第561話 支持する声

「それじゃあ、またあとで」

「おう!」


 朝練を終えて、ファティマと挨拶を交わす。

 そして、自室に戻ってシャワーを浴びる。


「……フゥ……サッパリした」


 また、今日の朝食は女子からお誘いを受けているため、中央棟へ向かう。

 それでさっきファティマと話してて思い出したけど、俺って秋季交流夜会でエトアラ嬢にキレ散らかした感じになっていたから、それを見たほかの女子たちが俺を恐れるようになってもおかしくない気がするのだが……

 その後、極端にお誘いが減るってこともないんだよな……

 男子たちなんか、いまだに俺を見てヒソヒソしてるっていうのに……やっぱり、女子たちのほうが心が強いのかもしれんね……

 なんて思いつつ、待ち合わせ場所に到着。


「おはようございます、アレス様!」

「ああ、おはよう」

「今日は、アレス様と朝食をご一緒できて嬉しく思います!」

「そうか、ありがとう……まあ、立ち話もなんだから、食堂へ行こう」


 挨拶もそこそこに、食堂へ向かう。

 だって、腹内アレス君が急かすものだからさ……

 それから、今日の子はあんまり震えた感じじゃない……ということはつまり、俺に恐怖感がないっぽい。

 それはそれとして、早速朝食をいただく。


「今日から予選が始まりますね!」

「ああ、そうだな」

「私、全力でアレス様のことを応援します! まあ、私の応援なんかなくても、アレス様なら本戦進出は当然として、優勝だってできちゃうと思ってますけど!!」

「ありがとう、その期待に応えたいと思う」


 今まで食事を共にした中にも、たまにこういう感じの子がいたけど、なるほど……改めて、ファティマがいってた俺を支持する声というのが理解できた気がする。

 まあ、こんな感じで、どちらかというと食べることに意識を向ける割合が高い前半は、相手の女子にトークの主導権を譲る。

 そして、ある程度満腹感を得たところで……魔力操作について語ろう!


「それで……だ」

「はい! お待ちしておりました!! 魔力操作についてですね!?」

「お、おう……」

「私、アレス様のお話をより理解できるようにと、自主的に練習してまいりました! とはいえ、真面目に練習に取り組むようになったのは少し前からなので、まだまだ習熟度としては低いですけど!!」

「ふむ……」


 確かに、この子から感じられる魔力の雰囲気的に、ビギナー感はある。

 だが、それでも努力している者であるという感じもしっかり伝わってきている。


「素晴らしい……君はこれからどんどん伸びていくだろう」

「本当ですか!? アレス様に認めていただけるなんて……私、夢のようです!!」

「いやいや、認めるだなんて……そんな大層なことじゃないさ」


 うん、マジで……

 ただ、こういう子には、これから迷いなく魔力操作を続けていけるよう俺も協力したいと思う!

 というわけで、俺が今まで学んできた魔力操作について、時間の許す限り熱心に語った。


「なるほどです! 凄いです! 私、もっともっと頑張りたいです!!」

「ああ、君ならもっともっと高みを目指せるだろう……そして、俺もまだまだ修行中の身で、魔力操作の全てを理解しているわけではないが、何か相談したいことがあったらいつでもいってくれ、分かる限り応えたいと思う」

「はい! ありがとうございます!!」


 うんうん、とっても素晴らしいお嬢さんだね。

 そんな感じで、いい気分のまま朝食を終える。

 これからも、できればこんな感じの意欲溢れるお嬢さんと食事を共にしたいものだ。

 そんなことを思いつつ、引き続き魔力操作について語り合いながら運動場へ移動した。

 そして運動場に到着したところで、それぞれのクラスの集合場所に別れた。


「ふむ、お前がそんな顔をしているということは……今日の朝食の相手は悪くなかったようだな?」

「そうですね、とっても充実した顔をしていらっしゃる」

「へぇ? どんな子だったの?」


 ロイターとサンズ、そしてセテルタが話しかけてきた。


「おう、まだ始めたばかりといっていたが、魔力操作を熱心に練習している子でな! それはもう、これからに期待できそうだった!!」

「ほう、お前にそこまでいわせるとは……なかなか有望そうだ」

「その方……早ければ来期にでもAクラスに上がって来そうな気がしますね」

「フフッ、さすがアレス……次々と優秀な人材を発掘していくね!」

「まあ、俺はいつでもどこでも『魔力操作を頑張れ』としかいっていないからな……あとは、その言葉に応えるかどうかは各自の判断……」


 なんて話しているうちに、先生たちが現れた。


「これから武闘大会の予選を兼ねた模擬戦をおこなう! 名前を呼ばれたら、速やかに指示された場所に来るように!!」


 声のデカい男性教師が、運動場にそろった全体に向かって号令をかけた。

 こうして、本格的に武闘大会が始まるといった感じである。

 さて、予選ではどんな相手と対戦できるかな……

 とはいえ、いつもやってる夕食後の模擬戦メンバーより実力者というのはなかなかいないだろうけどね……

 でもまあ、現時点での実力としてはイマイチだったとしても、キラリと光る何かを持った者がいる可能性だってある……そういうのに期待するのもアリだよね!

 なんて思いつつ、さて、名前を呼ばれるのを待つとしますかね……

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