第558話 締め切りは今日までだぞ?
「……クッ……まだまだッ!」
イメージのレミリネ師匠の剣をひたすら捌き続ける。
いや、捌くとはいっても、その全てを完璧にとはいえず、いくらか被弾もしている。
ただ、その中で致命的なダメージを受けそうなものだけは、なんとか回避しているといった感じである。
……とはいえ、その見分けも簡単ではなく、多少被弾しても軽微なダメージで済むかと思った一撃が、間近に迫った瞬間にどうやらそんな軽いものじゃなさそうだと気付いて、障壁魔法を重ね掛けするなどして慌てて対処するってことが何度もあった。
レミリネ師匠は、そういったフェイントの技術も超一流だからね……しかも、この時点でまだまだ手加減アリなので、本気には程遠い。
……とまあ、そんな感じでイメージのレミリネ師匠との模擬戦を、午前中から昼食タイムを除いてずっと続けている。
そうして昼と同じように夕方の時間がやってきたところで、腹内アレス君から食事要求が飛んでくる。
正直、もうそんな時間か……って感じ。
いやぁ……時間っていうのはあっという間に過ぎちゃうね……
それもイメージとはいえ、レミリネ師匠との模擬戦であれば、なおさらだよ……
そんなこんなで、今日の稽古を終了する。
「……レミリネ師匠……今日もありがとうございます!」
そうして、イメージのレミリネ師匠に挨拶をする。
そしてなんというか、このイメージのレミリネ師匠だけど……おそらく魔力操作の練習の一環としてイメージ力も鍛えられているおかげか、前世の俺では信じられないほど、存在感を持ってイメージできている。
だから、レミリネ師匠の一撃の重さも結構リアルに感じることができる。
とはいえ、さすがに被弾したとき本当に傷を負うってことはないけどね……
でも、そういうとき本当にケガをしようがなんだろうが構わないから、生身のレミリネ師匠に逢いたいなって思っちゃう。
まあ、もしかしたら……そんな俺の気持ちが、イメージをより強固なものにしているのかもしれないね。
そんな感じで稽古が終わったところで、シャワーを浴びる。
また、秋季交流夜会が終わってこの1週間、授業など学園における必須の活動以外はほとんど鍛錬漬けって感じだった。
といいつつ、普段の俺の生活ぶりとあんまり変わんないかもしれないけどね。
でも、今日で武闘大会の参加希望届けの提出が締め切られ、明日からは予選が始まる。
そしてそれは、いつもの授業時間の午前中だけでなく、午後の時間も使っておこなわれる。
そのため、明日からしばらく……闇と無の休日以外は、個人で鍛錬をする時間があんまりなくなってしまう。
それに、夕食後はロイターたちと模擬戦もしてるしさ。
加えてたぶんだけど、この夕食後の模擬戦は、武闘大会本戦が始まるギリギリまで続ける気がする。
なぜなら、一応武闘大会で結果を残すことを短期的な目標として設定はしているけど、かといってそれだけで終わりではなく、もっと高いところに目標があるからだ。
……でもまあ、前日ぐらいは早く寝なさいってことで、時間を短縮するかお休みになるかもしれないけどね。
ああ、それでもちろん、既に武闘大会の参加希望届けは提出済みである。
その際、フフッ……ほかの生徒と重ならないタイミングを見計らって、エリナ先生の研究室におじゃまさせてもらった!
いやぁ、あれは我ながら絶妙なタイミングだったと思うね! 上手い具合にエリナ先生とおしゃべりできたからさ!!
しかもそのとき、エリナ先生に激励してもらっちゃったからさ、その期待に応えるためにも「絶対に優勝するしかない!!」って感じだよ。
「……よし、シャワーも浴び終わったことだし、食堂に向かいますかね」
そうして、男子寮の食堂で夕食をいただく。
そして食堂では、武闘大会の話題でいっぱいだった。
「俺さ、ついさっきだけど……参加希望を出してきちゃったっ! いやぁ~ドキドキするなぁ~」
「おお、決断したか!」
「これで僕たちも、本戦を争うライバルってことになりますね?」
「そうだな! お前らには負けねぇからな!!」
「ははっ、それはこちらのセリフだ」
「とりあえず、予選で当たった場合は、どちらが勝っても恨みっこなしです」
「へへっ、当然だ!」
「ああ、そのとおりだ!」
「明日からが楽しみです」
ほう……あっちのテーブルの男子たちは燃えているみたいだね。
「……おい、締め切りは今日までだぞ? 早く出さねぇと終わっちまうぞ!」
「分かってるけどぉ~でもぉ~」
「どっちみちこれから模擬戦はやらされるんだから、出しときゃいいだろ」
「そうそう、難しく考えることねぇって!」
「でもでもぉ~そうやって参加希望を出しといて本戦に残れなかったら……カッコ悪くな~い?」
「別に……本戦に残れない奴のほうが圧倒的に多いんだから、いうほどカッコ悪くないだろ」
「そうそう、それにお前が参加希望を出してるかどうかなんて、いうほど誰も気にしてねぇって!」
「う~ん……でもぉ……どうしよっかなぁ……」
「優柔不断な奴だなぁ……」
「かぁ~っ! もっとこう、ビビッと決めて、ガガッと行けばいいのによぉ!!」
「だってぇ~」
まあ、今日中ということだから、日付が変わるまでは受け付けてくれるだろうけどねぇ……
その点、今一緒に夕食後の模擬戦をしているみんなは、既に参加希望を提出済みである。
こんな感じで、あっちこっちで武闘大会に関する話題でワイワイしているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます