第549話 割ってあげようかと思っただけよ
「そうそう……秋季交流夜会が終わって、次に控えているイベントとしては武闘大会になるわね」
「おっ! ついにって感じだな!!」
「ふふっ、早速燃えているわねぇ? とはいえ、私からいっておいてなんだけど、まだもう少し先の話……」
「まあ、そうだな」
「そこで、私たちは前期から模擬戦を重ねてきた……それはある意味、武闘大会の準備をしっかりしているといえるかもしれない」
「うむ、そう思う奴もいるだろうな……正直なところ俺たちの模擬戦は、そこまで武闘大会にフォーカスしたものではないんだけどなぁ……」
「そうね」
まあ、もともとは俺の物理戦闘能力の低さ克服が目的だったからね……
それがいつのまにか、ステキなレクリエーションタイムみたいな感じになってきているけどさ。
特に昨日からは、エトアラ嬢とセテルタ、それから取り巻きたちそれぞれのラブな雰囲気も加わって、よりステキな感じになってきている。
……あ、いや、別にセテルタたちが思いっきりアピールして見せつけようとしているってわけじゃない、そこんところは勘違いしないであげてほしい。
なんていうのかな……見せつけようとしなくても自然と、ほんのりと伝わってくるものがあるんだよねぇ。
フフッ、それがまたいいんだ……
「……隙あり」
「ッ! ……ファティマよ、君もなかなかおてんばガールだねぇ?」
走りながら、俺が思い出し萌えをしていたところ……ファティマが肩パンを一撃入れようとしてきた。
「魔纏の強度が少し落ちていたようだから、割ってあげようかと思っただけよ」
「そっかぁ~強度が落ちてたかぁ~それはいけないなぁ~教えてくれてありがとう……ってなるか! 気付きを与えるために人の魔纏を割ろうとするとか、発想が野蛮過ぎぃ~ッ!!」
「私が武闘大会の話を振ったばかりだというのに、だらしないニヤニヤ顔を晒すからでしょう?」
「そんな……ファティマさん、厳し過ぎぃ……」
「まあ、多少浮かれてしまうのも分からないわけではないから、昨日はあまりいわないようにしておいてあげたけれど……2日続くと、さすがにねぇ?」
「ぐむぅ……」
まあね、ファティマさんのいうとおりではある……
もちろん、しっかり魔纏を常時展開しているつもりではあったんだけど……やっぱり気持ちが浮ついているとね、どうしても反映されてしまう部分はあるからね……
それで魔纏にヒビを入れてくるとか、やり過ぎ感はあるけどさ……というか、多少強度が落ちていたとはいえ、それだけのことができちゃうファティマがちょっとコワいんだけど……
「そして、武闘大会それ自体はあなたが優勝すると思っているけれど……かといって慢心があってもいけないから、気合を入れてあげたのよ」
「そうだったのか……ファティマさん! ごっつあんです!!」
とまあ、そんなこんなでファティマに活を入れてもらいつつ朝練を終え、シャワーを浴びに自室へ戻る。
それでこの武闘大会についてであるが、もちろん原作ゲームにおいてもアレス君は参加する。
そしてお約束の展開というべきか、主人公と対戦して敗北する……絶対にね。
というか主人公サイドとしては、そこで勝てなきゃストーリーが進行しないから当然だよね。
また、原作アレス君としても、武闘大会で主人公に負けるからこそプライドを傷付けられるわけだし……
ここで、原作ゲームのストーリー展開はそうだとして……これによって、ゲームの強制力を試すことができるかもしれない。
俺が主人公君と対戦することになり、そして負けるかどうか……
というか、主人公君と対戦することすらなかったら、マジでゲームの強制力がないと思ってもいいかもしれないレベルだね。
それから、聞いた話によると、夏休みのあいだに主人公君も覚醒イベントを一応経験しているみたいだから、それなりに強くはなっているはず。
それに、王女殿下の取り巻き仲間たちと切磋琢磨して実力だって磨かれているに違いない……そういった意味では、彼との対戦も楽しみの一つといえるだろう。
フフッ……どんな成長をしているのかなぁ?
前世で俺が育てていた武闘大会時点の主人公より強くなっていたら……それはとってもステキなことだよね!
あ~楽しみだなぁ!!
……といいつつ、対戦できるかどうかは分かんないけどね。
そんなことをアレコレ考えつつ、シャワーを浴びる。
「……フゥ……おそらくこの先も、エトアラ嬢とセテルタたちを見て発作を起こしてしまうことはあるだろうけど……浮かてフワフワし過ぎないよう、切り替えていかんとならんね……」
そして武闘大会……ファティマの予想どおり、正直優勝する自信はある。
しかしながら、ロイターたちだって気合を入れて参加してくるだろうから、普段の模擬戦とは一味違った戦いとなるはず。
そう考えると、舐めてかかってはいけないだろう……これまたファティマのいうとおりだな。
「フフッ……せっかくシャワーで火照った体をクールダウンしたというのに、またアツくなってきてしまったね……」
なんて呟きを一つ残し、朝食へ向かった。
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