第505話 親し気に
「まあ、俺も最近になって女子たちからお誘いがくるようになったので朝と昼はそれに応えているけど、基本的に夕方は断っているんだ。それはロイターやサンズも同じでさ……セテルタもよかったら、夕方一緒に食おうぜ!」
「ああ、セテルタなら歓迎だ」
「それに毎回ってわけでもないですけど、ヴィーンさんたちが一緒になることもありますし、そのときによってメンバーもバラバラだったりするので、特に気兼ねすることもありませんよ」
「そうか、ありがとう! それじゃあ、参加できそうなときがあったら、ご一緒させてもらおうかな?」
そういいながら、セテルタは笑顔を輝かせる。
そうして、運動場を出たところ……
「セテルタ様! お待ちしておりました!!」
たぶんセテルタの取り巻きなんだろうけど、運動場の出口付近に待ち構えていた集団がセテルタに声をかけてきた。
ちなみに、そいつらの顔にさほど見覚えがないので、Aクラスの生徒ではないだろうと思う。
いや、俺だってクラスメイトの顔ぐらいはさすがに認識しているんだからね!
「……ああ、今日はアレスたちと途中まで一緒に移動するつもりだ」
「かしこまりました! お供いたします!!」
取り巻きのリーダー格らしき男子が無駄にキビキビした感じで受け答えをしている。
その際、チラリとセテルタに視線を向けてみると、心なしか表情が微かに色褪せたように感じた。
それはたぶん、気のせいではないと思うし、取り巻きを多く抱える上位貴族あるあるなのではないだろうか。
まあ、原作アレス君みたいに学園入学時点で取り巻きがおらず、俺の意識が浮上してきてからもその状態をキープしようとしているのはレアケースといえるだろう。
また、ロイターのようにヤベェ師匠のせい……いや、この場合おかげというべきかもしれないが、いずれにしても将来の側近候補として集められた連中が次々と脱落していき、取り巻きがサンズ1人になったっていうこれまたレアなケースもあるけどね。
ついでにいうと、セテルタ……というかモッツケラス家の場合、トキラミテ家に対してバッチバチにライバル意識を燃やしているから、本人の意思とは関係なしに、取り巻きを並べとかないといけないみたいなこともあるのだろうと思う。
「……アレス、こんなふうにゾロゾロしちゃって済まないね」
「そんな、気にすんなよ! 俺とお前の仲だろ!?」
なんていいつつ、親し気にセテルタと肩を組んでみる。
その際、後方からピリッとした気配というか魔力の波動を感じ取った。
ただしそれは、俺に対して敵対的な意思をぶつけてきたというわけではなく、驚きのあまり出てしまったって感じだね。
とはいえ、やっぱりね……セテルタの取り巻き連中は、俺のこういう態度がお気に召さないようだ。
でも、そんなの知ったことか! 俺はこういうノリでいっちゃうもんね!!
「まったく、お前ときたら……」
「フフッ、これもアレスさんらしいといえば、らしいですねぇ」
おそらくセテルタの取り巻き連中としては、「このクソ野郎が! セテルタ様に馴れ馴れしいんじゃボケェ!!」とか思っていることだろう。
そんなふうにしてセテルタの取り巻きを微妙におちょくっていたところ、別方向から声をかけられた。
「あらあら……あなたたち、随分と仲がよろしいようねぇ?」
それは、エトアラ嬢だった。
また、その後ろに付き従うようにして、エトアラ嬢の取り巻きたちもズラリと並んでいる。
……まあ、俺がセテルタと肩を組んで歩いている姿を見れば、そりゃ仲良しに見えちゃうよね。
いや、実際に仲良しなんだけどさ。
すると、先ほどまでピリピリした波動を懸命に抑えていたセテルタの取り巻き連中が、セテルタの盾ですといわんばかりに前に出てきた。
「トキラミテの令嬢が何用か? 特に用がないのであれば、先を急がせていただきたいのだが?」
「ふん、モッツケラスにくっついてるだけの若造が、偉そうにエトアラ様に指図するつもりかしら?」
セテルタの取り巻きで、リーダー格らしき男子がほぼケンカ腰でエトアラ嬢に向かって言葉を発し、それに対抗するかのようにエトアラ嬢の取り巻きたちも前に出てきて、言葉による応戦を始める。
なるほど、この一瞬のやりとりだけでも両家の仲の悪さがヒシヒシと伝わってくるような気がするよ。
「いや、指図うんぬんの話ではなく、こちらも暇ではないので、用がないのであれば先を急ぎたいといったまでのことだ」
「あらぁ、そんなに忙しいんだったら、あなたみたいな若造がしゃしゃり出てこないほうが話が早いんじゃないかしらぁ?」
「何ッ! 言うに事欠いて、この私がしゃしゃり出てきただと!?」
「そうよぉ、それ以外なんと表現すればいいのかしらねぇ?」
たぶん、双方の取り巻きリーダー格なんだろうけど、徐々に口論がヒートアップしてきているようだ。
まあ、こんな感じで常日頃から顔を突き合わせるたびに口論を繰り返しているんだろうなぁ。
「……それぐらいにしておけ」
「そうね、少し静かにしてくれるかしら?」
このまま口論の行先はどうなっていくのだろうと思っていたら、セテルタとエトアラ嬢がそれを止めた。
まあ、それぞれの大将のお言葉なんだからさ、取り巻きたちは黙るよりほかないよね。
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