第513話 あの2人に縁があるのならば……

 ファティマが賛同してくれた……これはつまり、勝ち確! やったぁぁぁぁぁぁぁッ!!

 フフッ……ロイターやサンズは後継者争いうんぬんに拘泥して本質を見誤ったようだな!

 ハァ―ッ! ハッハッハッハッハ!!


「……とはいえ、これは無責任な外野の感想に過ぎないわね」

「……は? ……えっ?」


 えっと……どういうこと?

 ファティマさん……期待させておいて、一瞬で手のひらを返そうとでもいうんじゃないだろうね?


「ふふっ……そう不安そうな顔をしなくてもいいわ」

「お、おう……」


 いや、急展開過ぎて、不安にもなっちゃうよ!


「もちろん協力してあげてもいいとは思っているのだけれど……伯爵家の私が、侯爵家のエトアラ嬢の心をどこまで動かせるかと考えただけよ……」

「あ、そういうこと……」


 なるほど、貴族の世界において格下の相手がゴチャゴチャいってきたところで、「だからどうした?」で終わる可能性が高いんだったな。

 しかも、俺がそもそも持ってた伯爵と侯爵の差に対するイメージっていうのは、単純に1ランクしか変わらないってものだったけど、この王国においては、ここの差だけやたらとデカいんだっけ……

 ただ、ファティマの実家は、たとえ嫌味を含んでいるとはいっても「実質辺境伯」と呼ばれているぐらいだ、全く無視されることはないと思う……でもやっぱり、家格第一の思考の下では、インパクトに欠けるのも確かだろうな。

 まあ、だからこそ俺自身、最初にロイターに相談したみたいなところも若干あるしな……


「そう、あなたの考えているとおりよ……でも、それだけでそんなに気落ちした顔をしなくていいと思うわ」

「え……そんな顔してた?」

「ええ、あからさまにガッカリしているように見えるわね」

「そうか……」


 どうやら、そうらしい……クールでいかねば……

 ……あれ? でも今、「気落ちした顔をしなくていい」っていったよな?


「だからね、発言力に自信がないのであれば、ある方を頼ればいい……そうは思わない?」

「ああ、そういう意図もあって、最初にロイターに相談してみたのだが?」

「ロイターも、変なところで真面目だものねぇ……」

「あ、それ分かるぅ!」

「あなたも、似たようなものだけれどね?」

「あ、そうですか……ま、まあ、『類は友を呼ぶ』ともいうしな……」

「ふふっ……確かそれも、焔の国のことわざだったかしら?」

「……らしいね」


 いや、知らんけど……でもどうせ、原作ゲームにおける焔の国のモデルが日本なんだから、そうなんだろうさ。


「話が逸れてしまったので戻すけれど……絶大な発言力を持つお方がこの学園に、それも私たちと同じクラスにいるでしょう? さらにいえば、ケンカの仲裁を大の得意とされているお方が……」

「……は? おいおい、それってもしかして……」


 王女殿下のことじゃないだろうな?

 いや、間違いなくそうなんだろうけどさ……でも、マジかぁ……


「正解に思い至ったようね?」

「ま、まあな……でも、いくらなんでも、それはちょっと……」


 どこでどんながフラグが立つか分かんないから、あんまり原作ゲームのヒロインと関わりたくないし……

 あ! エリナ先生は別ね!!

 というか、エリナ先生はヒロインじゃないから! ただ、原作ゲームでは、教え子を助けてあげただけなんだからさ!!


「まあねぇ……あなたって、王女殿下に対して微妙に壁を作っているものね……」

「は、はぁ? そんなつもりはないけどなぁ? というか、俺って『魔力操作狂い』だし? 誰に対しても壁みたいなものはあるんじゃないのかなぁ?」

「ふふっ……ロイターたちみたいに、その壁を越えてきた相手には、途端に馴れ馴れしくなるのよねぇ?」

「フ……フン! 知らんな!!」


 といいつつ、ロイターたちのような理解ある友くんたちには、自然とスキンシップが強めになってしまっているのは、多少認めるところではあるけどね……


「まあ、それはそれとして……何も王女殿下に直接お願いすることもないじゃない……周りにあなたの影響を受けた人がたくさんいるのだから」

「それって……あの取り巻きたちのこと?」


 そこで、アレスの熱血教室への参加者たちのことが頭に思い浮かんだ。

 確かに、彼らとはたまに挨拶やちょっとした会話を交わしたりと、それなりに接点があるね。


「ええ、そうよ……彼らから間接的に王女殿下の耳に入るようにすればいい。それに、ちょうど秋季交流夜会も近いのだし、上手くいけば、エトアラ嬢とセテルタの仲がぐっと縮まると思うわ」

「そんな上手くいくもんかねぇ……?」

「あの2人に縁があるのならば……きっと大丈夫よ」


 あれ、ファティマさん……微妙に乙女チック?


「……この件からは手を引かせてもらおうかしら?」

「え! いや! ちょっと待って! ゴメン! 俺が悪かった!!」


 なんで、そんなピンポイントで俺の思考が読めるの?

 ちょっと、ホントにほんのちょっと思い浮かんだだけなんだよ?


「ふふっ、冗談よ……とはいったものの、ほかに私がするようなことなんて、ほとんどないわ……精々、秋季交流夜会でエトアラ嬢に『ご一緒しませんか?』とお誘いする程度ね……それで、あなたはセテルタを誘って機会を作るといったところかしら」

「な、なるほど……ファティマさんがいうのなら、なんとなくイケる気がしてきた……」

「とりあえず、案は出したわ……あとはあなた次第ね、頑張ってちょうだい」

「はい! ファティマさん! ごっつあんです!!」

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