第593話 それも結局、あの人絡みでしょ?
「そんじゃあ、また運動場でな!」
「ええ、運動場で」
そんなわけで、約1時間のランニングを終えてそれぞれ自室に戻ることに。
ちなみに、久しぶりに今日は女子から食事のお誘いがないので、男子寮の食堂でおひとり様ライフを満喫することになりそうだ。
まあ、最近は俺も慣れてきたのか、女子たちに魔力操作を勧める食事時間にも楽しみを見出しつつあるんだけどね。
なんというか、こちらが熱心に魔力操作について語り、相手の子の「やってみよう!」っていう表情の変化を見ると達成感も湧くし、勧めてよかったって嬉しくもなるんだ。
そしてなんと、2回目の俺との食事を希望する子もチラホラと現れ始めている。
それはつまり、「魔力操作を頑張り始めたんですけど、この点についてアドバイスをいただければ……」みたいな話を持って来る子がいるということだ……実に素晴らしい。
といいつつ、その中には魔力操作がメインの話題とならない、メノ・ルクストリーツという新作のクッキーの試食をお願いしてくる腹内アレス君お気に入りの子もいるけどね!
そしてもちろん、メノと食事をするときは腹内アレス君に表に出てもらっている……「よっ! ニクイよ、この色男!!」って感じだね。
『……』
そしてそして、こういうメノが絡んだ話題のときはダンマリを決め込むっていうのが腹内アレス君のパターンってワケ。
フフッ、なかなか初々しいじゃな~い?
『……うるさい! 俺は腹が減っているんだ! くだらんことをガタガタ抜かしてないで、さっさと朝食にしろ!!』
はいはい、分かりましたよ~
まったく、照れちゃってまぁ~
というわけで、シャワーを浴び終えたのだった。
「それじゃあ、キズナ君! 行ってくるよ!!」
そう挨拶を一つして、部屋を出る。
さて、今日の男子寮の食堂では、どんな話題が飛び交っているかな~?
そんなことを思いつつ、食堂に到着。
そして、ビュッフェスタイルのメニューを気の向くままに取り、あとは適当に空いている席を見つけ着席。
それじゃあ、今日も美味しくいただきます!
「はぁ……この模擬戦期間も、今週で終わりかぁ……」
「なんか、長いような短いようなって感じだったねぇ……」
「それについてだけど……今のところ勝ち越せてる奴はいいよ! 俺なんか、負け越してるんだぜぇ!?」
「いやいや、俺も今のところ勝ち越せてるとはいっても一つだけだからなぁ……今週の内容次第では悲惨なことにもなりかねないから、気が気じゃないんだ……」
「あ~あ、俺たちレベルじゃ悲しいけど、勝ち越せるかどうかって話にしかなんないもんなぁ……」
「だなぁ……16位圏内なんて、夢のまた夢ってもんよ」
まあ、一敗した時点で即終了って勢いだもんね……
「つーか、それも今年の1年は異常としかいえねからなぁ……」
「そうそう、全勝野郎がズラリと勢ぞろいなんだもんなぁ! やんなっちゃうぜ!!」
「アイツら、オカシイよ……」
「まあ、ある意味、魔力操作狂いたちが全勝なのは理解できるよ? いや、何人か『コイツが、なんで?』って思いたくなる奴もいないわけじゃないけど、基本的には上位貴族の子女の集まりなんだから、そこまでおかしくはない……」
「そうだなぁ、トーリグとかハソッドみたいな奴が若干のイレギュラーってぐらいか……」
「魔力操作狂いとかは無理にしても、アイツらぐらいならなんとかなるかなって思ったんだけどなぁ……実際に対戦したら、負けちまって悔しいのなんのって……」
いやいや、アイツらもソイルに刺激を受けて、メッチャ頑張ってるんだよ?
なんて思っていたら……
「とはいっても、あの2人だって、この夏休み中に猛特訓を積んだって話だぜ?」
「ああ、『ソイルに置いてかれたくない!』って気持ちがメチャクチャ強かったらしいな」
「そうそう、そんで実家には挨拶だけしに帰って、あとはヴィーンさんの屋敷でソイルも含めた4人でほとんど訓練漬けの夏休みだったって話だ……それを聞いて、正直俺には無理だって思っちまったよ……」
「いや、この中でそれをやれちゃう奴って、ぶっちゃけいないんじゃね?」
「どうせ、あの人ナイズされた訓練でしょ……うん、僕は遠慮したい……」
「ああ、ソイルが魔力操作狂いにみっちり仕込まれてたはずだからな……おそらくそのやり方だろうよ……」
「うわぁ……ムリっス」
うん、とりあえずソイルには、その時点で考えられるだけの訓練を施したつもりだからね!
「まあまあ、とりあえず彼らが強いのは当然として、問題は王女殿下の取り巻きたちだよ……彼らの多くは下位貴族だろう? それも最下位の士爵家が一番多いんじゃないか? よくもまあ、そんな乏しい才能であそこまで力を付けたもんだよ……」
「まあ、いうてもトーリグやハソッドは男爵家だからなぁ……士爵家の連中よりは才能があったってもんだろうし……」
おやおや、まだ才能イコール家格としか考えていない奴がいるのか……
「だが……彼らは彼らで、日々の意気込みが違うだろう?」
「そうだな……アイツら、恥ずかしげもなく『将来は王女殿下の近衛になる!』って息巻いてるぐらいだもんなぁ……」
「最初は『なんて無謀なことを……』って思ってたけど……この調子で行けば、案外なれちまうかもな?」
「確かに……」
「でも……それも結局、あの人絡みでしょ?」
「ああ、アイツらを焚きつけたのもやっぱり……魔力操作狂いだな」
「はぁ……学園って、もっとお気楽ライフを送れる場所じゃなかったのか?」
「ああ、俺も入学する前は……成人を迎えるまで、のんびり過ごす場所だって聞いてたぜ?」
「まあな、『結婚相手が見つかれば』というただし書きこそ付くが……そのあとは遊んで暮らせるって話だったはずだ……」
「どうしてこうなった……」
「いや、それは何度もいうように、アイツが……」
どうやら彼らの認識だと、この学園をハードモードにしたのは俺ということになっているようだ……うん、ごめんね?
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