第543話 これから先も見守っていくとしようぜ!!

 今日という日は当然というべきか、昨日の夜会の話題で持ち切りである。

 というわけで、先ほどとは違うテーブルを囲む男子たちの会話にも耳を傾けてみる。


「まあ、魔力操作狂いについては、ある種いつものことだから置いておくとしてだ……こうなったからにはセテルタの奴、もう後戻りはできないよな?」

「うん……あれだけ大々的に、それもみんなが注目している中で愛の告白をしたんだもん……あとから『やっぱやめます……』は通用しないよね?」


 まあ、そんなこと……そもそも俺が許さんけどな?


「俺さ、正直なことをいうとあのとき、心の中で『セテルタさん、早まっちまったな……』とか思ったね……いや、エトアラ先輩がダメとかそういうことをいいたいんじゃなくてさ……」

「ああ、分かる分かる! ぶっちゃけ、もう遊べねぇもんな!!」

「いやいや、本当に遊ぶ奴っていうのはな……隠れてでも遊ぶぞ?」

「それはそうかもしれんが、セテルタさんはそういう奴じゃないだろ……」

「うん、そんなことできちゃうぐらいの人なら、あんなふうに思い悩むこともなかったんじゃない?」

「まったくだ、お前らみたいな遊び人と一緒にすんなってーの」

「おいおい、遊び人とは心外だなぁ?」

「大きく外してるとは思わんけどなぁ?」


 きっと、セテルタはエトアラ嬢一筋さ!

 というか、そんな器用に遊び歩くセテルタ……ちょっとイヤ。


「ま! 君らが遊び人かどうかっていうのはともかくとしてだ……ある意味、人生のゴールを一足先に決めてしまったセテルタ氏に心ばかりのエールを贈ろうじゃないか」

「そだね」

「きっとアイツ……エトアラ先輩の尻に敷かれることになるんだろうなぁ……」


 フッ、尻に敷かれる……か、うむ、実に結構なことじゃないか!


「そういうこといわないの! ……まあ、俺もそんな気はしてるけどね」

「じゃあ、現実問題として、セテルタがトキラミテ家に婿入りか?」

「さぁ、それはどうなんだろ……さすがにそれはモッツケラス家も黙ってないんじゃない?」


 それはさっき、ファティマもいってたことだな……実際、どうなるのかねぇ?


「つーことは……あの2人には、まだまだ話題が盛りだくさんということだな!」

「それでまた変に拗れないといいけどね……」

「そんときは再度、王女殿下にお出まし願うしかないんじゃないか?」

「いや……その前に、魔力操作狂いがまた暴れるんじゃね?」

「はぁ……結局、話題は彼に戻っちゃうんだね……」

「まぁなぁ……やっぱ、目立つからな……」


 う~ん、俺は普通にしてるだけのつもりなんだけどな?

 なんて、それが異世界転生者クオリティ。


「でも、あのとき奴に立ちはだかったセテルタさん……マジで男だったよな?」

「うん、それは確かに……僕が女子だったら『キュン』ってしてたね、絶対!」

「……お前、もしかして……実は今でもちょっとセテルタさんにときめいてね?」

「まあ、そりゃあね……好きな人を守るため、あの人相手に一戦も辞さずっていう覚悟を見せたんだから、同性ながらカッコいいなとは思ったよ?」

「……それはそうだな」

「とりあえず俺も含めて、この中には同じことができる奴はいないだろうな……」

「それは認めざるを得ない……」


 まあね、君らも精進してセテルタ並みの男力を磨きたまえ。

 ……それにはまず、魔力操作から始めることだな!

 なんて思っていると……ここで、俺に声をかけてくるナイスガイが現れた。


「やあ、アレス殿……昨日は理想の結果を得られましたかな?」

「おお、ティオグじゃないか! いやぁ、昨日は本当にありがとな!!」

「いえいえ、拙者はたいしたことをしていないでござるよ」

「なんのなんの! あの結果に結びついたのは、ティオグのおかげが大きかったと俺は思っているぐらいだ!!」

「はっは、そうおだててくださるなら、気持ちよく乗せていただいておきましょう」


 これはお世辞でもなんでもなく、本心から思っていることだ。

 なぜなら、事前にティオグから王女殿下に話が行っていなかった場合、おそらく王女殿下はキレる俺への対処に意識の多くを傾けていただろうからな……

 その場合、エトアラ嬢とセテルタの話が中途半端に流れてしまっていた可能性もあるだろう。

 まあ、原作ゲームではヒロインらしく聡明な王女って設定にはなっていたと思うから、どっかのタイミングで俺の演技も見抜いてくれていたかもしれないけどね。

 でもまあ、たとえそうだとしても、昨日ほどスムーズに行かなかっただろうから、やっぱりあれでよかったんだと思う。


「そしてあの2人には、これからまだまだ課題もあるのだろうと思うが……昨日の時点では最高の結果だったと自負している」

「ええ、王女殿下もそれなりに手応えを感じておられたご様子……あとはこの調子で彼ら、そして両家の関係がよりよきものとなっていってくれることを願うばかりでござるな」

「ああ、そのとおりだ! そんな感じで、これから先も見守っていくとしようぜ!!」

「そうでござるな」

「あぁ……昨日の光景は実に素晴らしかった……フフッ……まさに、最高……」

「……そうで、ござるな……」


 ……おっと、ティオグにちょっと引かれてしまったか。

 昨日はロイターとサンズ、そして今日はファティマにも指摘されたからな……俺自身、気を付けねばとは思っているんだが、どうも顔が緩んでしまってな……ウフフ。


「ま、まあ、全てはこれから……我々も未来に向けて、着実に歩んでいきたいものでござるな」

「ああ、ティオグのいうとおりだ! そんなわけで、これからもよろしくな!!」

「ええ、こちらこそ」


 そうしてティオグと固い握手を交わし、朝食を終えるのだった。

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