第526話 模擬戦はさらに充実
今回はセテルタが初参加ということもあって、いつもより入念にウォーミングアップをする。
そうして、剣術の型練習などを一緒にしながら徐々に心身ともに戦闘モードへと移行していく。
そこで、改めてセテルタの動きに注目してみるが、使う剣術は王国式。
また、技量としては、さすがに俺の兄上ほどではないが、それでもなかなかのレベルはありそう。
そんな感じで見た限りにおいては、剣の腕はロイターやサンズといい勝負をしそうである。
……それはつまり、また引き分けが増えるってことさ。
いやぁ、最近ね……魔法なしの1対1だとホントに時間切れによる引き分けばっかなんだよねぇ……
魔法ありだと今はまだそうでもないトーリグやハソッドだって、魔法なしだと急に手強い相手に早変わりするしさ。
そんなわけで、早速セテルタと魔法なしの1対1で対戦してみたのだが……やっぱり時間切れで引き分けとなった。
「えっと、レミリネ流っていうんだっけ……アレスの使う剣術もなかなか隙がなくていいね! どう崩せばいいかとか考えさせられて、すっごく勉強になったよ!!」
「だろっ? レミリネ流は隙がないんだ! そして俺は、このレミリネ流を世界に広めていくことも己の使命と位置づけているんだ!!」
「そっかぁ……うん、デッカくていい目標だね! きっとアレスにならできるよ!!」
「おう、ありがとな! そして、セテルタが主に使うのは王国式だろうけど、知識としてレミリネ流を知っておくのも悪くないだろうから、よかったら学んでみてくれよなっ!!」
まあ、俺も兄上とか護衛をしてくれたお姉さんたちに王国式を教えてもらったりしたし、ロイターたちから模擬戦を通じて実戦的に学んだりもしているので、セテルタはその逆になるって感じだろう。
「そうだねぇ、じゃあ、これからご指導のほどよろしくお願いするよ……アレス先生っ!」
「おいおい、同級生相手に『先生』はやめてくれって、恐れ多いだろうぉ?」
「フフッ、分かったよ。それで、これからも模擬戦に参加できるときはなるべく参加したいと思うから、そのときレミリネ流についても学ばせてもらうとするよ」
「おうよ!」
とまあ、対戦後のちょっとした語らい。
「ふぅむ、あの2人……最初は打算的な付き合いかと思ったが……案外本物かもしれんな」
「……となると、本物の友情を割ってかなきゃなんねぇってこったろ? エトアラ先輩はもう無理なんじゃねぇか?」
「なんつーか、家同士のことを抜きにして考えても、ある意味ライバルが男って状況だし……エトアラ先輩も不憫だよなぁ……」
「まあ、不憫だからこそ輝く美しさもあるわけだし……それはそれでまた好し」
「……う~ん、セテルタ様との組み合わせもいいのだけれど……私はやっぱり、ロイター様との組み合わせのほうがいいかもぉ……」
「いえ、ロイター様はサンズ君と共にあってこそ完成された煌めきを放つのだわ」
「わたくしとしては、前期の終わり頃に魅せていただいた、あの方とソイルさんという組み合わせを推したいところですわね」
「あっ、確かにそれ、ちょっと分かるっ!」
相変わらず、オーディエンスたちは好き放題いってくれてるね……いや、別に構わないんだけどさ。
「おい、アレスにセテルタ! そろそろ団体戦をやるぞ?」
「おっと、今行く!」
「次は団体戦か……僕も楽しませてもらおう!」
というわけでロイターに呼ばれ、模擬戦は団体戦へと移行していく。
「ねぇねぇ、今のロイター様見た? ちょっと嫉妬入ってなかった!?」
「えぇ~さすがにそれは、解釈強過ぎじゃな~い?」
「まあ、アレス様ってば、意外とプレイボーイみたいなところがあるものねぇ?」
「……もしもし、君たち……ここには我々、健全な男子もいるのだから、そういう話はちょっと……ね?」
「……はぁっ? 不健全の塊みたいな面したアンタが何いっちゃってんの?」
「そうよそうよ! ザコっ面は黙ってなさい!!」
「……ひ、ひどい……僕はママに『イケメン』っていわれてるのにぃッ!!」
……今、ピクッっときた。
ふむ……君の母上は愛情溢れるお方のようだ、大事にしたまえよ!
「あれっ? あの人……なんで一瞬僕のことを見たんだろう……?」
「いやいや、偶然でしょ? 誰がアンタみたいなのをわざわざ見んのよ?」
「これだから、ザコっ面は自意識過剰で困る」
なんか彼、女子たちからメチャクチャにいわれてるけど……この世界だけあって別にブサイクじゃない……っていうか、ちゃんとイケメンだよな。
う~む、俺には分からんレベルで何かしら残念感があるのかね?
まあ、それはそれとして……模擬戦に集中!
そうして団体戦を開始したのだが、セテルタの奴……なかなかやるじゃないのッ!!
剣術だけじゃなく、魔法も上手い。
とはいえ、これまできちんと魔力操作に取り組んできた男なのだから、それも当然といえるだろうね。
それから、剣のほうは王国式を使っていることもあってか、割と素直な戦い方だったのだが、魔法のほうは何気にフェイントなんかも多用してきて、なかなか素直じゃない。
例えば、目立つファイヤーボールを撃ってきたと思えば、その後ろに無色透明なウインドカッターも潜ませておいて、二段構えで攻撃してきたりとかを平気でやってくるんだ。
まあ、それも魔力操作をキチンと練習していれば、微かな魔力の違和感を察知してウインドカッターの存在に気付けるだろうとは思う。
でも、そうじゃない視覚に頼った奴とかだと、それだけで一発アウトになってもおかしくないだろう。
そんな感じで、セテルタが加わった模擬戦はさらに充実した内容となったのである。
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