第544話 友人関係は変わらない
朝食とティオグとの会話を終え、自室に戻る。
「ただいま、キズナ君! 食堂でも昨日の夜会について、男子たちがああだこうだとワイワイしててね……」
なんて挨拶とともに、食堂での様子をキズナ君に語って聞かせた。
まあね、俺だけじゃなく、あの会場にいた多くの人々にも昨日の出来事はなかなか興味深いものだっただろうからね!
そんで、今日は何をしようかなってことだけど……やっぱ、昨日からの興奮がまだ続いているからね……それを落ち着ける意味も含めて、精密な魔力操作に打ち込むとしようか。
そんなわけで、己の魔力との語り合いを始める。
………………
…………
……
「……フゥ……やはりというべきか……俺の気持ちが浮かれ過ぎてて、魔力も騒がしかったね……」
なんというか、今日の魔力はいつにも増して元気だった。
まあ、それは朝から……なんだったら、昨日の夜から同時並行的におこなっていた魔力操作で分かり切っていたことではあるんだけどね。
でもまあ、深く深く魔力と語り合うことで、よりそれを感じたといったところかな。
「とはいえ……多少は魔力の騒がしさも落ち着いたかな? キズナ君はどう思う?」
……たぶんだけど、キズナ君も同意してくれてるんじゃないだろうか。
「それじゃあ、少し落ち着いてきたところで……お次は、レミリネ流剣術の型稽古といきますかね!」
というわけで、型稽古を始める。
身体の隅々まで魔力が行き渡るように意識しつつ、繊細で丁寧にトレン刀のミキオ君を振る。
しばらくミキオ君を振ったところで、トレントのマラカスであるミキジ君とミキゾウ君に持ち替え、二刀流の稽古。
そして最後の締めくくりとして、レミリネ師匠の剣によって型をひととおりこなす。
この最後におこなう型は、俺にとって稽古というより、レミリネ師匠に捧げる演武のような意味合いである。
いや、いつもの稽古だってレミリネ師匠を傍に感じながらおこなっているつもりだが、これはそれよりさらに一段高くレミリネ師匠に意識を向けたものということができるだろうと思う。
「……レミリネ師匠、今日もありがとうございます」
そうして、俺のイメージのレミリネ師匠に挨拶をして、剣術の稽古を終える。
その後はシャワーで汗を流し、少しくつろぐ。
こうして午前中は過ぎ、昼食の時間である。
それもまた女子から誘われていないので、今回も男子寮の食堂でおひとり様である。
まあ、朝食は途中からティオグと一緒になったので、純然たるおひとり様ではなかったけどね。
そうして昼食も、男子たちのワイワイとした会話をBGMとしながら、美味しくいただいた。
また、特に誰とも一緒にならなかったので、今回はおひとり様という時間を楽しんだ。
誰かと一緒の時間も素晴らしいものではあるが……やっぱりこういう時間も大事にしなくちゃね。
そんな感じで昼食を楽しんだあとは、ちょいとお出かけもいいかなって気がする。
というわけで、食堂から移動を開始する。
その際、中央棟を経由して門に向かったのだが、その辺から女子の姿もチラホラ目にするようになる。
そして、女子たちの会話も耳に入ってくる。
もちろん話題は昨日の夜会がメイン……といってもいいだろうか……
「……昨日は驚きましたわね?」
「ええ、まさかセテルタ様が、あのエトアラ様をお慕いしていただなんて……」
「ふふっ……残念でしたわね?」
「……クッ!」
「だからあれほど申しましたでしょう? アレス様にはロイター様だとね!」
「いいえ、ソイルきゅんよ!」
「私は最近、アレス様とトーリグのオラオラコンビっていうの推してみようかなって思っているのよね……」
「トーリグですってぇ? ハソッドと並んで、あの口だけのチョボイ奴でしょ?」
「いや、もしかしたら磨けば光るかも……って気がしてきたのよね……ほら、アレス様と一緒にいる機会も増えてきたでしょ? だから、ワンチャンあるかもなぁ~って」
「う~ん、アンタがそうまでいうのなら……とりあえず、様子見ってところかしら?」
「そんなことより! セテルタ様とアレス様よ!!」
「まあ、諦めるしかないんじゃないかしら?」
「えぇっ!? それはイヤ!!」
「あなたがいくら嫌がったところで、セテルタ様はエトアラ様を慕っておられるのだから……仕方がないでしょう?」
「……いいえ……セテルタ様の愛情はエトアラ様に! 友情はアレス様に!! そう! それでいいのよ!!」
「ふふん、苦し紛れね」
「なんですってぇ!」
「まあね、なんでもかんでも恋愛感情に結び付けちゃうって考え方、私もあんまり気に入ってなかったから、セテルタ様とアレス様の友情……いいんじゃない?」
「そっ、そうよね! ほら見なさい!!」
「別に、私だって全て恋愛感情に結び付けていたわけではないわ……でも、セテルタ様の心、その多くはエトアラ様が占めていたという事実には変わりないもの、その中にアレス様が占める割合……それは一体どれほどのものかしらね?」
「ぐ、ぐぬぬ……」
なんというか、女子たちが無駄に熱い激論を交わしていらっしゃる……
ま、まあね、俺とセテルタの友人関係は変わらないからさ! ズッ友だから!!
それだけは心の中で彼女たちに伝えつつ……それ以上はあんまり触れないでおこ~っと!
そうして、気持ち早歩きで学園の外に向かったのだった。
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