第554話 育て上げた努力に敬意を表したい
授業が終わり、昼食をいただきに男子寮の食堂に来ている。
ここ数日はおひとり様ライフを満喫できたが、とりあえずそれも今日で一旦終了って感じかな?
なぜなら、女子に誘われ、明日の朝からまた食事をご一緒することになるからだね。
まあ、これから武闘大会も始まることだし、ご一緒する女子たちに魔力操作を勧めて、ぜひとも好成績を残していただくとしよう。
ファティマにパルフェナ、それからエトアラ嬢とその取り巻きたちよ……これから俺が、君たちに強力なライバルを量産してやろうじゃないか……フフフフフ。
「……おい、魔力操作狂いが何やら悪い笑顔を浮かべているぞ?」
「あの野郎……また何か企んでやがるのか?」
「なんかさ、あの人が絡むと……思いもよらない人物が目立ったり、出来事が起こったりするよね?」
「確かにそれはあるな……」
「ということは……また、ソイルみたいな未知なる強豪を発掘でもするっていうのか? なんせ武闘大会が控えているんだからな……」
「マジかよ……現時点でも既に実力者だらけだってのに……さらにヤベェ奴が増えたら、本戦なんか夢のまた夢じゃねぇか……」
「えっ? 君……本戦に進める気でいたの?」
「そ、そりゃあ! そういう気でいねぇと、行けるもんも行けなくなっちまうだろうが!!」
「武闘大会かぁ……俺はどうすっかなぁ?」
「とりあえず、出すだけ参加届けを出しとけばいいんじゃねぇか?」
「まあね、そういう姿勢は先生たちの受けもいいだろうし……記録にも残るだろうから、将来的に騎士団や魔法士団に入るぞってなったとき効いてきたりするんじゃない? たとえ本戦に出ていないとしてもね……」
「あ~あ……それでも、1年か2年早く生まれていればなぁ……」
「もしくは、あとに……だな?」
「そうそう、今年は予想外に実力を発揮する奴が多過ぎだよ……まずは王女殿下の取り巻きたちだろ? それからさっきも話に出たソイルから始まってヴィーンさんたちもヤベェ感じになってきてるし……そして、セテルタさんはもともとロイターさんに次ぐ実力者といわれているぐらいだから別としても、その取り巻きたちまでヤル雰囲気が出てきたし……って、どいつもこいつも魔力操作狂い絡みじゃねぇか!!」
「まったくねぇ……そんな猛者たちと戦わないで済む2年生や3年生がうらやましいもんだよ……」
フフッ……強い奴を量産してゴメンね?
でも、将来的にもっともっと量産していくつもりだからね?
……というか、君らも魔力操作にしっかり取り組んで、強くなるといいよ!
そこで違うテーブルから……
「……おうコラ1年坊主共! さっきから黙って聞いてっと、俺らのこと舐めてんのか?」
「クソガキ共が……潰すぞ?」
「てか、今から2年の恐ろしさ……教えてあげよっか?」
「おっ! それはいい、俺たちが胸を貸してやるぞ?」
なんていいながら、上級生らしき男たちが1年生相手に凄んでいるよ……
ふむ……まあ、いうだけあって、あのお兄さんは制服の上からでも分かる程度に筋肉が盛り上がっていらっしゃる。
一応、俺も筋トレはしてるんだけど、あそこまで目に見えてムッキムキには成れてないんだよなぁ……
そしてロイターやサンズも「なかなか身体の厚みが……」とかぼやいていたし……
特にロイターは、ファティマを意識して身体をデカくしたがっているというのにねぇ……ままならんもんだよ。
「す、すいませんッ! 勘弁してくださいッ!!」
「で、出任せに適当吹きましたッ!!」
「そうなんです! 僕たち、そのときのノリでつい、思ってもいないことをいっちゃう悪いクセがあるんです!!」
「ホントそうなんです! もう、反省しなきゃです!!」
1年生たち、メッチャ謝りまくり……
「……チッ……舐めんのも大概にしとけよ!」
「クソガキ共が、今度調子に乗ってたら……潰すぞ?」
お兄さん……「潰すぞ?」って、そればっかり……
「えぇ~教えてあげないの? ちょっとウッキウッキしかけてたんだけどなぁ?」
「ああ、俺の筋肉に包まれて迎える至福の眠り……お前たちにも味わわせてやろうと思ってたんだがな?」
うん、ちょっとイキリ虫が疼いちゃってるお兄さんもいるけど……
それはそれとして、あのムキムキお兄さんはなかなかかもしれない……気持ちよく絞め落としてくれるみたいだし?
それでまあ、保有魔力自体は……せいぜい伯爵家ってところだが、あそこまで筋肉を育て上げた努力に敬意を表したいところだね。
だって、この世界ってムキムキになるにも、メチャクチャ大変みたいだからね……
「……だ、大丈夫ですッ! すいませんッ!!」
「お、お気持ちだけで結構ですッ!!」
「このたびは、誠に申し訳ありませんでした!!」
「ご指導のほど、感謝申し上げます!!」
「……チッ……うるせぇから、もうどっか行きやがれ」
「クソガキ共が、早く行かねぇと……潰すぞ?」
やっぱり、そればっかりィ!!
「ま、いつでも相手してあげるからねぇ?」
「ああ、そのときは全身で迎え入れてやろう」
「は、はひぃ! ありがとうございますッ!!
「そ、それでは! 失礼しますッ!!」
「お騒がせしましたァ!!」
「お先に失礼します!!」
そうして、1年生たちは逃げるようにして去って行った。
しかしもったいない……せっかくだから、お兄さんたち……特にムキムキお兄さんに胸を貸してもらえばよかったのに……
なんだったら……俺が立候補しようかな?
「……ッ!! ……よ、よし……俺たちもそろそろ行くか?」
「………………潰されたくない」
「そ、そだね……」
「おっ? もう行くのか? さて、今日は背筋を中心としたメニューだ……バッチリ効かせてやらんと、背中のオーガが笑ってくれんからな!!」
あらっ? お兄さんたちも行っちゃうみたいだ……
それにしても……確か、前世でも「背筋を鍛えまくったら鬼の顔みたいになる」みたいな表現があった気がするが……こっちの世界だとそういう言い方になるのね……
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