第551話 このまま鍛錬漬けでいこう!!

 朝食を終え、部屋に戻ってきた。


「さて、今日は……まあ、ファティマにいわれたからっていうわけでもないけど、武闘大会に向けた意識を強めにして鍛錬を積むとしますかね……」


 結局のところ、いつもどおりの俺の行動ではあるが、一つ目標があるっていうのは、鍛錬の密度を濃くしてくれるだろう。

 というわけで、魔力操作の練習やレミリネ流剣術の型稽古にたっぷりと丁寧に時間を使っていく。


「……ハァ……フゥ……身体の動き、一つ一つに意識を込めれば込めるほど……当たり前だけど、精神的疲弊は強くなるね……」


 普段の何気ない動き、それがどれだけ無意識のうちにおこなわれているかっていうのがよく分かるって感じだよ……

 しかも、平静シリーズによって気分が強制的に高揚させられてもいるのだ。

 それを鎮めながらになるわけだから、より難易度が上がっているっていうのもある。


「だが……これでまた少し、成長できたに違いない……そうは思わないかい、キズナ君?」


 そして最近こんな感じで、キズナ君の前で鍛錬をすることが多い。

 別に秘密特訓をしているとか、そういうつもりはない。

 というか、そのつもりならロイターたちとおこなっている模擬戦だって、ほかの生徒たちに見せるわけないし。

 強いて理由を挙げるとするなら、なんとなくキズナ君の前で鍛錬をするとイイ感じがするからっていうのがあるかな?

 まあ、この点に関しては、エルフたちがいうようにキズナ君が聖樹だからっていうのがあるのかもしれないね。

 おそらく、キズナ君からそういうイイ感じのエネルギーが放出されてるんだと思う。

 それによって集中力や癒しを得てるっていうのがある気がする。

 あとはやっぱり、俺の頑張ってるところを見せたいって感じ?

 ほら、キズナ君はエリナ先生のところから来た子だからね……それはつまり、エリナ先生に見てもらっているっていうことでもあるんじゃないかなって思うからさ!!


「エリナ先生! 私は今日も頑張っています!!」


 ……なんて、いってみたり。

 きっとこの想いは、キズナ君を通じてエリナ先生の下へ送られていることだろう……そう思うことにしておく。

 そんなこんなで腹内アレス君の昼食要求がきたので、鍛錬を一区切りとする。

 そしてシャワーを浴びて、男子寮の食堂へ。

 今回も、のんびりおひとり様。

 そんな中で、周囲から聞こえてくる会話をBGMに食事を楽しむ。

 う~ん、ぜいたくだねぇ。

 会話の内容としては、夜会を経てより仲を深める決意を固めた男子の甘酸っぱい青春トークとかが多めかな?

 そんな中で、ちらほら武闘大会の話題を出す奴も出てきつつはある。

 たぶん、あの辺は武系貴族の子息なのだろうなって感じ。

 ま、君たちも頑張ってくれたまえよ!

 そんなエールを、心の中で送っておく。

 あの中から、俺のライバルとなり得る奴が出てきてくれると面白いし……今後のことを考えると、期待したいところだ。

 そうして昼食を終え、部屋に戻る。


「……よっしゃ! 今日のところはこのまま鍛錬漬けでいこう!!」


 ……エトアラ嬢とセテルタのカップリングに思い出し萌えをして気が抜けていたとはいえ、ファティマによって魔纏にヒビを入れられたのはちょっとショックだったからね。

 そういえば、前にもそんなことがあったよな……まったく、恐ろしい娘さんだよ……

 とまあ、そんな感じで再度、基礎練習から始める。

 そして、ある程度のところで、イメージのレミリネ師匠と模擬戦をおこなう。

 これは他人からすると、シャドーをしているような感じに見えるだろうね。


「嗚呼、こうしてると……スケルトンダンジョンでレミリネ師匠に稽古を付けてもらっていた日々が懐かしいなぁ……」


 まだまだ、レミリネ師匠の遥か高みには全くといっていいほど到達できていないけど、それでも1メートル……いやいや、1センチでも1ミリでも、少しでも近付きたいものだ。

 こうして夕方まで、イメージのレミリネ師匠と模擬戦を続けた。


「レミリネ師匠! 今日も、ありがとうございます!!」


 そうイメージのレミリネ師匠に向かって挨拶をして、午後の鍛錬を終える。

 ハァ……このイメージを具現化とかできたらいいんだけどなぁ……

 ……ただ、こういう考えを間違った方向に突き詰めていくと、以前始末した人形師みたいになっていくのかもしれない……注意が必要かもな。

 なんて思いつつ、火照った身体と思考をシャワーでクールダウン。

 その後は当然、男子寮の食堂で夕食をいただく。

 そこに、ロイターとサンズがやってきた。


「……ふむ、今日はキリッとしているようだな?」

「そうですね、正直昨日に引き続いてニヤニヤされているかと思っていましたが……」

「フッ……俺を誰だと心得る? 生粋のクール男だぞ?」

「……昨日のお前にそう問いかけてみたいところだな?」

「フフッ……おそらく絶句されるでしょうね?」

「……ぐむぅ」


 ……それについては、否定する余地がないね。


「まあ、今日も模擬戦にセテルタたちが参加すると思うが、そこで落ち着いていられるか……そこが勝負といったところだな?」

「ええ、アレスさん……気を強く持ってくださいね?」

「……い、いわれなくても!」


 ……ぶっちゃけ、本人たちを見たらムリかもしれないけど……がんばる。

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