第596話 模擬戦最終日ということでもある

「おはよう! キズナ君!!」


 今日もスッキリとした目覚めに心が躍る。

 そんな爽やかな気分でキズナ君と朝の挨拶を交わす。

 また、今日は光の日……それはつまり、武闘大会の予選を兼ねた模擬戦最終日ということでもある。


「フフッ、キズナ君……俺は今日も勝利を決めて、全勝で決勝に駒を進めて見せるからね! 期待しててよ!!」


 といいつつ、ロイターとかも今日まで全勝をキープしているし、おそらく今日も勝つだろう。

 そのため、俺1人だけが全勝って感じにはならない。

 そして、今年の1年男子に関しては2週目終了時点で全勝者もかなり多く、とってもじゃないが上位16人にまでに絞り切れない状態だった。

 俺自身はその人数をきちんと数えていなかったけど、周囲の男子たちが話しているのを聞いた限りでは、40人以上いたっぽい。

 いや、話をしているグループごとに挙げる人数にまあまあバラツキがあって、50人以上いるとか抜かしてた奴もいたぐらいなんだ。

 とまあ、正確な人数はともかくとして、とりあえずそこまで頑張った生徒各位には敬意を表すべきところだろう。

 それはそれとして、このままではさすがにマズいってことで先生たちも組み合わせを考えたのだろう、今週は全勝者同士で当たることも結構あった。

 何を隠そう俺だって、そんな全勝をキープしてた奴と何度か当たったぐらいだし。

 それと、幸いというべきか先生方の配慮なのか、パーティーを組んでいる仲間同士とかで対戦することは基本的になかった。

 そのため、俺たちも普段つるんでいる夕食後の模擬戦メンバー同士て当たることがなくて助かったって感じだ。

 とはいえ、ファティマが「その心配なら、ほぼないと思っていい」っていってたから、そこまで心配はしていなかったけどね。

 そんなことを考えつつ、朝練の準備完了。


「それじゃあキズナ君! 朝練に行ってくるよ!!」


 そして、お決まりのランニングコースへ向かう。


「おはよう、今日もいい天気ね」

「おう! まさにランニングにうってつけの朝って感じだな!!」

「ふふっ、そうね」

「そんじゃ、今日も行くとするか!」

「ええ」


 ファティマと朝の挨拶を交わしつつ、今日もランニング開始。

 そして話題はやはり、武闘大会の予選について。


「今日で予選が終わりだな?」

「そうね」

「とりあえず女子は、1年のお前とパルフェナ、2年のエトアラ嬢が確定で……あとはエトアラ嬢の取り巻きたちも大丈夫そうだけど、何人かがギリギリって感じなんだよな?」

「ええ、そんな感じね」


 なんとなく俺が持っているイメージどおりというべきか、もともと女子は戦闘に重きを置いていない子が多い。

 そのため、決勝進出のハードルが男子ほど高くない傾向にあるといえるだろう。

 そういうわけもあって、女子は全学年とも今年の1年男子のように上位陣が全勝者でごっちゃりしていることもなく、何敗かしていても16位以内に収まることはできそうって感じだ。

 まあ、そんな中で当然のごとくファティマとパルフェナは全勝だし、それはエトアラ嬢も同じ。

 また、エトアラ嬢の取り巻きたちの中にも全勝者はいるけど、何人かは多少取りこぼしがあったみたい。

 とはいえ、男子ほど競争が激しくないため、おそらくエトアラ嬢の取り巻きたちもみんな本選に進めるのではないだろうかと思う。


「そして男子は……残念ながらセテルタの取り巻きたちは、ちょっと厳しいといわざるを得ないだろうなぁ……」

「そうねぇ、先週の時点で何人か負けていたけれど……今週に入ってみんな全勝が崩されてしまったものね……」


 まあ、セテルタと仲良くなったのも、つい最近だもんなぁ……

 そして、その取り巻きたちが俺たちと一緒に模擬戦をするようになって、まだ日も浅いからねぇ……

 それはそれとして、ここは相手を褒めるべきところだろうね。


「さすが王女殿下の取り巻き……といったところかな?」

「そうね……ただ、彼らはあなたの影響を少なからず受けているから、多少マシな部分もあるけれど……本当に関係のない、トイとかいう人に負けさせられたのは少々面白くないわ」

「ああ、そういえばアイツにも負けたんだっけか……」


 なんか、ファティマの中で王女殿下の取り巻きたちは、準仲間扱いになってるっぽい。

 でも、そうか……トイはダメかぁ……

 まあ、俺もアイツとは直接話したことがないし……だから当然、魔力操作を勧めてもいないもんなぁ……

 あの賑やかな4人組、なんとなく見てると面白いんだけどね……

 ちなみに、トイ以外の3人は全勝ってわけでもなく、それぞれ何敗かしているみたい。

 それでも、3人ともある程度早い段階で勝ち越しは決めていたので、それなりに頑張っているとはいえるだろう。


「あとはトーリグとハソッドか……昨日はギリギリの闘いでヒヤリとさせられたからなぁ……今日も王女殿下の取り巻きが相手だったら、また苦戦するだろうなぁ……」

「まあ、実力的にはほぼ互角だったものね……でも、あの2人のソイルへのライバル心を甘く見てはいけないわ」

「……ほほう」

「だからあの2人……相手があなたレベルでもなければ、意地でも勝利をもぎ取ってくるわ」

「いうねぇ」


 まあ、既にソイルと和解は完了しているから、負のライバル心ってわけではない。

 だから、その正のライバル心でもってこれからも高め合ってもらえたらいいなって思う。

 ……ついでに、俺もそのライバルに加わりたいところだ。

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