第592話 最終週の始まり
「おはよう、キズナ君! 今日もいい朝だね!!」
爽やかな目覚めに、気分よくキズナ君に朝の挨拶をする。
そして今日は地の日、別な言い方をすると、予選を兼ねた模擬戦の最終週の始まりの日ということもできる。
まあ、今のところ全勝なので、このまま最後まで負けなしでいきたいところだ。
ちなみに、うちのパーティーメンバーやヴィーンたちも全勝をキープしている。
また、セテルタも今のところ負けなしできているのだが、その取り巻きの中に取りこぼしている奴がいるのが残念なところだ。
とはいえ、勝利を逃した奴の相手っていうのが王女殿下の取り巻きだったからね……まあまあ仕方ない部分もあるといえそうだ。
というのが、普段そこまで頻繁につるんでいるわけじゃないから細かい生活スタイルとかは知らないけど、彼ら王女殿下の取り巻きたちも主人公君と揉めたあの日から、魔力操作に一生懸命取り組んできたみたいだからね、やり込んだ期間の差っていうのは大きいのだろう。
やはり魔力操作、日々の成長度合いはほとんど実感できないぐらい微々たるものでしかないけど、それにめげずに努力を積み重ねるとデッカイお返しをくれるってことなんだろうね。
まあ、こんな言い方をすると、セテルタの取り巻きたちは努力していないように聞こえてしまうかもしれないけど、決してそういうわけではない。
ただ、そうはいっても魔力操作に打ち込んだ時間や熱意に差はあったと思う。
それにセテルタも、あんまり取り巻きたちにうるさくいってなかったみたいだからね、どうしても個人の意思に委ねられてしまう部分があったといわざるを得ない、これはその差というわけだね。
そんなことを思いつつ着替えを済ませた。
「それじゃあ、キズナ君! 朝練に行ってくるよ!!」
そう一声かけて、いつものランニングコースへ向かう。
そして、そこにはもちろん、お馴染みのきゅるんとした少女、ファティマがいらっしゃる。
「おはよう、今日もいい天気ね?」
「おう、絶好の朝練日和だな!」
「ふふっ、そうね」
「それじゃ早速、行くか!」
「ええ」
というわけで、今日も元気にランニング。
「それで、この模擬戦期間も今週で終わりだな?」
「そうね、今日からの1週間、全員取りこぼしなしでいきたいところだわ」
「そうだなぁ……でも、今のところ俺たち模擬戦メンバー同士で当たることってなかったけど、もし当たったらそういうわけにはいかないだろ?」
「その心配なら、ほぼないと思っていいと思うわ」
「え?」
「基本的にAクラス……あとはそうね、Bクラスもかしら、この上位クラスの生徒同士で当たることのないように組まれているもの」
「あ、やっぱり……そうかなぁって、うすうすとは感じていたけど……」
「もちろん、C以下のクラスにも実力を持った人はいるでしょうけれど、だいたいはクラス替え等でBクラスまでに収まっているはず……その生徒同士で潰し合うようなことにならないように配慮されているわ」
「まあ、例えば俺とロイターで潰し合ったりしたら、順位にメチャクチャ影響出るだろうしな……」
「ええ、特に今年の1年生……それも男子には全勝者が多いもの、たった1つの敗北で一気に16位圏内から弾き出されてもおかしくないわ」
「うぅむ、当事者の自分がいうのもなんだけど、熾烈だなぁ……」
「その状況を作った原因のほとんどは、あなたなのだけれどね?」
「えぇ……」
「誰彼構わず魔力操作を勧めて回っているのはあなたなのだから……それなりに自覚はあるでしょう?」
「うっ……」
「まあ、全体の底上げができているのだから、私はいいと思うけれどね?」
「お、おう……」
ちなみに、食堂で聞こえてくる話とかを聞いた感じ、2年とか3年には全勝者ってそんなにいないらしい。
まあ、当然のことながら豪火先輩は、その数少ない全勝者の1人なんだけどね!
さすが豪火先輩だよ!!
「……そんで結局のところ、Bクラスに入っていないトーリグとハソッド……それから、セテルタの取り巻きがきちんと勝ちを拾えるかが勝負って感じになりそうだなぁ……」
「ええ、そうね」
「かといって、俺たちも気を気を抜くわけにはいかないけどな!」
「ふふっ……よく知らないみんなからは模擬戦で遊んでいると思われているのにね?」
「まあ、それは仕方ないというしかないなぁ……そりゃシュウみたいに一瞬で勝負を決めるのも、やろうと思えばできなくはないと思うけど……俺としては一つ一つの模擬戦から学びを得たいって気持ちのほうが強いし……」
それが舐めプだと思われても、甘んじて受け入れるしかなかろうって感じ。
それに攻撃の手はそれなりに緩めているものの、魔力をギュンギュンに詰め込んだ魔纏で防御を固めているので、万に一つも負けるような闘い方はしていないつもりだし……
「……この1週間で、また新たな技術を教えてもらえるといいわね?」
「ああ、それを期待したいところだ!」
そんなことを話しながら、ファティマとランニングを続けている。
「毎度のことながらあの2人……なんて速さなんだよ……」
「しかも、例の装備をしてだというのに……まったく、信じられないわ……」
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