第579話 会わせてやるよ
「それじゃあ、お疲れ様」
「みんな! また明日も頑張ろうねっ!!」
「さて、ここからは乙女たちのリラックスタイムといったところかしら……では、セテ君、また明日ね?」
「皆様、失礼致します」
模擬戦の反省会が終わり、女子チームが挨拶の言葉とともに女湯へ向かった。
「……よし、我々も男湯へ向かうとするか」
というロイターの号令の下、俺たち男子チームも男湯へ向かった。
そして、あれこれワイワイしながら湯船へ入る。
「……ふぅ~っ、やっぱこの一瞬はたまんねぇな!」
「まったくですねぇ……模擬戦による心身の疲れが癒されていくようです……ふぅ……」
「うん、今日のハソッドは特に頑張ったもんね?」
「……いい粘りだった」
「いえいえ~むしろ、時間いっぱいまで粘ることしかできませんでしたよぉ」
「いや、さっきも話したことだが、その粘りこそが大事だと思う……結局、最後まで立ってた奴が勝者なんだからな!」
「最後まで立ってた奴……そうですねぇ……」
先ほどの俺とハソッドの対戦は、結果としては時間切れによる引き分けだった。
まあ、剣術主体で日中の模擬戦のように、受けを重視しているからっていうのもあるだろうね。
とはいえ、夕食後のほうは完全に受けに徹するというよりは、ある程度攻撃も仕掛けている。
そこで、その日に学んだ技なんかを自分なりに再現して試してみたりもしている……だいたい練度が低くて防がれているけどね……
でもまあ、そうやっていろいろ試す場でもあるわけだから、それでいいのだ。
「それにしても……アレスは魔法だけじゃなくて、剣術の上達具合も凄いよね? 剣術を本格的に始めたのも、つい最近なんでしょ?」
「ああ、前期の中頃ぐらいに、ロイターとサンズに頼んで模擬戦を始めてからって感じだな」
「そんなに昔でもないのに、懐かしく感じてしまうな……」
「そうですね……あの頃のアレスさんと比べると、本当に別人のような技量だと思いますよ」
「フッ……俺は日々レミリネ師匠に稽古をつけてもらっているからな!!」
「……なあ、そのレミリネ師匠っていうのも、今はアレスさんのイメージトレーニングでしかないんだろ?」
なんて、トーリグが質問をしてきた。
「うん? まあ、脳内だったり、イメージのレミリネ師匠相手に模擬戦をしているわけだから、それがイメージトレーニングだといわれたら、そうかもしれんな……だが、たとえイメージだけだとしてもレミリネ師匠は偉大だからな、剣を受けたとき実際に重みも感じるぐらいなんだぞ?」
「重みって……マジかよ……」
「これがほかの人だったら、冗談がキツイとしか思わないんですけどねぇ……」
「うん、アレスさんなら、あり得るって気がしてくるよ……」
「……確かに」
「う~ん、アレスがそこまで慕うレミリネ師匠……やっぱり、僕も会ってみたかったなぁ!」
「そうだな、いつか会わせてやるよ……俺が真にレミリネ流を極めたとき……そのとき俺が振るう剣の中でな!!」
それに以前、シュウという武術オタクのメガネも、俺の剣にレミリネ師匠が視えるっていってくれていたからな!
俺は、あの言葉を信じるのみだ!
そして、そのシュウとも約束したからな……もっと修行を積んで、もっとレミリネ師匠をハッキリ視えるようするって……待っててくれよな!!
「……アレス、最近お前が剣術主体で戦闘を組み立てているのは、武闘大会でレミリネ流を広めるためか?」
「今のところ不戦勝が多いですけど、基本的にアレスさんの対戦は注目されていますからね……また、本戦になれば大勢の観衆が集まりますので、そのとき剣術主体で良い結果を残せば、レミリネ流の認知度も自然と高まるでしょうし……」
「なるほど、それがアレスの狙いってわけだね?」
「それが狙いっていえるほど俺はまだレミリネ流を極めていないが……少しでもレミリネ師匠の素晴らしさをみんなに知ってもらいたいって気持ちはあるね」
「レミリネ流か……まあ、なんだかんだいって、俺たちもアレスさんと模擬戦を重ねているうちに、自然と学んでる部分もあるだろうな」
「それはあるかもしれませんねぇ……まだなんとなくでしかありませんが、とっさのときに、それまでの自分とは違う動きが選択肢として浮かんでくることがありますし……」
「あ、それ分かる! 僕も『ここで、こんな動きアリかも!』って思うときがあるからね!!」
「……あるな」
「……もちろん、私やサンズもお前からレミリネ流を学ばせてもらっているぞ?」
へぇ……ソイルは比較的早く俺たちと模擬戦をしていたから、そうかもなって納得する部分もあるけど、ヴィーンたちもだったとはなぁ。
でも、そうか……そう考えると「いつか」ではなく、既にみんなレミリネ師匠に会えているってことかもしれないな……
「そうですね……それにレミリネ流の動きを知ることで、より王国式の動きが明確になったところもありますし」
なるほど、動きの比較をできるってことだね。
そして確かに俺も、ロイターたちと模擬戦をしたり、実家で兄上たちに王国式を教えてもらったことで、レミリネ流をさらに磨けた部分もあると思う。
「……ふぅん、そっかぁ……僕ももっと早くアレスたちと仲良くなっていれば、もっとたくさん学べることがあったんだろうなぁ……」
「フッ、まだまだこれからじゃないか! セテルタも一緒に学んで行こうぜ!!」
「うん、そうだね! というわけで、これからもよろしく!!」
「おう! こちらこそだ!!」
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