第524話 どんな人か教えてもらえないか?
ちょうど上手い具合にセテルタがエトアラ嬢のことを話題に出してきた。
まさにここが仕掛け時といえるだろう。
というわけで、いざ!
「なるほど、これまであまり接点もなかったところ、急に婚姻話を持ってきたのは、そういう意図が考えられるのか……まあ、そんな理由はどうあれ、俺は社交界のことについて疎いものでな、正直なところエトアラ嬢のこともあまりよく知らないんだ……もしよかったら、セテルタの目から見てどんな人か教えてもらえないか?」
「えっ!? いや、まあ……アレスの頼みとあれば、僕の知ってる範囲であの人のことを話すのは構わないけど……たぶん、意識しなくても自然と否定的なことばかり話してしまって、アレスの判断にあまりいい影響を及ぼさなくなる気がするんだよね……それでも聞くかい?」
「おう、それで構わんよ。俺はほかでもない、セテルタの見解こそが聞きたいんだからな!」
「アレス……そっか、分かったよ」
よっしゃ! ここまではいい流れがきてるぞ!!
「ふむ……2人で何やら、密談中か?」
「どうもどうも、お話中に失礼しますね」
ここで、ロイターとサンズが到着。
「おう、お前らが遅かったから、先にセテルタと食べ始めていたぞ」
「お先にいただいているよ」
「ああ、それは構わん」
「それで、なんのお話をされていたのですか? もし聞かれたくない話でしたら、僕たちは外しますけど……」
「いや、大丈夫だ。セテルタから見たエトアラ嬢はどんな人なのかっていう話を聞こうとしていただけだからな」
「ほう……それは興味深いな」
「まあ、アレスさんとパーティーを組んだり普段から行動を共にしていることもあって、今回の婚姻話は僕たちにもそれなりに影響がありましたからね……よろしければ、お聞かせ願えますか?」
まあ、エトアラ嬢が俺に婚姻話を持ってくるなんてことがなければ、派閥うんぬんの話でロイターたちも苦労させられることがなかっただろうからねぇ……
ただ、それがなかった場合、セテルタとも仲良くなってなかったかもしれないから、これはこれで俺としてはよかったと思っている。
というか、ロイターたちと違って、俺のところには派閥入り希望者が来ず、全然苦労してないからっていうのもあるけどね。
「まあ、面白い話じゃないと思うけど、それでいいなら……」
なんて前置きをしつつ、セテルタはエトアラ嬢について語り始めるのだった。
「とはいえ、何から話そうか、う~ん……とりあえず、僕があの人と初めて会ったのは、なんてことないちょっとしたお茶会だったかな……そのときは確かまだ小さいこともあって、誰からもトキラミテ家のことについて聞いてはいなかったっけ……」
「ほうほう! そうしてどうした?」
「アレス、うるさい」
「ええ、テンションがうるさいですね」
いや、「テンションがうるさい」ってひどくね?
俺はただ、セテルタとエトアラ嬢が紡ぐ出逢いの物語にワクワクしてるだけなのに……
「それでええと……ああ、そうだ、最初はあの人から声をかけてきてね、そのときは割と親切というか、気さくな人だなぁとか思ったんだっけ……」
「ほう! ほうほうほう!!」
「アレス……」
「ロイター様、この調子だと何度ツッコミを入れざるを得なくなるかわかりません……アレスさんのことはいったん放置しておきましょう……」
「ああ、そうだな……」
なんか、ロイターとサンズが失礼なことをいいだしたぞ?
……まあいいや! 今はセテルタの話に集中だ!!
それにしても、物語は順調な滑り出しといえそうだねぇ……フフッ。
「それでまあ、最初はそれでよかったんだけど……あとから、モッツケラス家とトキラミテ家の関係について周りから聞く機会が増えていったんだったな……その中にはトキラミテ家のことをとても強く非難している人なんかもいて、最初のうちは『そこまでいわなくても……』とか思うこともあったんだっけ……」
「ふ~む! ふむッ!!」
「……」
「……」
「今にして思えば……そんな感じで周りの話を聞いていくうちに僕も知らず知らずのうちに染まっていっていたのかもしれない……そうして出会うたび、あの人のことが煩わしく感じるようになっていったんだ……」
「な、なんてことだ……」
「……」
「……」
……待てよ? この感じ……もしかして、マヌケ族が絡んでる?
それまで良好だった関係を壊す……奴らのやりそうなことでは?
「……いや、でも! あの人は常に上から目線だったし! 僕のことをやたらと子供扱いしてきたんだった! それもたった1歳しか違わないというのにッ!! ……そうだ、あの家はみんなそうだった! 僕たちモッツケラス家の者を寄子かなんかのように扱ってきてッ!!」
ここにきて、セテルタがヒートアップ……
両家の関係が代々続く、そのどっかでマヌケ族の関与があった可能性も否定はできないけど……もしかしたら、割と普通に今の関係につながっていったのかもしんない。
それで、トキラミテ家の人ってたぶん、みんなナチュラルに年長者ぶるんだと思う。
それがモッツケラス家の人にとって、なんか上から目線に感じられてイラつくのかもしれない。
……そこで自分が弟にでもなったつもりになれば楽なのに……そして、お姉さんに甘えちゃえば幸せになれるのに!!
「おい、アレス……さすがに遠くに行き過ぎだと思うぞ?」
「ええ、さすがに……顔が飛躍し過ぎですね」
人の心を読むのはこの際いいとして……「顔が飛躍し過ぎ」ってなんだよ!!
それはともかくとして、ヒートアップが止まらないセテルタは、それ以後もエトアラ嬢のことについてある意味熱く語るのだった……
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