第531話 煌びやかに着飾った

 昼食を終え、自室に戻ってきた。

 そこで、夜会が始まるまでのあいだ、どう過ごすかってことだけど……

 フフッ、当然……勉強と修行だっ!

 まあね、イベントがあるからって、浮かれてばっかりもいられませんよ。

 むしろ、今晩は模擬戦をしないぶん、今このときこそ内容の濃い時間を過ごさねばならないといえるだろう。

 そんなことを思いつつ早速、書物と向き合うのだった。


「……ふむふむ……なるほどね」


 内容的に一段落付いたので、読書についてはここまでとしよう。

 いやぁ……前世でも、これぐらいの真剣さでもって勉学に勤しんでいれば、もっと成績がよかったのではないだろうか……

 とはいえ、これだけの集中力で本を読めるのも、日頃からの魔力操作によって培われた部分が少なくないだろうね。

 ちょっと分かんないところとかがあっても、すぐ投げ出さないでグッッと喰らいついていける……みたいな?


「フハハハハ! やはり、魔力操作は偉大なり!!」


 はてさて、勉強が終わったところで、お次は修行に移行するとしますかね?

 そうして今日は、魔力操作と同時並行しながらレミリネ流剣術の型練習をみっちりとこなした。


「……フゥ、そろそろ夜会に行く準備をしたほうがいいか……うむ、今日もなかなか充実した修行だったな!」


 なんて一言とともに、シャワーを浴びに向かう。

 そして体を洗い清めたところで、夜会用の華美な服を着る。

 この前の春期交流夜会のとき、制服で参加したことについてファティマからお小言を頂いてしまったからね……

 まあ、華美とはいえ、そこまでギラギラした感じではなく、シックで落ち着いたデザインの物である……そういうのをソエラルタウトの実家でギドに選んでもらったからね。

 フッ……ギドの選んだ服なら誰も文句あるまい!

 さて、こうして服装も完璧になったところで、そろそろ行くとしますかね。


「それじゃあ、キズナ君! これから夜会に行ってくるよ!!」


 そうキズナ君に声をかけ、女子寮へ向かう。

 とはいえ、今回はガッチガチにエスコートするって感じでもないから、直接会場に集合でもいいような気もするけどね……まあ、この前だっていうほどエスコートしてないけどさ。

 ああ、そういえば、それでロイターにキレられて決闘騒ぎになったんだっけ……

 そんで、そうした衝突を経て、ロイターたちと仲良くなったんだもんなぁ……

 なんだか懐かしくなってきたよ。


「あの夜から、俺たちの物語は始まった……なあ、そうだろ、ロイター?」

「若干表現が気持ち悪いが……まあ、そうだな」

「そうですねぇ……あの春期交流夜会があった時点では、ロイター様とアレスさんがここまで仲を深められるとは、思っても見ませんでしたよ」


 既に到着していたロイターとサンズに声をかけ、しみじみと懐かしさを味わう。


「アレスさんたちはもう来てたんですね!」

「これはこれは、お待たせしてしまいましたかねぇ?」

「ハン、俺は夜会なんかどうでもいいんだけどな!」

「……」


 その少しあと、ヴィーンたちも到着。

 ……なかなかトーリグが尖ったことをいっているが、正直なところ、俺も意見としては似たようなものである。

 ただし、今日はセテルタにとって大事な日になるかもしれないのだからな! どうでもいいと適当な気持ちで参加するわけにも行くまい……

 なんて思っていたところで、セテルタもやってきた……ゾロゾロと取り巻きたちも一緒にね。


「やあ、もうみんな集まってたみたいだね!」

「おう、セテルタ!」


 ここでなんとなく、ハイタッチ。


「……ッ」


 すると、取り巻き君の1人が仄かに嫌そうな顔をしそうになっていた。

 チミィ! セテルタの側近として出世したいなら、何事にもそうやって顔に出さないよう気を付けなくてはいかんぞぉ?


「また、お前は……」

「ははっ……まあ、アレスさんですからね……」


 まあ、ロイターやサンズ、それからファティマとかみたいに、こっちが無表情でいるはずなのに、心を読んでくる奴らもいるけどね……

 そんなことを思っているうちに、女子寮の前は男子たちが続々と集まってきている。

 そうして、いくらも経たないうちに、煌びやかに着飾った女子たちが1人、また1人と出てきた。

 あの中には、俺と食事を共にした子も何人かいる。

 そうした子たちも含めて改めて見てみると、やはりみんなキレイな子たちだね。

 前世でなら「俺、あの子と一緒にメシ食ったことがあるんだぜ!?」とか自慢したくなるぐらいだろう。

 まあ、前世の俺が相手だったら、誘われることもなかっただろうけどさ……

 それはともかくとして、ファティマとパルフェナも出てきた。

 ファティマはやはり、きゅるんとしてスカイブルーなドレス、そしてパルフェナは、穏やかなグリーンのドレスを着ている。

 ……ふむ、女子たちみんなキレイだけど……やっぱり、あの2人は周りとちょっと違うなっていうのは、俺でも感じるところだね。


「2人とも、よく似合っている」

「ええ、とってもステキですよ!」

「いつも美しいですけど、今日は一段と美しいです!」

「まさに! まさにですねぇ!!」

「まあ、そこは俺も認める……」

「……素晴らしいと思う」

「うんうん、2人とも最高だよっ!」


 ……なんて、男子チームが口々に2人を褒める。

 おっと、いかんいかん、俺も何かコメントせねば。


「……俺も、いいと思う」


 ……とまあ、俺の口から出たのは、そんなアッサリとしたものだった。


「みんな、ありがとう」

「えへへ、そんなに褒められると、ちょっと照れちゃうなぁ」


 まあ、ファティマとパルフェナは満足そうなので、よかろう。


「じゃあ、みんなそろったみたいだし……そろそろ会場へ移動かな?」

「いえ、まだよ」

「……え?」


 そんなセテルタとファティマの問答があったところで……


「あらあら、皆さん既にお集まりのようですわねぇ?」


 エトアラ嬢が登場した。

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