第500話 なぜこうも拗れたものだろうか……
「えぇとですね、トキラミテ家とモッツケラス家の間柄というのは、一言でいえば『ライバル関係』といったところでしょうか……それも古くから代々続くというね……」
「サンズは柔らかく表現したが、人によっては『敵対関係』というかもしれんな」
「あぁ、そんな感じなのね……」
まあ、薄々とは感じていたけど、家同士の仲が悪かったんだね。
そして、だからこそセテルタはトキラミテ家の現状……つまりはエトアラ嬢が後継者争いに奔走してるってことを知っていたというわけか。
まあ、「敵こそが一番の理解者」っていうのは、前世でも割と聞いたフレーズだからなぁ。
「そんなわけでして、トキラミテ家のエトアラさんから婚姻の話をされた直後に、モッツケラス家のセテルタさんと友誼を結んだとなれば、それがアレスさんからのメッセージと受け取られることでしょう」
「ああ、『断る』という意味のな」
「ふむ……もともと俺は受けるつもりもなかったし、あの場でもそのように返答したはずだから、そう受け取ってもらって構わないんだけどな」
「人によって見解も違うでしょうが……こんなに早くから婚姻話を出してきたのはエトアラさんが前のめり過ぎたともいえますし、この学園の生徒みんなが同じようにしているお相手探しと考えれば、ただカップル成立に至らなかっただけともいえると思います」
「だな……まあ、エトアラ嬢が気分を害した可能性はあるかもしれんが……それだけともいえる。そして心情的にどうあれ、このことによってトキラミテ家がソエラルタウト家に表立って攻撃をするようなことがあれば、それこそ恥となるだろうし……お前がそこまで気にする必要はないかもな」
それって……裏側から攻撃される可能性があるよっていうフラグかな?
う~む、とりあえずエトアラ嬢の様子を見つつ、場合によっては兄上に「ごめんちゃい!」って手紙を書く必要が出てくるかもしれない。
「おそらくロイター様のおっしゃるとおりで、どちらかというとトキラミテ家の矛先は『横から割り込んできた』としてモッツケラス家へ向く気がします」
「そうか……」
なるほど、敵対している家同士だと、そういう考え方になっていくのね。
それにしてもセテルタよ……あのタイミングで俺と仲良くなって大丈夫だったのか?
今回のことをきっかけとして両家がガチンコでぶつかるなんてことはカンベンしてくれよ?
しかも、これからマヌケ族……そして場合によっては魔王と一戦交えなきゃいけなくなるかもしれないんだからさ。
そう思うと、王国内で余計な消耗はしないでおいてもらいたいところだが……当事者たちはまた違う視点を持つだろうしなぁ。
「しかしながら……あの2つの家もさかのぼっていけば、同じ両親から生れた姉弟をそれぞれの祖とする家であって源は一緒、そして両家でよく協力してきたおかげで今日の地位があるといわれているのに……なぜこうも拗れたものだろうか……」
「……近きがゆえ、ということもあるのかもしれませんね」
「……ふぅん? そんなもんかね」
正直、代を重ねると縁遠くなるのも仕方ないんじゃないかって思ったりもする。
前世でだって、親戚といわれてもあんまり離れ過ぎてるとよく分からんかったし。
なんというか、たまにチラッとエピソードを耳にする程度って感じ?
とはいえ、貴族みたいな代々続いている高貴な家柄といわれる人間の考え方っていうのは、俺みたいないわゆる日本の一般庶民だった人間にはよう分からんのかもしれんけどさ。
「……とまあ、こういった事情があるにはある。だが、そもそもこの学園はそのような事情を踏まえつつ、それでも個人的な付き合いによって新たな関係を築くことが求められているともいえる」
「はい、たとえ先祖や親が敵対していたとしても、本人の意思で友人や婚姻相手を選ぶ、それが理想とされているはずです……まあ、実際のところ、いうほど簡単なことではないかもしれませんがね……」
まあ、それは原作ゲームの都合でもあるんだろうなぁ……
恋愛シミュレーションゲームにおいて、攻略対象であるヒロインに婚約者がいる……
なんていうか、その婚約者がクソ野郎でってことならまだマシだろうけど、それがめっちゃいい奴とかだったら、他人が婚約している相手を奪う酷い主人公とかプレイヤーに思われるかもしれないもんね。
いや、もちろん「そういう展開に燃えるぜ!」っていうプレイヤーもいるとは思う。
ただ、このゲームの制作陣はそれを選択しなかった……というかたぶん、やるんだったら王女殿下の婚約者がアレス君ってなってたんじゃないかな?
そんで「暴虐の限りを尽くす非道な婚約者から王女を救う」みたいなストーリーになるんだろうさ……ひゃぁ~っ、しんど!
というか、そうなってなくてマジで助かった!!
だって、俺が前世で目にした悪役令嬢もののストーリーとかだと、既に王子殿下と婚約が決まっている状態からスタートみたいなのが結構な割合であった気がするからね。
そして、破滅しないようキレイな形で婚約解消を成し遂げるのをミッションとする……みたいな?
かぁ~っ! 俺にはそんな上手い立ち回りムリっス!!
絶対どっかで下手打って揉める! 自信がある!! ……威張ることじゃないけど。
というわけで、そういう面倒さのないアレス君に転生させていただき、本当にありがとうございます! 転生神のお姉さん!!
「さて、話はこれぐらいにして、そろそろ模擬戦に向かうとするか」
「そうですね」
「……おっ、そうだな」
こうして夕食を終え、運動場へ移動することとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます