこというんだったら! お前らは挑戦できるのか!?」

「今の私では全く相手にもならんだろうからな……そのときに向けて訓練中だ」

「僕も、一応魔力操作の練習時間を増やしているところさ」

「なんだよそりゃ! 結局お前らも挑戦しないんじゃないかよォ!!」

「いや、準備中だ」

「同じく」

「じ、じゃあ、俺だってそんな感じだァ!!」


 ……別に、準備どうこう気にせず挑戦してきてくれていいんだけどね?

 ま、自分の練習に納得ができたら、いつでも来るといいよ!


「ここのところ連勝を重ねてきたし……やっぱりビムは将来性アリと見てよさそうね?」

「それに、そこそこ謙虚さも持ち合わせているみたいだから、調子に乗らなくていいかも?」

「まあ、そこんところは結婚してみないと分かんないけどね~あとから調子乗るタイプかもしれないし?」

「ふふふ、アンタたちがそうやってノンビリ吟味しているあいだに、アタシなんかビム君とご飯を一緒しちゃったもんねぇ!」

「あ、抜け駆けズルい!」

「いやいや、ご飯ぐらいだったら、既に何人もご一緒してるでしょ? そんなんで威張られても……」

「まあ、私は別にそんな焦ってないし?」

「何よぉ~もっと、こう、悔しがりなさいよぉ~」


 ビムのように、この模擬戦期間中に注目を集めるようになってきた男子もいる。

 だが、その逆に……


「はぁ……あの男、偉そうにしてた割には弱かったわね……」

「そうそう、超ダッサァって感じ」

「家柄的に伯爵家だからアリかな~って思ってたけど、あれじゃあナシよね?」

「まあ、同じ伯爵家の中にも、もっと性格のよさそうな人がフリーでいるわけだし……我慢してまであの男に嫁ごうとする理由はないでしょうね」

「うんうん、ショボいクセに家の中で偉そうにされたら、たまんないもん!」


 ふむ……貶しリーダーが発していた魔力の感じ的に伯爵家ぐらいはありそうだと思っていたが、やはりそうだったか。

 まあ、リーダー格となるためには、それぐらいの家格が必要ということでもあるのだろうな。

 しかし、女子たちもなかなか辛辣だね……

 とはいえ、貴族社会で生きるには結婚相手選びこそが一番の重要事といえるかもしれないからね、シビアにならざるを得ないのも頷けるところだ。


「……あら、弱いなら弱いで、別にいいんじゃない?」

「え、なんで?」

「だって……イラっとするたび、こっちが力でねじ伏せてあげればいいだけのことでしょ? あの偉そうな顔でピーピー泣きだすところを想像したら……ふふっ……」

「アンタなら、マジでやりそうだからコワいわ……」

「かわいそう……」

「でも、そうね……あの男がどうとかって話とは関係なく、自分自身が強くなってしまえば……見える世界が変わりそうだわ」

「でしょう? 別に私たちだって、男たちに比べて保有魔力量が特別劣っているわけでもないんだし……その気になりさえすれば、割と簡単にやれちゃうと思うわよ? というか、そもそも女性であるはずのエリナ先生が普通にこの王国の誰よりも強いわけだし」


 そうそう! エリナ先生が王国最強だからね! 君、よく分かっているじゃないか!!


「た、確かに……なんとなく戦い関係は男性のものってイメージだったけど……意外と強者として名前が挙がるのは女性だったりするものね……」

「そういえば、うちのおじい様は『最近の若い奴はどいつもこいつも文系化しおって……』と嘆いていたわねぇ……」

「とはいえ、ふがいない男なんかと連れ添ったら、なんかあったとき自分が出なきゃいけなくなるでしょ? そんなの面倒よ……私は優雅にお茶でもして暮らしていたいわ」

「まあ、そういう意見も当然あるわよね……だから、これはあくまでも私の意見ってだけよ」

「はぁ……さすが予選突破を決めている女のいうことは違うわね……」

「うんうん、自信が違うもんね!」

「でも、結婚相手選びに人生を全賭けしないっていうスタンスは一理あると思ったわ……」

「それはそれで大変そうだけどねぇ……」


 まあ、侯爵家以上に自分の力で成り上がるのは無理っぽいけど、伯爵家ぐらいなら割と可能みたいだからね。

 そう考えると、わざわざ面倒そうな相手と結婚する必要なんかないんじゃないかなって思うよ。

 もちろん、自力で成り上がるのはそれなりに苦労もあるだろうけどね……


「……次! アレス・ソエラルタウト!! それから……」


 おっと、ここで俺の出番がきましたか……

 フフッ……レミリネ流の素晴らしさ、みんなに届けて進ぜよう。

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