第507話 既に実績もありますからね
エトアラ嬢たちが去っていったあと少し立ち止まっていたが、そうかからないうちに移動を再開した。
というのも、俺たちみんな、それぞれ女子と昼食を共にする約束があって、待たせるわけにもいかないからね。
それとまあ、たまたま周囲に居合わせていた生徒たちが、また今回のことも早速ウワサし始めるのかもしれない。
そして面白おかしく「モッツケラス家とトキラミテ家による、ソエラルタウト家争奪戦が勃発!!」とかなんとかいわれちゃうのかなぁ?
「僕が関わってしまったせいというべきか……僕らの家の問題について、ややこしいことに巻き込んじゃったね?」
「いやぁ、別にどってことないさ」
たぶん、セテルタも同じようなことを考えていたんだろうね。
「まあ、本来この学園は、こういった派閥形成を実践する場でもあるからな、むしろ今回のようなことは、あってしかるべきともいえるだろうさ」
「ええ、それに今年はアレスさんの影響で派閥の形成うんぬんよりも、多くの方が王女殿下の周りに集まりましたからね。おそらく今ある派閥の多くは、学園入学前から構築されていた家同士の付き合いによるものばかりでしょうし……そういった意味では、今回のこれこそが例年どおりの学園の在り方といえるかもしれません」
「そういえば……最初は俺の取り巻きになろうとしてたっぽい奴らも、今ではすっかり王女殿下の取り巻きになったようだしな」
前期の一時期、俺にところに寄ってきた奴ら……そして、原作ゲームにおけるアレス君の取り巻きだったかもしれない奴ら。
特に気になるわけでもないが、まあ、奴らとしても、王女殿下の周りにいるほうが幸せだろうと思うので、これでいいんじゃないかな?
「みんな、ありがとう……そして、これからも何かと面倒な思いをさせてしまうかもしれない、そのときはゴメン」
「セテルタ様……」
「まあまあ、そんなんどうだっていいさ! それに、めんどくなったら『めんどくせぇ!』って俺が吠えるだけだし!!」
「……意外とその一言で全て解決するかもしれんな」
「フフッ……ラクルスさんの件など、既に実績もありますからね」
「確か、そのときのアレスの一喝によって、王女殿下の周りに多くの者たちが集まるようになったんだっけ……」
ああ、アレスの熱血教室のことね……今となっては、なんだかちょっと懐かしい気がしてくるね。
そんなことを話しているうちに、女子と待ち合わせをしていた場所に着いた。
というわけで、ここでみんなとは別れる。
「それじゃあ、またな」
「ああ」
「とはいえ、結局は中央棟の食堂にみんな行くことになるのですから、座る席が近くなることがあるかもしれませんけどね」
「うん、確かにそれはあるね。それはそれとして、今日はみんなと仲良くなれて嬉しかったよ、今度一緒にご飯も食べよう、それじゃ」
「……我々も、失礼します」
さて、今回約束していた女子はどこかなっと……
「アレス様、今日は食事をご一緒する栄誉をいただき、感謝申し上げます」
「ああ、そんなにかしこまらなくていい」
さっきの自信満々なエトアラ嬢のあとだと、高低差が凄いなって思っちゃうね……
ま、それはいいとして、早速メシをいただくとしますかね!
それで今回も、前半は食事に集中するとともに、女子の話に適度に相槌を打つ。
そうしてお腹も満たされてきたところで、俺のターン開始!
フッ、みなまでいわずとも承知のことだろうが……魔力操作を激推しだ!!
まあ、このために前半は話の主導権を相手の女子に譲っていたみたいなところもあるしさ。
そんなわけで、区切りのいいところまで饒舌に魔力操作について語ったった!!
「……はい……はい……そうですね」
「うむ、理解いただけたようで何よりだ!」
「……はい、ありがとうございます」
「これからも、魔力操作に限らず、魔法全般について話したいことがあればなんでも受け付けるからな! そのときは気兼ねなく声をかけてくれ!!」
「……はい、そのときは、よろしくお願いいたします」
「よしっ、今日のところはこれにて! 君の魔力操作ライフが素晴らしいものとなることを祈っている……ではな!!」
「……はい、それでは、失礼いたします」
うんうん、今日も1人、魔力操作の道へ案内することができたんじゃないかと思う。
我ながらよくやったと自分を褒めてあげたいぐらいだよ!
「……おい、どうする?」
「い、いや……今日はやめとこう」
なんか、俺のほうをチラチラ見ながら、コソコソ話している生徒たちがいるね。
「そ、そうだよな……やめといたほうがいいかもな」
「さっきの子を見ただろ? 完全に目の色っつーか、輝きがヤバいことになってたし」
「ああ、あの子みたいになんのはイヤだもんな……」
「あの子もかわいそうに……きっとこれから『魔力操作、魔力操作』ってブツブツいうようになっちゃうんだろうなぁ……」
「エトアラ先輩みたいに大丈夫な令嬢とかもいるみたいだけど……きっと、俺たちレベルじゃ、魔力操作に飲み込まれちまうのがオチだろうし……」
「まったくもってそのとおり……ここは諦めたほうが身のためってもんさ」
「よし、スルーしよう!」
「おう!」
……もしかしたら、昨日ロイターとサンズが話していた派閥入り希望者って奴らかもしれないね。
そして、俺を見てビビったってところかな?
それにしても、これから魔力操作の道に一歩踏み出そうとしている子がかわいそうだなんて、たわけたことをいうものだよ、まったく!
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