第504話 なかなか見つけられないからさ
「えっと、プレゼント……かい?」
「ああ、そうだ! 魔力操作を愛する者にとって、とびっきりグ~レイトなアイテムさ!!」
「へぇ、それはそれは……なんとも興味深いね」
なんてセテルタは穏やかな笑顔を浮かべているが……もしかしたら、既に俺が何をプレゼントしようとしているのか察しがついているかもしれない。
なんとなく、笑顔に余裕が感じられるからね。
そう思いつつ、マジックバッグから袋に詰めた平静シリーズのセットを取り出す。
「これぞ人呼んで『平静シリーズ』だ!!」
おそらく、俺の背中側から「ドッカーン!」みたいな感じで効果音がなっているに違いない。
「な、なんと……これが世に聞く『平静シリーズ』だというのか……」
とかいいながら、ワナワナし始めるセテルタ。
ほほう、なかなかノリがいいねぇ!
まあね、そもそも論として俺や周りのみんなも既に使用した姿を見せているので、よっぽど学園内のことに興味がない奴以外はだいたい平静シリーズの存在を認識しているんじゃないかな?
つまり、セテルタも知っててワザと驚いたフリをしているということになるだろうね。
「もしよかったら、セテルタもこれを使ってみてくれ! きっと……住む世界が変わるぜ!!」
「住む世界が変わるだなんて……それは凄い……」
というわけで、平静シリーズの効果も忘れず説明しておく。
それを真面目な顔で熱心に聞いているあたり、やはりセテルタもこちら側の人間なのだろうと思う。
「……とまあ、そんなわけで3つ目を装備して以降、どんどん魔力操作が困難になっていくってわけだ」
「なるほど……将来的に全部装備できるようになってみたいものだね」
「おっ! セテルタもそう思うか!!」
「ハハッ、これはきっと、男子として生まれてきた者の定めみたいなものだろうさ!」
「そうだろう、そうだろう! 理解あるセテルタで俺は嬉しいよ!!」
まあ、エリナ先生にプレゼントしたときも興味津々だったし、ほかにも俺が平静シリーズを贈った女性陣は皆興味を示していたから、男子に限った話ではないのだろう。
だが、こういうことにロマンを感じちゃうのは、圧倒的にオトコノコなんじゃないかなって思うね。
「こんなミラクルなアイテムをプレゼントしてくれてありがとう! 大事に使わせてもらうよ!!」
「おう、ガンガン使い込んでやってくれ! そして、魔力ともっと友達になってやろうぜ!!」
「ハハッ! 今まで『魔力と友達になる』って考え方はしたことがなかったけど……そういうの、凄くいいね!!」
「だろ!?」
「うん!!」
「オーマイブラザー!」
「マイブラザー!」
感極まった俺たちは、アツいハグを交わした。
「何をやっているのだ、お前たちは……」
「アレスさん……そういうところですよ?」
そこで、ロイターたちがなんかいってきた……
「ん? お前たちも混ざりたいのか? ならば構わん! さあ、来い!!」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……なんて、行くわけがなかろう!」
「幸い、ここに残っていたのが僕らだけなので問題ありませんが……この場面を見られでもしていたら、きっとまた変なウワサをされていましたよ?」
「むぅ、心からの喜びを表現できないとは……寂しい世の中になったものだな?」
「たぶん、特にロイター君にも心当たりがあると思うけど……こんなふうに対等に接することができる相手っていうのはなかなか見つけられないからさ、思わず羽目を外してしまったよ」
「……まあな、アレスと接していると、貴族の枠組みだとか、その中で自分の置かれた立場みたいなものを忘れることがあるのは確かだ」
「はい、アレスさんはフラットな付き合い方をされる人ですものね」
「やっぱり、2人もそう思うよね!」
まあ、その辺は俺の前世感覚が影響しているのだろうなぁ。
慣れてないこともあって、貴族らしい接し方っていうのはどうにもヘタクソだろうと思うし。
とはいえ、ヘタクソなりに傲慢かましたりはするけどね!
「ま! 俺たちみんなAクラスで一緒なんだし、これからも仲良くやっていこうぜ!!」
「その点については、私も特に異論はない」
「もちろん、僕も同じです。セテルタさん、これからよろしくお願いします」
「みんな、ありがとう……そして、こちらこそよろしく!」
というわけで、セテルタはロイターやサンズとも「友達」となったのである。
まあ、原作アレス君と違って、この3人はもともとそれなりに貴族的な付き合いはあっただろうけどね。
でも、きちんと友達になったのは今が初めてってことさ!
……あ、そういえば、ファティマとかに朝いわれたことを忘れてた。
い、いや、でも……セテルタと仲良くしちゃダメってことじゃないし、これはこれでヨシだよな!
ただ、エトアラ嬢のことも邪険にせず丁寧に接する、それでいいはずだ!!
そんなことを考えていると、腹内アレス君から昼食の催促が飛んできた。
「さて、そろそろお昼を食べに食堂へ行かねばならんな……約束もあるし」
「ああ、そうだな」
「ですねぇ」
「みんなたぶん、中央棟だよね?」
「だな……それじゃあ、途中まで一緒に行くか?」
「よかろう」
「はい、ご一緒しましょう」
「僕としては正直、このメンバーで食事をしてみたい気もするね……」
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