第548話 分かち合う
「なるほど、あれがモミジ祭りなるものでしたか……」
「我々……いえ、アレス殿たちの姿を見て、そのとき脱衣場にいた者たちに戦慄が走った意味が分かりました……」
「痛かった……しかし、それと同時に得も言われぬアツさがあった……あれはクセになりそうだ……」
「えぇ……僕はもうイヤだよ……」
……などなど、セテルタの取り巻きたちが口々に感想を言い合っている。
「なんつーか、これで本当に仲間になったって感じだな?」
「ま、アツい洗礼を受けたって感じですねぇ」
「あはは………………それはどうなんだろ……」
「……」
その様子を見て、ヴィーンたちがコメントしている……いや、ヴィーン本人は無言だったけどね。
しかしまあ、トーリグやハソッドのいうように、俺もこのモミジ祭りをとおして男同士の友情が育まれたと思っているんだ。
「フフッ、今日も楽しかったね、アレス!」
「ああ、まったくだ!」
「ハァ……お前たちときたら……」
「セテルタさんと意気投合したことによって、アレスさんの勢いがより増した気がしますね……」
そんなことを話しながら、風呂上がりの一杯を楽しんでいた。
う~ん、このアイスミルクコーヒーのほろ苦い甘さがいい。
まあ、ギドが淹れたやつに勝つのは至難の業だろうけどね。
とはいえ、それは技術うんぬんの話ではないような気もするが……
「さて、そろそろ今日のところは解散とするか……」
というロイターの号令の下、各々部屋に戻るのだった。
「ただいま、キズナ君! 聞いて聞いて! 今日は一段と素晴らしい模擬戦となってねぇ!!」
なんて挨拶を交わしつつ、今日はエトアラ嬢とセテルタのビッグカップルとその取り巻きたちが模擬戦に参加したことをキズナ君に語った。
「いやぁ~キズナ君にも見せてあげたかったなぁ……あれはとっても! キラキラハッピーな空間だったんだよ!!」
まあ、たとえ言葉の意味は分からなかったとしても、俺から発する幸せオーラ……いや、魔力かな? とにかく、そういう光り輝くエネルギーのようなものを、キズナ君はきっとキャッチしているに違いない!
「よし、このいい雰囲気のまま、精密魔力操作に移行するよ! ついてきてね!!」
そう一声かけて、意識を深く……深く魔力の中に潜り込ませていく……
そんな濃密な時間を寝る直前まで味わう。
「……フゥ、今日はこれぐらいかな……それじゃあ、おやすみキズナ君……」
………………
…………
……
「この清らかな目覚めに感謝を! そして、おはようキズナ君!!」
いやぁ、やっぱりね、寝る前の精密魔力操作は大事だね。
なんていうか、眠りの深さが違うもん。
これだけでも、魔力操作をやる価値はあるってもんだね!
「よっしゃ! これからも、みんなに勧めて回るとしよう!!」
やっぱさ、幸せっていうのはみんなで分かち合えたほうがステキだもんね!
ちなみに「分かち合う」ってことに関して、昨日の模擬戦時のステキエピソードをひとつ披露しちゃおうかな?
それはね、俺がプレゼントした平静シリーズのうちいくつかを、セテルタがエトアラ嬢に貸して、2人で一緒に使っていたんだよ!
「……はぁ……あれはもう……たまらん光景だったね……」
正直、そのまま2人でずっと一組を分け合って使う姿を見ていたかったけど……そこは涙を呑んで、俺からエトアラ嬢に平静シリーズをプレゼントした。
まあ、そうはいってもね、侯爵家の財力的に手に入らないわけもないから、ずっと分け合って使うって状態は続かなかっただろうけどね。
そしてもちろん、両家の取り巻きたち全員に対しても平静シリーズを配ったのはいうまでもない。
フッ、みんなでワンランクもツーランクも……そのまたずっと先へも駆け上がって行こうぜ!!
そんなことを考えつつ着替えを済ませ、朝練に出発!
「それじゃあ、またあとでねキズナ君!」
そう挨拶をして、いつものコースへ向かう。
道を歩いていて、耳には小鳥のさえずりが聞こえてくる……フッ、今日もなんだかいい日になりそうだ!
「おはよう、今日も機嫌がいいようね?」
「ハッハッハッ、当然だ! 朝の光を受けて、気分も澄み渡っているのさっ!!」
「そう、よかったわね」
「おうよ!」
「それじゃあ、今日も行きましょうか」
「よっしゃ!」
こうして、ファティマと朝の挨拶を交わし、朝練をスタート。
「そういえば、昨日はあれからエトアラ嬢たちと楽しく過ごせたか?」
「ええ、もちろんよ、そのときセテルタとの思い出話をいくつも聞かせてもらったわ」
「ほう? ほぉ~う!?」
「セテルタのことを愛おしそうに語るエトアラさんの、あの幸せそうな顔といったら……ふふっ」
「ほぉぉぉぅ!!」
いいね、とってもいいよ!
そういうの、もっとちょうだい!!
「とはいえ、あなたもセテルタから聞いている内容が多いでしょうけれど……」
「いやいや、たとえ同じ出来事についてだとしても、エトアラ嬢の視点から語られれば、それはまた違った美しさを放つ物語となるだろうさ!」
「ロマンチストねぇ」
「今度、俺も聞かせも~らおっと! いや、セテルタと一緒に語ってもらうのもいいかも!!」
「たぶん、恥ずかしそうにしながら……でも、嬉しそうに語ってくれるでしょうね」
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