第552話 苦手だぜ……
夕食を終え、運動場へやってきた。
もちろん、模擬戦をするためである。
また、エトアラ嬢とセテルタのカップルを見て冷静……いや、俺らしくいうと平静でいられるか勝負のときでもある。
とりあえず、先ほどのロイターとサンズのしたり顔を潰してやらないといけないからな!
そうして、模擬戦参加者たちが続々と集まってきた。
当然、その中には例のカップルもいる……うん、やっぱいい光景だ……おっと、いかんいかん! クールで在らねば!!
「……ふむ、今のはギリギリセーフといったところか?」
「そうですね、まさにギリギリでした」
「……ま、まだまだこれから!」
ロイターとサンズめ……そうして楽しんでいられるのも今のうちだぞ!
「みんな集まったわね。それじゃあ、模擬戦を始めたいところだけれど……この先武闘大会が控えているから、それまでは個人戦を多めにしていくのはどうかしら? どうせみんな、参加するのでしょう?」
「……あはは、聞くまでもなさそうだね?」
ファティマの提案を受け、各自の表情からパルフェナが察したといった感じ。
でもまあ、当然というべきか……この中で武闘大会に参加しない奴はおらんだろうからね。
「ハッ、俺は学園の行事の中で一番武闘大会を重視していたからな! 気合入れてくぜッ!!」
「まあ、僕も楽しみにしていなかった……といえばウソになりますからねぇ?」
「アレスさん、そしてみなさんに鍛えてもらった僕の魔法……その真価をお見せするときです!!」
「……私も負けてられない」
ほうほう、ヴィーンたちも気合十分って感じだね!
「エト姉、見ててね……僕、頑張るから!」
「ええ、ええ、もちろんですとも! セテ君の雄姿をこの目に焼き付けますわ!!」
「そして、エト姉も参加するんでしょ? いっぱい応援するからね!!」
「わたくしのエレガントな戦いぶりによって、一層セテ君を魅了して差し上げますわ!」
「えぇ~? より一層って……今ですら限界を超えてるっていうのに?」
「ふふっ……もっともっと超えてくださいまし」
「うん、分かったよ……エト姉」
……ゴハァ!!
な、なんだよそれ……素晴らしい光景過ぎて、うっかり吐血しそうになったじゃないか……
……ハッ!? しまった!!
「……アレス、まだ模擬戦が始まってなくてよかったな?」
「ロイター様のおっしゃるとおりです、これが模擬戦の真っ最中であれば……完璧アウトでしたね?」
「ぐ……ぐくっ……」
「……とはいえ、さすがにあれは糖度高めだから、お前でなくとも身悶えするのは仕方ないかもしれんな?」
「ええ、これまでの反動が出ているのか……仲がとってもおよろしいことで……また、トキラミテ家とモッツケラス家の派閥の方々も同じように……」
そうなのである、エトアラ嬢とセテルタだけではなく、その取り巻きたちもカップリングした組がたくさんあって、そのそれぞれもイチャイチャな雰囲気を放っているのである……
「チッ……この甘ったるい雰囲気、苦手だぜ……」
「まあまあ、さすがに模擬戦を始めればピシッとされるでしょうからねぇ、それまでの辛抱ですよぉ」
「そういえば僕も、アレスさんから熱心に年上女性との接し方をレクチャーされたんだっけ……」
「……年上か……ふむ」
おや? ヴィーンもこちら側にいらっしゃ~いな感じか!?
フフッ、ヴィーンよ……年上はいいぞぉ?
ただ、ロイターとサンズにこれ以上ツッコミを入れられるわけにはいかんからな……クールでいくぞ!
そんなこんなあって、模擬戦を開始!
「相変わらず……あの人たちの模擬戦は次元が違うよな……」
「うん、同じ学園の生徒だとは思えないよ……」
「あ~あ、俺も武闘大会に出場するつもりだったけど……こりゃ、たいした成績を残せそうにないなぁ……」
「こういってはなんだが……いつ参加してもお前程度じゃ、たいした成績を残せないんじゃないか?」
「ひ、ひどいッ! ……でも、自分でもそう思うから反論できないのが哀しい……」
「まあ、そう思うんだったら、これから頑張るしかないんじゃないの?」
「くぅッ、偉そうに! それなら、お前も頑張れよ!!」
「残念、ボクは文系だからね……武の道はあの人たち……それから一応、君にも譲っとくよ」
「あっ、ズルい! それは逃げだぞ!!」
「アンタらうるさい! 今ロイター様のいいところなんだから!!」
「そうよそうよ! ザコ共は黙ってロイター様の華麗な剣捌きを見学してなさいよ!!」
「な、なんだとぉ!?」
「やめとけ……彼女たちを怒らせると、あとが大変だ……」
「うん、ボクもそう思うよ……」
「そこよ! ロイター様!!」
「ロイター様が剣を振る! 魔法を放つ! そのお姿のどれもがカッコいい!!」
「いや~ん! ロイター様ったら、ステキ過ぎますぅ!!」
「やっちゃえ! ロイター様ぁっ!!」
「それにしても……令嬢のうち1人ぐらいは対戦相手であるトーリグの応援もしてやればいいのに……」
「まあ、相手がロイターさんだからね……それは仕方ないんじゃない?」
「……不憫なり」
そんなオーディエンスたちの声を聞きつつ、模擬戦の時間は過ぎていくのだった。
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