第511話 本末転倒となってしまいますね
「それで俺もな、エトアラ嬢について、いろいろ考えてみたんだよ」
「ふむ」
「そうですか」
「それでな……ルックスや性格、そして魔法の実力などから総合的に判断するなら、悪くない……むしろ、素晴らしい魅力を持っているとは思うんだ」
「まあ、そうだろうな」
「ええ、2年生の令嬢の中で、かなり人気のある女生徒といえるでしょうね……ただ、入学から今までの1年半で特別な相手を作ろうとしてこなかったそうですから、先輩たちのあいだでは高嶺の花として諦めムードが漂っていたようですけどね」
「ああ、今まで誰とも交際しようとしてなかったらしいことは、俺も朝食を共にした女子から聞いた」
サンズも知っているとなると、エトアラ嬢がこれまで彼氏を作ろうとしてこなかったって情報は、割と広く知られていることみたいだね。
とはいえ、そういった侯爵令嬢の動向っていうのは、それだけ注目を集めることなのかもしれんね。
「まあ、その女子からいわれたこともあって、エトアラ嬢のことを改めて考えてみたっていうのもあったんだけどな……それで、俺自身エトアラ嬢に魅力があることは認めているつもりなんだ……でもな、やっぱり年齢が足りないんだよ……」
「……はぁ、やっぱりそれか」
「ええと、アレスさんらしいといえば、らしいといえるかもしれませんけどね……ははっ」
そんな2人の苦笑いは、とっても渇いていた。
「いや、これは俺にとってかなり重大な要素なんだよ!」
「ああ、そうなんだろうな……これまでのお前の様子を見ていれば、それぐらい分かる」
「はい、そうですね」
理解あるロイターとサンズでありがたいね。
「そんなわけでな、エトアラ嬢が1年半待つつもりでいるのは分かるんだが……かといって俺はそれに応える気にはなれそうもないから、時間を無駄にさせそうで申し訳ない気になってくるんだよ」
「……まあ、それはエトアラ嬢本人の責任であるともいえるだろうがな」
「ええ、既にアレスさんも断る意思を見せてはいるのですからね」
「ああ、その点については俺もそうだなって思うんだけど、でもやっぱ、それなりに悪いなって気にはなってしまうんだよ……」
「……それが人情ってものではあるのだろうな」
「そうですねぇ……」
よし、ここまではある程度2人の共感を得られているようだ……
「そこで、最初の話題だったエトアラ嬢が俺に恋愛感情を持ってないんじゃないかって話にちょっと戻ってくるんだが……」
「ふむ」
「ええ」
「俺が相手じゃなくても、いい条件の男子を紹介さえできれば、全て丸く収まるんじゃないかって考えたんだ」
「なるほど……な」
「まあ、そうかもしれませんが……」
念のため俺たちの周囲に、話の内容の認識を阻害する魔法をゆるく展開はしていた。
このタイミングでその魔法を、一段深めた。
「それで、その辺にいる実家の爵位とかの条件を満たしそうな男子を適当に連れてきて、強制的に魔力操作などさせて実力を養成したら……なんて考えてもみたんだ」
「まあ、お前の考えそうなことではあるが……実際に魔力操作を強制される者は絶望的な顔をしてそうだな」
「魔力操作にハマってしまうことができれば、楽になれるのでしょうけどねぇ……」
「俺としても、そんな反応をされるだろうなとは思っていた……そこで、ほかの案、むしろこれが俺の本命ともいえるのだが……ロイターよ、ここでひとつ、ちょっとした手柄を立ててみる気はないか?」
「お前! まさかとは思うが……」
「あの、アレスさん……もしかしてですけど、ロイター様にトキラミテ家とモッツケラス家の橋渡しをしろとおっしゃられるのではありませんよね?」
ほほう、さすがロイターとサンズだ!
俺の考えていることがよく分かっているね!!
「フッ、公爵家のロイターがあいだに入ったほうが説得力がありそうだろ? それに、そこそこ中央とかにいる偉い人たちにひんしゅくを買っている俺がチョロチョロするより、よっぽどいいだろうし……でもまあ、家同士の問題はおいおいと解決していってもらうとして、まずはエトアラ嬢とセテルタをくっつけることができんものかなぁ~って思うんだよ!」
「さすがに私が公爵家の人間とはいえ、代々続いてきた家同士の問題に軽々しく口出しはできんぞ?」
「そうですね……出過ぎたマネをしたとして、それこそひんしゅくを買ってしまうかもしれません」
「ま、それはそうかもしれんね……でも、俺としては、エトアラ嬢とセテルタのカップリングに可能性を感じちゃってるんだよ!」
「う、う~む……それはどうなんだ? 果たして上手くいくのか?」
「難しい、というより無理ではありませんか? 仮にエトアラさんがセテルタさんをトキラミテ家の婿に選んだとしても……確実に後継者争いに負けてしまいますよ? このことは逆に、セテルタさんがエトアラさんをモッツケラス家の嫁に選んだとしても同じことがいえるでしょう」
「むぅ……」
「まあ、あの2人が、私やお前と同じように家を継ぐ気がなければ、可能性はあるかもしれんがな」
「それはそうかもしれませんが……後継者となるために条件のいい相手を探しているのですから、本末転倒となってしまいますね」
「ぐむぅ……」
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