第557話 本戦を目指していいのかな?

 今日の夕食は、セテルタとその取り巻きたちが一緒ではなかったが、まずは全員予選通過を勝ち取ろうぜって話をして終わった。

 まあ、俺とロイター、そしてサンズは既に本戦を見据えているけどね。

 それから、俺の見立てではソイルも本戦は堅いと思っているが、本人的にはトーリグやハソッドと同じように当落上にいるつもりのようだ……とはいえ、油断するよりはいいかな?

 あと、ヴィーンも大丈夫な気はするが……予選で強者とばっかり組まされたら勝率を下げてしまうかもしれないから、これまた油断は禁物だろうねって感じ。

 そんなことを思いつつ、今日も模擬戦をするため運動場へ移動。

 そして運動場にはファティマとパルフェナ、それからエトアラ嬢とセテルタたちが到着済みだった。


「みんなそろったことだし、今日も始めましょうか」


 というわけでファティマの号令の下、まずはアップがてら素振り等の基礎練習をしながら、心身共に戦闘態勢に切り替えてゆく。

 そうして状態が整ったところで、適当にグループを作って模擬戦を開始。

 フフッ、これも最初はロイターとサンズと俺の3人だけだったんだよなぁ……それで2人が対戦して、空いてる1人が審判をやるって感じでひたすら模擬戦を続けてさ……

 それが今じゃあ、人数が多くてグループ分けを必要とするところまできた……なんだか、感慨深いもんだね。

 ……なんて思っていたところ、オーディエンスたちの会話が聞こえてくる。


「……さて、ファティマちゃんの応援に全力ブッパしますかね?」

「僕はパルフェナちゃん!」

「……実は俺さ……エトアラ先輩のこと……密かにいいなって思ってたんだよね……」

「そ、それって君……」

「ウワサの……」

「悪い! 自分でいっておいてなんだけど……それ以上はやめてくれ……」

「……つーか、横からスマンだけど……どう考えたってお前より、セテルタさんのほうが先に好きだったんじゃね?」

「あっ!」

「いっちゃった……」

「う、うわぁ~ん……!!」


 そうしてエトアラ嬢に憧れていた男子は、いたたまれなくなって逃げ出してしまった……

 しかしながら、たった1歳とはいえ年上に好意を持つとは……なかなか筋のいい男子だ。

 ぜひともこれから視野を広げていって、もっともっと上の年齢層の女性に興味を持ってもらいたいものだ……そしてそのときがきたら、一晩でも二晩でも共に語り明かそうぜ!!

 それから、オーディエンスたちの会話はそれだけじゃなく……


「……なあ、こうやって見てるだけじゃなくて、そろそろ俺たちも武闘大会に向けて訓練を始めたほうがいいんじゃないか?」

「えぇ~っ? どうせ僕らは本戦に残れっこないんだし……ここでワイワイ観戦してればよくない?」


 どうせ……か。

 もったいないな、魔力操作などいろいろ励めば、可能性が無限大に広がるというのに……ここはひとつ、俺がガツンといっとくべきか?


「だが、本戦に残れるかどうかはともかく、やるだけやってみたほうがいいだろうな……よし! じゃあ、俺たちも模擬戦をやってみるか!?」

「おう! そうこなくっちゃ!!」

「……ね、ねぇ……もしよかったら……ボクも混ぜてもらえない……かな?」

「しゃあねぇなぁ……そんじゃ、オイラもいっちょやったるか!」

「うっし、オレもやるぜ! 正直アイツらを見てて、だんだんオレもやりてぇなって思い始めてたところだからな!!」

「あ、それ分かる! なんか、こう……心の底にグツグツとしたもんが湧いてくるんだよな!!」

「えっ! えぇ~っ!! 君たち、本気なの!?」

「お前も来いよ……こうやって毎回欠かさず見に来てたぐらいなんだから、お前の心の中にも何かしら燃えるもんがあんだろ?」

「うっ……それは……」

「……じ、自分の心の声に……素直になってみても……いいんじゃない……かな?」

「……そうなのかな? 僕も、本戦を目指していいのかな?」

「ああ、いいに決まってんだろ!」

「オイラたち、みんながライバルたい!」

「分かった……僕もやる! やってやるんだ!!」

「おう! よくいった!!」

「……い、一緒に……頑張ろう……ね?」

「へへっ……こうなったら、アイツらばっかりにいいカッコはさせねぇ!」


 どうやら、自分たちでヤル気に火を付けたみたいだ……いい感じだ!


「ふぅ~ん? こっち側に転がってる男共はダサいのばっかかと思ってたけど……ちょっとは見れる奴もいるみたいね?」

「そだね~じゃあ、ウチらもちょっと相手したげよっか?」

「……ま、たまには弱っちい男共をボコってあげるのもアリかもね?」

「うっわ、ひっどぉ~でも、それもイイかもぉ~」

「な、なんだよ……お前ら……」

「もしかして……俺らと模擬戦するってんじゃないよな?」

「そうだけど?」

「ボッコボコにしたげるから、楽しみにしててね?」

「……お、女の子と模擬戦だなんて……ボク、手すらつないだことない……のに……」

「オイラもねぇよ……」

「うっわ、かっわいいのがおるぅ~」

「……ま、いい機会だから、女の強さと恐ろしさ……教えてあげるわね?」

「女子に負けたとなったら、僕……本戦目指す前に心が折れちゃうかも……」

「……だ、大丈夫だって! オレたちは弱くねぇから!!」

「そうとも! 一方的にボコられることなんてないはずだ!! ……と思いたい」


 ま、まあ……どんな形にせよ、みんなが武闘大会に向けて闘志を燃やしてくれるのなら、いい傾向だよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る