第580話 運動場に集え!
「そんじゃあ! また明日な!!」
「もしかしたら今晩、僕は夢の中でもアレスさんと模擬戦をしているかもしれませんねぇ……」
「……うん、僕もね……前期の一時期、毎日のようにアレスさんが夢に出てきたんだ……」
「………………私も、夢の中で『もっと気持ちを言葉にしろ』と叱責されたことがあったな」
「そうだね、僕もこの前の秋季交流夜会……あの晩に見た夢にアレスが出てきたよ」
セテルタの言葉に続き、その取り巻きたちも頷いているじゃないか……
「お前たちだけじゃないから安心しろ……私も頻繁に夢でアレスと模擬戦をしている」
「まあ、アレスさんの印象はどうしたって強いですからね、当然といえば当然かもしれません……かくいう僕もそうですから」
へぇ……みんな、そんな感じだったとは知らなかったな……
それにしても夢か……俺も今晩、レミリネ師匠やゲンたちに逢えるだろうか……?
……おっと、感傷に浸るのはみんなと別れて部屋に戻ってからにしよう。
というわけで、ちょっとしたボケをかましてやろう。
「……ほう? お前ら、そんなに夢で俺に逢いたいのか? 仕方ないなぁ、今晩はお前たちの夢に出張してやるとしよう……特別だぞ?」
「えぇ……マジかよ……」
「ま、まあ、僕の場合、今晩については覚悟していましたからねぇ……」
「あの日々が再び……」
「………………ノーコメントで」
「う~ん……でもまあ、面白そうじゃない? なんだったら今晩、夢で集まってみよっか!?」
「セ、セテルタ様!?」
セテルタの思わぬ発言に、取り巻きたちが驚愕している。
「おい、セテルタ……それは本気でいっているのか?」
「夢で集まるって……そんなこと、本当に可能でしょうか?」
まあ、確かに無理っぽい気はしちゃうよね……
でも、企画としては面白い。
「ハッハッハッ! セテルタは面白いことを考えるじゃないか!! 今晩やってみようぜ!!」
「俺……この人たちのノリに、ときどきついていけないときがある……」
「それは僕もですねぇ……」
「ノリ重視のアレスさんがセテルタさんと一緒になることで、さらにパワーアップした気がする……」
「……これがシナジーというものか」
「セテルタ様……」
……そんな感じで、苦笑いを浮かべる者が多数。
「ハァ……まあいい、しょせん夢の中でのことだ……で? 夢の中で運動場にでも行けばいいか?」
「なんだかんだいって、ロイター様も乗っかっちゃうんですよね……」
「よっし! それじゃあ今晩もまた、みんなで模擬戦しちゃおう!! ……上手くいくかなぁ? 楽しみだね!!」
「フッ、ここでもイメージ力が大事になるってことだ……お前たち、寝る前も魔力操作……しかも精密バージョンにしっかり取り組んどけよ! 成功率が上がるだろうからな!!」
……なんだか、話しているうちにイケる気がしてきたぞ?
これはもしかすると……もしかするんじゃないか!?
「しゃあねぇ……ワケ分かんねぇ遊びだけど、付き合うとするか……」
「まあ、寝る前の魔力操作はアレスさんに熱弁されて以来、毎日やるようにしていますからねぇ……」
「僕も、魔力操作は欠かせないからね……」
「……賑やかな夢になりそうだ」
「さて、そろそろ本当に部屋に戻るとするか」
「そうですね、別れ際に思わぬ展開になってしまいましたが……」
「うん! それじゃあみんな、またあとでね!!」
「……我々も、失礼します」
「よし、お前たち! 合言葉は『運動場に集え!』だ、そう念じて眠れッ!!」
こうして、みんなで「運動場に集え!」と一声そろえてから、各自部屋に戻るのだった。
「ただいま、キズナ君! いやぁ、面白い企画を考えてね! 今日はまだまだ終われないみたいだよ!!」
そして、部屋に戻ってキズナ君に挨拶をしつつ、夢の中で集合しようぜって企画を立てた話をした。
「どう? 面白そうでしょ!? あ、キズナ君も一緒に行く? 夢の中でなら、キズナ君も動けたりなんかしちゃうんじゃない!?」
……なんて語りながら、精密魔力操作をしっかりとこなす。
フフッ……俺のワクワク感に影響を受けているのか、魔力も今日は特に元気がいいみたいだ。
「……よし……それじゃあ、そろそろ寝るとするか……おやすみ、キズナ君!! ……運動場に集え……運動場に集え……運動場に……集え…………運動場に………………運動……」
そう唱えながら、意識はまどろみの……中へ……
……
…………
………………
『……らぁッ!!』
『……せるかァ!!』
………………
…………
……
「……ッ!? ……あれ、なんだろう……なんとなく夢の中で暴れていた……ような? 何気に寝汗も結構かいてたみたいだし……う、う~ん……あ、とりあえずおはよう、キズナ君!!」
キズナ君に挨拶をして、再び昨日見た夢に思いを巡らせてみる……
「……あ! そういえば、昨日みんなで集まろうぜって話をしてたんだった!!」
うぅむ……誰かいたような気もするが……はて……
夢の内容を思い出そうとしながら、寝汗をかいた肌をシャワーでサッパリさせる。
「……うん、やっぱ誰かと暴れてたってぐらいしか思い出せんね! ま、あとでロイターたちはどうだったか結果を聞いてみよっと! それじゃあキズナ君、朝練に行ってくるよ!!」
そうして、今日も元気に朝練に向かうのだった。
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