第518話 リスクを負うことになるわけだな
「ハァ……フゥ……今日の自主練はこんなもんでよかろう……」
というわけで今日は、魔力操作をしながらレミリネ流剣術の型練習にみっちり打ち込んだ。
練習の密度で考えたらどちらかだけに集中するほうがいいとは思うんだけど、実戦を考えたら、同時並行的にできるようにもしておきたいからね。
そんなことを思いつつ、汗をシャワーで流し、男子寮の食堂へ向かう。
フッ……日々情報は更新されていくからね、今もまた、男子たちが俺を見てヒソヒソとやっている。
話題はもちろん、先ほどの女子についてだ。
そうして彼らの話に耳を傾けていると、あの子はそれなりに有名人だったのだなぁって感じだ。
とまあ、そんな感じでのんびり夕食をいただいていたところ、ロイターとサンズがやってきた。
「よう! また、派閥入り希望者たちの相手をしていたのか?」
「まあな」
「それも少しずつですが、落ち着いてきてはいますけどね」
「ふぅん? ま! 頑張りたまえよっ!!」
「……誰のせいで私たちが苦労していると思っているのだ?」
「ええ、まったくです」
「それはもちろん! 皆、ロイター様とお近づきになりたいのだろうさ!!」
「……はぁ、もうそれでいい、言い返すのも面倒だ」
「まあ、ほかにもっと直接的な理由があるわけですが……かといって、完全に外れではありませんからねぇ……」
なんて、ロイターとサンズがあきれつつ、苦笑いを浮かべている。
うむ……どうやら今日は、苦笑い日和のようだ。
それはともかくとして! ファティマさんが俺の考えに賛同してくれたって話をせねば!!
とりあえず、まだ秘密の企てといった段階なので、周囲に認識を阻害する魔法を展開しておく。
俺のそんな魔力の波動を感じ取った2人は、苦笑いに一段と苦み成分が増したようだ。
「……昨日に引き続き、また面倒なことを考えたのではあるまいな?」
「念のため改めて申しておきますが、エトアラさんとセテルタさんをカップリングさせようという案は、どちらも後継者争いに勝てなくなってしまいますので、現実的ではありませんよ?」
「チッチッチッ、2人ともまだまだ青いな……」
人差し指を立てて、左右に振りながらシブくキメたった。
「……ほう?」
「今日はまた、えらく自信満々のようですね……?」
「ああ、何を隠そう……あのファティマさんが! エトアラ嬢とセテルタのカップリングに賛同してくれたのだからな!!」
「……なん……だと?」
「おやおや、あのファティマさんがねぇ……」
「どうだっ! 恐れ入ったか!!」
ここぞとばかりにふんぞり返ってみる。
「クッ……ファティマさんが賛成したのであれば……私も、もう少し具体的な協力を検討せねばならんかも……しれんな……」
「ロイター様ったら……本当にファティマさんには弱いですからねぇ……」
「ハッハッハッ! まったくだな!!」
さすがファティマさんだ!
名前を出しただけで、ロイターが動かざるを得ないと考え始めたぞ!!
「……まあいい、ファティマさんのことだ、ただ賛成しただけってことはないのだろう? 何をいっていたか、詳しく話せ」
「そうですね、まずは話を聞かせてもらいましょうか」
「よかろう! あのファティマさんが授けてくれた策だ、2人とも心して聞くように!!」
「……ああ、もちろんだ! しっかと心に受け止めよう!!」
「ロイター様が……完全にアレスさんのペースに乗ってしまわれた……これはもう、軌道修正は難しそうですね……」
「コラッ、サンズ! 余計な私語は慎め!!」
「そうだぞ! ファティマさんの策を吟味するのに、邪魔な思考が混入してしまうだろうが!!」
「はい、失礼しました………………仕方ない、今はこのノリに合わせよう」
こうして、朝練のときにファティマが話していた策を披露したのであった。
「……まさか、ここで王女殿下を頼るとはな……ファティマさんも大胆なことを考えたものだ」
「ええ、僕も驚きました……ですが、王女殿下のお人柄であれば、エトアラさんとセテルタさんの関係修復に動いてくれる可能性はありますね」
「まあ、正直なところ、俺も最初に聞いたときは、『マジか!?』って思ったもんなぁ……でも、サンズのいうとおり、王女殿下なら動いてくれそうだっていうのは、俺も思ったね! ……というか実際にこの前、ケンカを始めた女子の仲裁をしていたところも見たしさ……とはいえ、その程度のこととは規模感の違う話ではあるのも確かだけど、方向性としては同じだろうからな!!」
「……ふむ、それにしてもこの話……もし上手くまとまれば、王女殿下にとっても利益となるだろうな」
「ええ、その場合エトアラさんとセテルタさんが王女殿下派になるということですからね、これは王位継承争いにおいて大変有利に働くことでしょう……さらにいえば、トキラミテ家とモッツケラス家が再び手を取り合うところまでいけば、もう盤石といっても過言ではありませんね……ただ、それゆえ失敗した場合……特に両家の機嫌を損ねてしまうと、これまた甚大なダメージを受けることになってしまいますが……」
確かに……王女殿下もリスクを負うことになるわけだな。
でも! 俺のお姉さんセンサーは反応したんだ……だから、きっと……!!
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