第542話 彼の果たした役割

「それじゃあ、今回はメッチャ世話になったな! ありがとう!!」

「たいしたことはしていないけれど、どういたしまして……また何かあったら、いつでも相談してくれればいいわ」

「おう! そんときはよろしく頼むな!!」

「ええ、任せてちょうだい」


 いつものようにランニングを終え、ファティマにお礼の言葉を述べつつ別れ、自室に戻る。

 いやぁ、ほんっとに、ファティマは頼りになるなぁ。

 しかもなんていうのかな、あの常に自信たっぷりな態度がこの上なく頼もしいって感じでさ。

 たぶん、ああいうのが大将の器っていうんだろうなぁって思っちゃうね!

 だって、あれだけ余裕たっぷりでいてくれると、安心できるもんね!

 そう考えると、ファティマに100万の兵を指揮させてみたい……とかいってみたくなっちゃうね!!

 ……って、マヌケ族と戦争になった場合、それが現実となってしまうかもしれないんだった……滅多なことはいうもんじゃないな……

 まあ、魔王復活となったところで戦争なんかさせず、俺がタイマンかまして理解らせたる! っていう気持ちではいるけどね!!

 ただ、俺がそう思っていても、マヌケ族の奴らだって必死だろうし、こればっかりはどう転ぶか分からんからね……やっぱり各自で実力を養成していってもらっておく必要はあるだろう……

 そんなことことを考えながら、シャワーで汗を流す。

 そしてサッパリしたところで、朝食のお時間です!

 というわけで、昨日の余韻でルンルン気分のまま男子寮の食堂へ向かう。

 まあ、さすがに夜会の次の日は女子たちものんびりするつもりなのか、誘われていなかったからね。

 昨日の光景を脳内でエンドレスループしながら、おひとり様ライフを堪能させてもらうといたしましょう!


「ウフッ……ウフフフフ」


 ……おっと、いかんいかん、どうしても笑みが漏れてしまうな。


「……おい、見ろよ、魔力操作狂いの奴……昨日あんなにキレ散らかしてたクセに、今日は随分ゴキゲンだな……」

「あれなぁ……すっげぇビビったよな……」

「あの人のキレポイントが分かんないから、厄介だよね……」

「でも結局さ……エトアラ先輩とはあれで和解できたんだっけ?」

「さぁなぁ……実際、どうなんだ?」

「いや、たぶん大丈夫なんじゃないか? セテルタさんとダンスを踊り終えたエトアラ先輩と普通に話してたっぽいし……」

「でもなんか、今も割とそうだけど……あれからずっと、なんとも形容しがたい顔を浮かべてたよな……?」

「なんとも不気味……といわざるを得ませんよね……」

「ま、まあ……俺たちには関係ないこととして……な?」

「お、おう、そうだな……」


 食堂へと続く廊下にいた男子たちが、ああだこうだとウワサ話に興じている。

 今日の俺は機嫌がいいから、彼らにも笑顔をサービスしちゃう!


「ヒッ!」

「や、やべぇ……!」

「あわわ……」

「お怒りかもしれん、とりあえず謝っとこうぜ!」

「ス、スイマセッシタァァァァァァ!!」

「ひゃぁぁぁぁぁ!!」


 せっかく俺が笑顔をサービスしてあげたというのに……憶病なキッズだよ、まったく!

 なんて思いつつ、食堂に到着。

 さて、この幸福感とともに美味しいご飯を味わうとしよう。


「それにしても……さすが王女殿下だったよな?」

「そうそう、あの魔力操作狂いの怒りをサラリと鎮めてしまうのだから、凄いの一言に尽きる!」

「まあ、それももちろんだけど……あのトキラミテ家とモッツケラス家をくっつけちまうんだもんなぁ! 今でも信じられねぇよ!!」

「確かに、両家の永きに渡る因縁もなんのそのって姿勢に俺はシビれちまったね!」

「そう、そこだよ、そこ! 下手に手を付けて失敗でもしたら大変なことになってたろうに……王女殿下も思い切ったことをしたよなぁ?」

「ああ、まったくだ……しかも、あの者が荒らすだけ荒らしたあとで……だからな?」

「ホントそう! よくリカバリーできたもんだよ!!」

「いや、君たちはそういうけど……今回の件については、彼の果たした役割も大きかったんじゃないかな?」

「……はぁ!? するとテメェは、王女殿下のご活躍にケチでも付けようってのか!! あぁ!?」

「あ、いや、そういうわけじゃないけど……」

「奴が意味不明にキレさえしなけりゃ、王女殿下だって危ねぇ橋を渡ることもなかったんだからな! そこんとこ分かってんのか! あぁ!?」

「でも……エトアラ先輩とセテルタ君の本当の気持ちを最初に言い当てたのは彼でしょ?」

「んなもん、偶然のたまたまだ! 適当吹いたら、運よく大アタリでしたってだけの話だろうが!!」

「いや、僕にはそうは思えない……きっと、彼なりに根拠あってのことだった気がするんだ……」

「じゃあ、あんなわけ分かんねぇキレ方してねぇで、もっと穏便にいえや!!」

「はい、どう、どう……お前もそうやって変に熱くなんなって……今回のことについては、王女殿下のおかげが第一、そしてまあ、理由はどうあれ魔力操作狂いも結果的に役には立った、それでいいじゃないか?」

「……フン」

「お前も、それでいいよな?」

「ま、まあ、もともとそこまで言い争うつもりじゃなかったからね……」


 いや、全面的に王女殿下のご活躍ということで構わんよ!

 でもまあ、俺のことを擁護してくれた君には、ちょっとサンキュ!!

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