第501話 拒否感は未だ健在
夕食を終えて運動場へ移動中、ヴィーン一行と合流した。
「今日は男子寮の食堂に来なかったみたいだな?」
「アレスさん……それをあなたがいいますかねぇ?」
「……もしかしてお前らにも、俺の影響が?」
「おうよ! 目をギラギラさせた女どもがワラワラ湧いて出やがってな!!」
「まあ、そんな感じで、さっきまで中央棟の食堂で僕ら4人と令嬢たちの合同で食事をしていました」
「……いつもとは少し違う疲れだったな」
普段から言葉にあまり感情の乗らないヴィーンですら、気持ちたっぷりに「疲れだった」というぐらいなのだ……よっぽど大変だったんだろうなぁ。
「そんで、いい子は見つかったか? 特にトーリグやハソッドは今まであんまり女子とメシを食ったこともなかったんだろう?」
「どうですかねぇ? どちらかというと、僕らはオマケですし」
「だな! つーか、今まで知らんぷりだったのが急に手のひらを返してきて、こっちも反応に戸惑うしかねぇってのが正直なところだ!!」
「そうだよなぁ……俺もさぁ、後期に入って急に女子たちからメシに誘われ始めちゃってさ、やっぱちょっと面食らうよな!?」
「僕は、前期の最後ぐらいからそんな感じでしたね……あれはちょっとコワかったです……」
「……まあ、しばらくしたら落ち着くだろう」
こんな感じで友達グループなのか派閥の一団なのかはよく知らんが、ヴィーン一行に接触を試みた女子たちがいたようだね。
「……そういえば、さっきロイターたちのところに来た奴らっていうのは、まず公爵子息にご挨拶申し上げてからって話だったよな? それなのに、ヴィーンたちのほうには行くんだな?」
「……おそらく、お前と直接会話するのを恐れる者が多いのだろうさ」
「ええ、そうでしょうね……アレスさんは今までいろいろありましたから……」
まあなぁ、原作アレス君時代も何かと周囲に恐れられてたみたいだし、俺の意識が浮上してきてからもヤベェ奴だと思われてたっていうか、思わせてたみたいなところがあるからねぇ。
俺を避けつつ、ロイターとかヴィーンにぶら下がろうっていう連中がいてもおかしくはないかもしれない。
「でもま、今回の出来事の中心は俺であろうはずなのに、ドーナツ化したみたいになってて不思議な感じがしちゃうね」
「まあ、そうかもな」
「心配せずとも、これからいろいろな方がいらっしゃいますよ」
「ハン! 精々苦労するこったな!!」
「ですねぇ」
「ファイトです! アレスさん!!」
「……武運を祈る」
そんな会話を繰り広げながら、運動場に到着。
そしてそこには、ファティマもいらっしゃる……
なんだろう、微妙に後ろめたいような気持ちが湧いてくるね。
まあ、普段からいろいろとウワサされてたからっていうのもあるだろうなぁ。
でも、俺はエトアラ嬢とは何もないからね!
それに、セテルタのおかげというべきか、さらに何もなさを強調できただろうしさ!!
なんて思いつつ、運動場でファティマと顔を合わせたわけだが……特にこれといった反応なし。
「さて、みんな集まったようだし、今日も模擬戦を始めましょうか」
「うん、今日もみんなで頑張ろう!」
こうして何事もなくというべきか、いつもどおりの感じで模擬戦を始めた。
ただし、オーディエンスは昨日より明らかに増えたね……
「なあ、ひょっとするとあの派閥に入るってことはよ……あのダセェ服を着なきゃなんてぇってことなのか?」
「う~ん、小物は多少違ったりしてるみたいだけど、基本的にみんなおそろいで着ているみたいだから……その可能性が高いね」
「ロイター様は何を着たってカッコいいはずだけど……さすがにあれは控えて欲しいかもぉ……」
「サンズ君も……ちょ~っと微妙かなぁ~って思っちゃうのよねぇ……」
「でもなんか、雰囲気的にソイル君ならちょっと似合っててカワイイ気もしちゃう!」
「そっかなぁ……?」
「それより、ファティマちゃんやパルフェナちゃんだよ! もっとキラリーンってカッコをしてもらいたいもんだよ!!」
「そうだそうだ! あんな田舎臭いのは似合わない!!」
ふむ、彼らの平静シリーズに対する拒否感は未だ健在のようだ。
やっぱスライムダンジョンで平静シリーズをゲットできたのはラッキーだったな!
これがあるから、ある程度ガードできているというか、いろんな奴が殺到するのを防げている気がするからね。
あ、そうだ! 今度セテルタにも平静シリーズをプレゼントしてあげようかな!?
侯爵家の子息だけあって、保有魔力量はなかなかの量みたいだしさ。
とりあえず明日にでも「セテルタ、魔力操作は好きかい?」ってジャブをかましてから、徐々にこっちのペースに引きずり込もう!
いや、好き嫌いうんぬんの前に、おそらく家である程度はやらされてるだろうけどね。
じゃないと、トキラミテ家とケンカなんかしてらんないだろうしさ。
……ついでっちゃなんだけど、エトアラ嬢にも「お詫びの印」として平静シリーズを贈るのはどうだろう?
う~ん、デザインがこれだからなぁ……「舐めてんのか?」って怒られちゃうかなぁ?
でも、品物はグレイトなんだけどね!
この想い、伝わるかなぁ?
「アレス、集中が途切れているわよ?」
「あッ! ……スマンね」
危ねぇ……ファティマによる一撃がヒットするところだった。
とまあ、そんなこんなで模擬戦の時間は過ぎていった。
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