第575話 今日一番の話題としては

 本日の模擬戦、その全てが終わり、自室に戻ってきた。


「ただいま、キズナ君! 今日はね、対戦相手に棄権されずに済んだんだよ! いやぁ、よかったよかった!!」


 キズナ君に挨拶をしてから、シャワーを浴びる。

 まあ、そこまで汗はかいていないんだけどさ、でもほとんど習慣になっちゃてるからねぇ。

 そしてシャワーを浴び終えれば、今日の模擬戦について、その続きをキズナ君に語っちゃう!

 そこで、やっぱり自分の対戦についてをメインに語るけど……ビムの初勝利に会場が沸いたって話も外せないよね!

 また、後期が始まってから食事を共にした女子たちの様子についても語る。

 まあね、自分が魔力操作を熱心に勧めているだけあって、その相手がどんな結果を得ているのかっていうのは、当然気になることだよね!!

 それで結果としては……今のところまずまずといったところだ。

 というのも、魔力操作に熱心に取り組み始めたからといって、スグ効果を発揮して向かうところ敵なし連戦連勝ヤッホーってことになるわけじゃないからね……

 地道な努力を積み重ねて……ときには全然成果がないのではという不安に苛まれつつも、ひたすらに続ける……そしてある日ふと「壁を一つ越えたか?」って実感するんだ……魔力操作とはそういうもの。

 だからこそ、嫌になって途中で諦める者が続出するっていわれている……

 そういうものだから、俺が魔力操作を勧めた女子全員が全勝ってことにはなっていない。

 それにやはりというべきか、生まれ持った保有魔力量っていう確かな差もあるからね……上位貴族の令嬢が相手だと、惜しくも負けてしまうってことが多いんだ……加えて、上位貴族であればあるほど、魔力操作の練習を親や家庭教師に強制的にやらされていた率も高かっただろうし……

 とはいえ、やはり努力の跡は分かるものである……少なくとも俺は感じ取っている……初めて会話したときより魔力の滑らかさとかが違うからね。

 だから、そのまま頑張ってもらいたいところだ。

 まあ、そんなわけで、負けて気落ちしてそうな子なんかには模擬戦が終わったあと、ねぎらいの言葉をかけるようにしている。

 反対に勝って浮かれ過ぎてる子には、褒めつつたしなめたりすることもあるね。

 ああ、それから、俺が魔力操作を勧めた中には文系貴族の令嬢もいて、戦闘方面に重きを置いていないって子もいるね。

 そういう子は、魔力操作を美容とか健康方面に役立てることを考えているようだ。

 だから、模擬戦に負けても特に落ち込むことはないって感じ……といいつつ、文系貴族の令嬢でも中には意外な才能を発揮する子もいて、勝利を収めたりもしている。

 ……とまあ、そんな感じで、俺が魔力操作を勧めた女子たちの本日の戦績についてなんかもキズナ君に語った。


「……おっと、もうこんな時間か……キズナ君と話していると、あっという間に時間が経っちゃうね!」


 そして、腹内アレス君からも夕食の要求がくる。


「はいはい、分かってますよぉ~というわけでキズナ君、食堂に行ってくるよ! またあとでね!!」


 キズナ君に挨拶をして部屋を出る。

 そこで向かうは、男子寮の食堂!

 ま、いつもどおりの流れだね!

 そうして食堂に着き、テーブルに料理を並べれば……いただきます!


「いやぁ~今日一番の話題としては、やっぱビムの初勝利だよな!?」

「確かになぁ……正直、このまま全敗もあり得るんじゃないかと思ってた」

「そうそう! 俺もそんな気がしてた!!」

「実際、彼と当たったらラッキー扱いだったもんね?」

「……」


 おやおや、ここでもビムの話題か?


「だが……それもオシマイって可能性が出てきたな?」

「だなぁ……先週中に当たった奴は、まさしくラッキーだった」

「とはいえ、今日の勝利はまぐれって判断してる人もいることだし……明日が注目だね?」

「さぁ~て、明日はどうなるかな!?」

「……」


 たぶん、明日もこうやってビムの話題で盛り上がるんだろうなぁ。

 それにしても、あのグループ……1人無口な奴がいるけど……ヴィーンに憧れてる系かな?


「……おい、お前さっきから黙ってるけど、どうしたんだ? 具合でも悪いのか?」

「ポーション持ってるか!? ないなら、分けてやるぞ!?」

「う~ん……見た感じ、顔色は悪くないみたいだけど……?」

「なんか困ってることでもあるんだったら……遠慮せずいえよ?」


 ……ふむ、どうやらヴィーンのマネをしていたわけではないようだ。


「あ、いや、別に……ただ、ビムの試合……僕はあんまり真剣に見てなくってさ……だから、おとなしくしてたっていうか……」

「ふぅん? そうなのか?」

「じゃあ……何を見てたんだ?」

「気になる! 気になる!!」

「……あ、分かっちゃった! 気になる女の子を見てたんでしょ!?」

「ギクッ!!」

「おいおい……自分で『ギクッ!!』とかいっちゃうかね……」

「分かりやすい奴……」

「それで!? 誰!?」

「えぇと……あのとき同時に試合をしてた女の子っていうと、確か……えっ! まさか……?」

「ちょっ! まッ……!!」

「おい、誰なんだよ? もったいぶることないだろ?」

「誰だっけ……俺は覚えてないなぁ……」

「早く! 早く!!」

「もしかしてだけど……魔族のズミカちゃん……だったりする?」

「……ッ!!」


 あ、図星っぽい……

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