第510話 本気の恋愛感情を持ってるわけじゃない説
「そんなわけでね、キズナ君! 俺としては、セテルタとエトアラ嬢っていうカップリングを推していきたいなって思うんだよね!!」
まあ、キズナ君からハッキリとした返答が来ないことぐらいは、俺だって承知している。
ただ、こんなふうにキズナ君に話すっていう言語化を経ることで、頭の中が整理されていっているような気がする。
少なくとも、気持ち的にクリアにはなったんじゃないかと思う。
「……それじゃあ、お話はこれぐらいにして、今日の勉強と鍛錬に移るとしますかね」
フフッ……スッキリとクリアになった頭で、読書に励むぜ!
というわけで、ちょいと歯応えのありそうな書物に挑戦してみることにした。
「さあ、読むぞっ!」
……そうして数時間経過。
「フ、フフッ……コイツは、なかなかやるじゃないの!」
いやぁ、危なかった……これまでに入門書をガシガシ読んでいなかったら、一切の内容が意味不明に陥っていたかもしれない。
我ながら、段階を踏んで正解だったというわけだね!
とはいえ、やはり入門書よりも専門性が高いだけあってか、まだまだ理解し切れていないところも多々ある。
それに、実際のところ一冊全部を読み切ったわけでもないしさ。
ま、これから数日かけて読み切ろうじゃないか!
そんな感じで、読書について明日への意欲を燃やすのだった。
「そんじゃあ、お次は鍛錬といきまっしょい!」
まあね、これだけ「魔力操作はいいぞ!」って勧めて回って、俺のほうが習熟度が低いってなったら恥ずかしいもんね!
誰にも負けないぐらい、魔力操作をやり込もう!
「……でもまぁ、今回は剣術練習と同時ではなく、それぞれ時間を分けて丁寧にやってみようかな?」
というわけで、夕方まで残りの時間を二等分して、魔力操作と剣術練習を順番に取り組んだ。
「……はぁ……ふぅ……今日もいい汗かいたねぇ」
なんというか、日々の歩みは微々たるものであるのだろうけど、でも、少しずつ前進してるんだぞっていう充実感みたいなものがある。
気を抜いていると、見落としてしまうかもしれないけど、やっぱり、この感覚が大事なんだよね!
「シッカリと自分を見つめる……そして己自身との対話! まさしく、これだねっ!!」
なんて独り言を呟きながら、シャワーを浴びる。
「ふぅ~っ、サッパリしたぁ! よっしゃ、夕ご飯を食べに行こっと!!」
そうして男子寮の食堂に向かうわけだが……その途中、やっぱり俺を見てヒソヒソやるだけの男子たち。
しっかし、昨日ロイターたちのところには「派閥に入れてください!」って直談判しに行った奴らがいたみたいだけど……それで、仮にロイターたちがオッケーを出したとして、そのあとはどうするつもりだったのかねぇ?
なんか避けまくってくれてるけど、派閥入りしちゃったら最終的に俺とも関わらなきゃいけなくなるだろうに。
それとも、そいつらには俺だけを上手くスルーできる自信でもあるのかね?
とはいえ、むしろそこまでできちゃうぐらいの奴なら、まあまあ俺とも対等に接することができそうな気もするけどさ。
なんて思いつつ、男子たちに遠巻きにチラチラされながら食堂に着いた。
さて、まずはお腹を満たすことが先決だね! そしてお待たせ、腹内アレス君!!
そんな感じで食事をしながらしばらく経ったところで、ロイターとサンズが到着。
「おう! 今日も少し遅めだったな?」
「ああ、そうだな」
「遅くなった理由は、今日も同じです……まあ、さすがに昨日よりは人数も減りましたけどね」
「なるほど、やはりお前たちのところには行くんだな?」
「そうか……また避けられたのか」
「えっと、ドンマイ……といえばいいですかね?」
「……うっせ」
いや、チョロチョロ来られるのも面倒ではあるんだけど、こうまであからさまだと、それはそれで「う~ん……」って多少はモヤモヤした気持ちにもなっちゃうかなって感じだ。
でもまあ、実際に来られた場合、最初のうちはある程度普通に対応するとは思うけど、段々めんどくさくなって「うがぁ~っ!!」ってなっちゃってたかもしれんね。
だから、このままでいいのだろう! うん、そのはず!!
というか、そんなことはどうでもいいんだった!
それより、さっき考えていたことについて、ロイターとサンズの見解を聞くつもりだったんだ!!
「まあ、前置きはこれぐらいにして、ちょいとロイターとサンズの意見を聞いてみたいんだが……」
「ほう? 私たちの意見か……いいだろう、話してみろ」
「僕に答えらえる内容かは分かりませんが、ひとまずお聞きします」
というわけで「エトアラ嬢は俺に対して本気の恋愛感情を持ってるわけじゃない説」について、ロイターとサンズはどう思うか聞いてみた。
「ふむ、確かにな……そういう雰囲気もないとはいえんな」
「まあ、そもそも論として、恋愛感情を第一として成立したカップルのほうが少数派でしょうからね……そのように考えると、エトアラさんも恋愛感情優先ではなく、様々な条件を考慮した上でアレスさんに婚姻話を持ちかけたのだろうという気がしてきますね」
「う~む……やっぱ、そんなもんか」
ロイターとサンズの目からしても、やはりエトアラ嬢は俺に惚れているわけではないと見えたみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます